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スカート サイダーの庭 発売記念インタヴュー

若手ポップ・マエストロのスカート澤部渡さんが、4枚目のアルバム『サイダーの庭』を6月4日にリリースした。澤部さんは、結果として渋谷系ムーヴメントの産みの親となったトラットリア・レーベル、Witsの両レーベルを90年代初頭に率いたことでも有名な日本最高齢の現役音楽プロデューサーである牧村憲一さんや音楽ジャーナリスト岡村詩野さんらにも早くから評価されてきたミュージシャンで、コアな早耳リスナー中心にファンを着実に増やしてきた。

 

前作『ひみつ』のインタヴューのときにも感じたのだが、彼はとても素直でそして音楽に対してひたすら純粋・無垢である。その人懐っこい健気な姿勢のせいか、中学生のときからyes,mama OK?(以下、イエママ)の大ファンだった彼は、大人になり憧れだったそのイエママのアルバム『CEO』の再リリースの編集を手掛け、今ではサポートベーシストも務めるようになった。そして昨年はこれまた彼が大好きなカーネーションのトリヴュート・アルバムも担当するなど、同世代はもとより年上のミュージシャンからも愛される存在になっている。

 

そんな彼の1年3ヶ月ぶりのインタヴューでは、アルバムに関する話はもちろんのこと、ここ最近の活動状況についてもお話を伺った。本インタヴューがスカート澤部渡を知る上での一助になってくれたら嬉しく思う。

 

 

取材・文・撮影 黒須誠/編集部

もともと一年に一枚はアルバムを出したいって気持ちがあって。

──リリースおめでとうございます。昨年の『ひみつ』発売から1年3ヶ月ぶりの新作になるわけですが、結構ハイペースですね。

 

澤部 渡(Vo/G) 「そうですね、作品は出せるのであればどんどん出したいんですよね」

 

──早速聴かせていただきましたが前作に比べるとアルバム全体としてすっきりコンパクトにまとまった印象があります。

 

澤部 「そうなんです。あんまりとっちらかっているのもどうかと思って、曲数も抑えているんですよ」

 

──『サイダーの庭』制作にあたりコンセプトなどは考えられました?

 

澤部 「コンセプトはほとんどなくて。もともと一年に一枚はアルバム出したいって気持ちがあって、じゃあ一年に一度のリリースでどうやったら質を落とさずにやれるか考えたときに、ミニアルバム、フルアルバム、ミニアルバムと交互に出すのがいいんじゃないかと思っていたんです。今までもそうで『エス・オー・エス』『ストーリー』『ひみつ』はフル、ミニ、フルなんですよ。そういう風に作れば極端に擦り減ることもなくリリースを続けられるのかなあと」

 

──ということは出来上がった曲の中から選んで作ったアルバムということになると思いますが、タイトル曲にもなっている「サイダーの庭」、これはどんな意図で?

 

澤部 「これは久しぶりに暗いだけじゃない曲ができたからですね。スカートは暗い曲が多いじゃないですか? 「サイダーの庭」はそういうところが少なめだったので」

 

──候補曲はどれくらいあったのですか?

 

澤部 「フルアルバムを録れるくらいはあったんですけど、あえて減らしたんです。それこそ最初は「サイダーの庭」をタイトル曲にしないで、昔作ったけど発表していない曲を入れてミニアルバムを作ろうと思ったんです。7、8曲入りのやつを。でもここ1年で書いた曲がどれもしっくりきていたので、それだけで固めたアルバムを 作ってもいいのかなと思ったんです。だからストックはストックなんですけど2,3年前の曲を掘り返してきてといったものは1曲もないんですよ」

 

──とすると「今」の澤部さんがギッシリ詰まっている作品なんですね(笑)。

 

澤部 「そう言われると変な感じですけど、その通りですね(笑)」

 

──「サイダーの庭」をタイトル曲にしようと思ったのは?

 

澤部 「曲として一番気に入っているというのもあるし、自分のキャリアの中でも今までないような曲ができたからですね。わりとシンプルなスリー・コードで始まったと思いきや、途中すごく変なうねりのあるようなコード進行になるところとか(笑)」

 

──シティポップに代表される都会的な香りがする音作りが好きなのかなとも思いましたが?

 

澤部 「確かにそうですね。キリンジなども大好きだし。でもAORまでいくと苦手なんですよ。洗練されているというよりも...はっぴいえんどの本質...かどうかわかりませんけど、みんな都会的だとか言っていますけど、はっぴいえんど的なものとAOR的な都会って全く別だと思うんですよ。はっぴいえんどになくてAORにあるものは圧倒的な技術だと思いますし、僕はその技術を憎んでいるようなところがあるので(笑)。だからAORだったら松本隆さんのドラムのほうが僕の思想に近いですね」

 

──ここでいう技術ってのは演奏? それとも楽曲?

 

澤部 「両方ですね(笑)。小憎たらしい転調とかバークリーメソッド的なものはAORの方が多いとは思うし...多分自分の中での仮想敵みたいなものなのかも(笑)」

 

──でも澤部さんは音大で音楽理論を学んでいるから、普通のバンドよりはそのあたり強いと思うのですが。

 

澤部 「いや、あまりそこは得意じゃないんですよ。深く勉強しないまま卒業しちゃったんですよね…だからかも(笑)」

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