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黒沢秀樹 MEET MUSIC Vol.23

 

 

 

 

selected by 黒沢秀樹(uncle-jam/HOW/L⇔R

一枚だけの、珠玉のアルバム


──オススメの名盤を3枚教えてください。

 

こんにちは、黒沢秀樹です。

今回はそのアーティスト名義で発表された唯一のアルバム、というテーマで選んでみました。幻の名盤、と言われていたような作品は沢山ありますが、その中でも特に思い入れの深い作品です。


幾多の輝かしいヒットの裏側に埋もれてしまったものが、時を経てまた注目されるというのは何度でも繰り返されるべきだと思います。この3枚も、僕がデビューした90年代には再発されて注目され、一部の音楽好きなら誰もが知ってる(と言ったら大げさですが)くらい、再評価されて有名になったアルバムです。これを見て興味を持ってくれたり、もう一度聴き直してみようと思ってくれる人がいたらうれしいです。

 

 


1枚目

ビギン ミレニウム

1997/04/21 release

オリジナルは1968年のレコード盤

ビギン 

ミレニウム

 

このアルバムを聴いたときの衝撃はすごいものがありました。すっかりはまってしまい、しばらくこればかり聴いてたような気がします。

中心人物だったカート・ベッチャーという人の圧巻のコーラス・アレンジを軸として繰り広げられる、めくるめく実験ポップは、まさに音の玉手箱状態。複雑に絡み合うリズムと次々に登場する色とりどりの楽器中には、琴なんかも出て来ちゃったりして、とにかくサウンドメイキングがぶっ飛んでます。

                  

もはやロックなのかポップスなのかプログレなのかよくわからない次元の作品なんですが、聴き心地はどこまでもフレンドリーで、難解な印象がないのがすごいところ。

 

楽器ひとつひとつの音のキャラクターや、それを乗せた時の聴こえ方にとことんこだわったサウンドメイキングには、かなり影響を受けました。

 

昔、ハードな合宿レコーディングの最中、深夜に誰もいなくなったスタジオのラージスピーカーで好きな音楽を爆音で聴く、ということをよくやっていたんだけど、その中でもこのアルバムは、聴く度に「なんてカッコいいんだ!」とまたやる気を出させてくれる一枚でした。

 

その後、たまたまメンバーのジョーイ・スティックとリー・マロリーが来日した時に、会って話をする機会がありました。緊張してあれやこれやとヘンなことも沢山聞いちゃいましたが、すごい体験したなあ、と今でも思ってます。

 


2枚目

夢語り シティ

2004/04/21 release
オリジナルは1968年のレコード盤

夢語り 

シティ

 

なにしろ昔は高嶺の花だったんです、このレコード。


よく出回っていたモノクロのジャケットの海賊版でさえ、学生時代の僕には手が届くような金額ではなかったし、オリジナルを目にする機会があったとしても、それを手に入れるのは夢。


カセットテープにダビングしてもらって聴いていたこのアルバムを、いつか本物で聴きたいとずっと思っていました。


                  

今はCDも再発されて誰もが聴く事が出来るようになったけれど、当時の想いが強かったためか、その後も見つけるとつい買ってしまうということを何度かした思い入れの深いアルバムです。

 

キャロル・キングが名盤「つづれおり」で世界的な大ヒットを生む以前、当時の旦那さんのチャールズ・ラーキーと、この前の来日公演で夢の共演を果たしてくれたギターのダニー・クーチと3人で組んだバンドがこの「TheCity」。

たった一枚だけのオリジナルアルバムですが、この中にはその後のキャロル・キングがシンガー・ソングライターとして世界を席巻することが充分に伝わって来る、素晴らしい楽曲と演奏が収められています。

 

なんともいえないリラックスしたフレンドリーな雰囲気と、高度に洗練されたアレンジ、それを可能にするための抜群のテクニック。そしてなにしろ曲そのものの素晴らしさ。どうしたらこんなサウンドがつくれるんだろうと憧れの気持ちを持っていました。

 

ある時仕事で訪れたニューヨークで、グリニッジ・ヴィレッジの裏通りにあったレコード屋さんの奥に、お店の人に言わないと見せてくれない棚がひとつあったんです。その中にあった素晴らしい状態のオリジナル盤を見つけたときは、思わず手に取っちゃいました。ニューヨークで買った、シティ。今でも大事にしているレコードです。


3枚目

Seconds of Pleasure [Import, from US]Rockpile

1990/10/25 release

オリジナルは1980年発表

Seconds of Pleasure 

Rockpile

 

「黒沢くん、パブ・ロック好きなの!?」と、ある日突然電話がかかって来たんです。相手は、なんとシュガーベイブやナイアガラ・トライアングルの、そしてプロデューサーとして数多くの名盤を手がけて来た伊藤銀次さん。

それまで何度かお会いして、現場をご一緒させてもらったことはあったけれど、僕に直接電話がかかってくるなんて思っていなかったから、着信の画面を見た時に何事だろうと、ちょっと緊張したのを今でも覚えています。

                  

銀次さんはちょうど昔のアルバムのリマスター作業をしていて、制作ディレクターの土橋さんと当時のレコーディングの思い出や、影響されたバンドのことなどを話していたそうなんですが、その時話題に出たのがこのバンド、Rockpile。

