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高橋徹也 REST OF THE WORLD 発売記念インタヴュー

昨年7年ぶりとなるスタジオ・アルバム『大統領夫人と棺』をリリースしたときに、「タカテツ」が帰ってきたという嬉しさとあわせて、次はまた何年も先になるのだろうなあ、なんて想いが頭の片隅をよぎらなかったといえば嘘になるだろう。そのため、今年もアルバムを発表すると聞いたときは正直驚いた。


今年7月にリリースされた彼の8枚目のアルバム『REST OF THE WORLD』は、今から15年前にリリースされるはずだった幻のアルバムだ。15年前に作られたアルバムにも関わらず、このアルバムを聴いたときにまず感じたのは、去年リリースしたアルバムからも続けて聴くことができる「連続性」だった。時間の経過とともに新しい音を求め続けた結果として以前の作品が古臭くなってしまう、ということは往々にしてあることだが、不思議なことに、彼の作品にはそういった部分がほとんど見当たらない。確かに声質など、明らかに20代当時と現在で経年変化している部分やアレンジなど多少なりとも当時の傾向を感じる点も散見されるものの、彼の歌の幹となる部分については何ら変わっていないことがこの作品を聴くと伝わってくる。


今回のインタヴューでは、アルバムリリースに至った経緯を始め、先に書いた連続性についてのお話や、最近の音楽に対する考えなど幅広くお話を伺った。このインタヴューで作品への理解を深めるのと同時に、ぜひ過去の作品も聴いていただくことで、「タカテツ」の音楽の魅力、根幹が何なのか、考えてみるのをオススメしたい。

 


企画・構成・文 黒須 誠/編集部

撮影 木目田隆行

 

高橋徹也作品

高橋徹也

REST OF THE WORLD

2014年7月23日リリース

Amazon商品ページ

高橋徹也

大統領夫人と棺

2013年5月20日リリース

Amazon商品ページ


鮮度がゼロになったことで、新鮮味を感じたんです。

──このアルバムをリリースすることになったきっかけを教えてください。


高橋 「もともと録音したのが1999年頃だったかと思うんですけど、自分の中では結構タブーというか、実質このアルバムが世に出ないことでレコード会社と契約切れになったこともあって、あまり思い返すこともなかったんです。ただ、昨年当時プロデュースで入ってくれていた上田禎さんの家に遊びに行った時に、たわいもない昔話の中で”あの音源どこにいったんですかねえ?”と聞いたら、上田さんが”あるで!”と。。。上田さんが保管してくれていたんです。レコーディング後にトラックダウンの終わった2ミックスのマスターが残っていたんです」


──ミックス後の状態ってことですよね。


高橋 「そうなんです」


──そのマスターを上田さんが持っていたことは知っていたんですか?


高橋 「いや、知らなかったんですよ。僕もアルバムの内6曲分のコピーは持っていたんですけど、全曲入ったデータは持っていなかったんです。だから半分以上の曲は10数年ぶりに今回聞いたんですよね。昔、上田さんがファンの人に聞かれたことがあったらしくて、そのときに俺が持っていると話していたらしいんですけど、そのファンの人も冗談だと受け取ったらしくて半ば都市伝説的な感じで噂があっただけで・・・。上田さんもこれまで聞かれなかったから話してなかっただけだったらしいんです(笑)」


──ミックスが終わっていたということは、当然高橋さんもご存知だったんですよね?


高橋 「もちろん、当時ジャケットも作っていましたから。確か国立競技場で背面飛びをやったり、サッカーをやっている様子を撮影して、それをコラージュしたジャケットを作ったんですよ。マスタリング以外は全て終わっている状態でしたね。[愛の言葉]というシングルが出ていたんですけど」


──98年リリースのやつですね?


高橋 「そうです。それが出す予定だったアルバムの先行シングルみたいな形で本来入るはずだったんですけどね」


──マスターがあることを知っても、当時のことを思うと心情的に大変だったかと想像されるのですが、何故リリースされようとお考えになったのですか?


高橋 「うーん、言葉は悪いかもしれないですけど、やっぱり自分の中ではもう過去のものなんですよね。鮮度がゼロになったというか・・・。その状態になったことで、逆に新鮮味を感じたんですよ。あまりにも(見つかったことが)意外だったということもあって。数年前や、45年前とかであれば、リリースは実現していなかったと思うんです」


──15年前の当時にミックスまでされていたということは、今回はマスタリングのみされたということですか?音は当時のまま?


高橋 「音は当時のままですね。逆にそれがよかったと思っていて。ここでもしあの音を大きくしたいとか、録りなおしたいとか言い出していたら、リリースできなかったでしょうね。ただ1曲だけ出来が悪い曲があって(笑)、これはないな、って思って録り直しました」


──その曲が11曲目の音楽」なんですね。


高橋 「そうです。あとは当時のままですね」


──今回のジャケットCentral67木村さんなんですか?


高橋 「前作『大統領夫人と棺』と同じ木村さんです。いつもはこうして欲しい、といったものをデザインしていただく際に伝えるんですけど、今回の作品は何もなくて・・・。ただ99年に作ってもらったときに音叉がモチーフに使われていたんですよ。だからそれは入れてもいいかもしれないですね、と話していて、あとは木村さんにおまかせですね」


──音叉?


高橋 「当時はわりと自分が表に出るような、コンセプチュアルなジャケットを作っていたんです。『大統領夫人と棺』もそうですけど。それに対して「俺いなくてもいいんじゃないか」といったところからスタートしたんですよ。自分の中でも周期があって、表に出たい暑苦しい自分と消し去りたい自分というのがあってその流れですね。セカンド、サードアルバムがダークな感じでやりきったところがあったんです。だから幻となったこのアルバムはちょっと落ち着こうと。あとこの時期はたくさん曲ができていたときで、いい状態だったんですよ。よく名盤と呼ばれる作品というのはアーティストの機が熟したときだと思うんですけど、自分の中では当時がまさにそんな時期で『やるぞ!』っていう感じだったので、そのいい状態の時に作品がリリースが出来なかったのは、すごいショックでしたね」

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