 

1970年から80年代のイギリスで「パブ・ロック」と呼ばれたムーブメントの中、たった一枚のアルバムを残しただけで消えてしまった伝説のグループ。シンプルなギターリフとポップなメロディーに組み合わされる絶妙なハーモニー。そのサウンドの中には、僕が愛してやまないR&Rやポップスの エッセンスがたっぷり詰め込まれていて、大好きなアルバムだったんです。そのことを知っていたディレクターが、僕の事を銀次さんに話した、というわけ。

「え、パブロックですか?大好きですよ!Rockpileとか、ニック・ロウとか」

 

そこからは話がはやくて、僕たちは年齢やお互いの立場のことなんてどうでも良くなって、このバンドの話で盛り上がりました。「今度一緒にRockpileのコピーして遊ぼうよ」という銀次さんと、まるで高校生みたいに小さなリハーサルスタジオに集まって遊んだのが、今僕と銀次さんが組んでいるユニット「uncle-jam」の生まれるきっかけ。

 

今でもライブでこのバンドの曲をカバーしたりしています。一枚のレコードが、とても遠いところにいると思っていた人との距離を一瞬で縮めること、そして新しいものが生まれるきっかけになること。音楽の持っている力って、すごいんですよね。


 

──名盤との出合いで印象的なエピソードなどがあれば。

 

音楽が好きな人たちは、みんなそれぞれにアーティストや曲に熱い想いを持っています。僕はそういう話を聞くのが好きだし、話をしているうちに、その曲が聴きたくなってきます。そして、そこから付き合いが始まったりします。

例えば、何かの現場で一緒になったミュージシャンたちやスタッフ、お酒の席で知り合った音楽通の仲間など。合い言葉は「最近どんなの聴いてるの?」

今はなんでも情報がすぐに手に入る時代。でも、一番信頼出来るのは、「今度のあれ、最高だったよ!」という誰かのひと言だったりします。僕にとって名盤との出会いは、人との出会いでもあります。

 

 

 

──リスナーに向けて一言お願いします。

音楽は僕にとって、思い出や、その時々のいろんな風景とセットになった「大切なもの」です。誰もがいつでも簡単に聴けるような便利な時代なっても、みんなにとって音楽がずっと「大切なもの」であって欲しい、と思っています。

 

 

 

──ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 


<ライブ情報>

uncle-jamのuki-uki☆Xmas Party

出  演:uncle-jam

日  程:2011年12月24日(土) open 18:00/start 19:00

会  場:東京・下北沢 風知空知

チケット:前売(予約) 3,500円/当日 4,000円(+1drink)

予  約:風知空知 電話予約受付中 03-5433-2191(17時~26時)

 

 

 

「お正月だョ、全員集合!吉祥寺の杉まつり!

 〜今年1年が辰年でありますように〜」

出  演:【白組】杉真理、村田和人、松尾清憲、伊藤銀次、黒沢秀樹、山田稔明 ほか

      【紅組】須藤 薫、渡辺かおる、野田幹子、二名敦子、峠 恵子、遠藤響子 ほか

      【演奏】藤田哲也、サントリィ坂本、山本圭右、橋本 哲、里村美和、杉 未来ほか

日  程:2012年1月2日(月) open 15:00/start 16:00 (20:00終演予定)

会  場:東京・吉祥寺 STAR PINE'S CAFE

チケット:前売(予約) 5,000円/当日 5,500円(+1drink)

予  約:STAR PINE'S CAFE Tel.0422-23-2251(16:00〜24:00)info@mandala.gr.jp

 

 

 

The Day Of The Moored Music!

出  演:黒沢秀樹@三崎港Vol.1/スペシャルゲスト:sowansong

日  程:2012年1月14日(土) open 15:30/start 16:00

会  場:三崎西銀座「貝がらホール」

チケット:2,500円

予  約:ミサキプレッソ 046-882-1680 (水曜日定休)

 

 

 

黒沢秀樹アコースティックワンマンライブ

出  演:黒沢秀樹

日  程:2012年1月22日(日) open 18:00/start 19:00

会  場:東京・下北沢 風知空知

チケット:前売(予約) 3,500円/当日 4,000円(+1drink)

予  約:風知空知 電話予約受付中 03-5433-2191(17時~26時)

 

 

 

 

 

 

 

 

黒沢秀樹

(クロサワ ヒデキ)

黒沢秀樹 MEET MUSIC

1970年8月28日生まれ。1991年、L⇔R のギタリストとしてミニアルバム「L」でデビュー。1993年、第一回服部良一音楽賞受賞。1995年にはシングル「Knockin’ On Your Door」がオリコンチャート1位を獲得。13枚のシングル、7枚のアルバムを発表。1997年のL⇔R活動休止後、ソロ活動を開始。1999年にアルバ ムと同名シングル「Believe」を発表、以降3枚のミニアルバムをリリース。有里知花、石野田奈津代、sowansongなどのプロデュースや、ギタ リスト、コンポーザーとしても幅広く活動中。ライターとして音楽誌への執筆も多数。2010年6月より伊藤銀次とのユニット「uncle-jam」を始動。幅広いキャリアと人脈を生かし、ジャンルや業界の垣根を超えた活動を目指している。

 

 

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2011年12月22日

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