a solitary journey
出 演:藤島美音子(Swinging Popsicle)
溝渕ケンイチロウ(ザ・カスタネッツ、KGSS ON THE PEAKS、Qube、DQS)
中森泰弘(ヒックスヴィル)
日 程:2011年11月28日(月) 開場:19:00 開演:20:00
会 場:下北沢 BAR CCO
チケット:2,000円(+2drink 1,000円)
※恐縮ですが文中は敬称略とさせていただいております。
普段は余裕の表情でステージに立っている3人のミュージシャンも、今回ばかりは極度の緊張状態で、さすがに不安げな顔色をのぞかせていた。視線のやり場から、ステージ上での動作ひとつひとつまで、どこ かぎこちないんだ。でも忘れないで欲しい。決してあなたたちは一人で旅に出ているのではなくて、その場にはちゃんと一緒に歩いている人達がいることを、共 に歩んでいるファンがいることを。
会場の下北沢CCOは満員で立ち見も出るほどの盛況ぶり。
そんな中、まず一歩目を踏み出したのはカスタネッツやDQSのドラマーでおなじみの溝渕ケンイチロウ。普段の相棒はドラムスティックだが、この日は黒いエレ キギターをひっさげ颯爽と登場。いつものごとく演奏から入るのかと思いきや、この日はなんとMCからスタート。イベント名の「a solitary journey」の意味は一人旅。一人で演奏することから名づけたそうだが、彼がここ数年趣味ではまっている山登りや最近スタートした山登りバンドの 「KGSS ON THE PEAKS」の影響も多分に受けているようだ。
この日は昔から書きためていたというオリジナルを5曲演奏。エフェクターで音を適度に歪ませながらギターを弾く姿はとても新鮮で初々しかった。数日前大阪で 一人ライブをやったときには「逃げ出したくなった」というストローク中心のギタープレイ。恐らくは彼がいつも聴いている仲間の音との違い、プロとしての自分への悔しさが同居していたのだろう・・・・以後MCもほとんどなく、黙々と歌いつづけていた彼の姿はどこかストイックでかっこよかった。歌も想像していた以上によくて、特に2曲目の「ハッピーデイズ」では、僕が大好きなコード進行に彼のポップセンスの妙が隠されていて、その曲が進んだ先にある道標に向かって 自分もなぞりながら後を追うといったそんな心境で気持ちよく聴くことができたんだ。最後の「タイムマシーン」が終わったとき彼の笑顔、安堵感は山の頂きを制覇したときの顔そのものだったのではないだろうか。
15分程度の休憩ののちに、続いて山に向かって歩きはじめたのはSwinging Popsicleのヴォーカリストの藤島美音子。ポプシのライブでもお馴染みのアコースティックギターとキーボードをお供に登場した彼女も極度の不安状態だったようだ。オリジナル4曲にカバー2曲、Swinging Popsicleの歌を1曲といった構成で非常に楽しむことができた。偶然にも数年前に同会場で行われたL.A.M.F.1回目で演奏して以来の「Endroll」からはじまった彼女のステージ。一人がはじめてとは思えない堂々とした演奏に一瞬でひきこまれてしまった。スローな英詞のナンバーを歌いあげる姿にはじめて彼女を見た友人も虜になったようだ。続いて披露されたのは「うわごと」というミディアムナンバー。英詞と日本詞が織り交ざる歌は初期のラブサイケデリコのように違和感なく自然にとけこんでいた。「遠くでうわごとのように深く~」「もう二度と手はふらないよ~」「もう一度手をさしだせと行き場を失って~」一部だけ聞き取れた詞の世界からも憂いや哀愁がただよっておりマイナー系のコード進行の楽曲にピタリとマッチしていた。
「ミネコフと呼んでください☆」と普段にない可愛らしい自己紹介ではじまったMCは彼女らしくない弱気な発言がずらり。「もう一度やり直したい・・・」「いつも間違えないところで間違えたり・・・弾き語りには悪魔がいますね」といった発言の背景には、数日前にこのライブへの極度のストレスで十二指腸潰瘍と診断されたことも大いに関係していたようだ。薬を飲みながらの旅はさぞや不安だったに違いない。ここで一曲「卒業写真」のカバーを歌った彼女。「このお話をもらったときに、考えた自分への課題曲」と話していたように人前では初披露!となる指弾きによるアルペジオは、弾き語りにぴったりの選曲、口ずさんでいる観客も多かった。
続いてはサポートにサトウヨシヤを迎えてセルフカバーとなる「あるべきかたち」。サポートギターのもと、藤島はキーボードでの弾き語りを披露。さすがにこの頃になると本調子となっていたようで、歌声から不安の色は消え、持ち前の天使の歌声(筆者が勝手に名づけている)、どこまでも気持ちよく伸びる歌声、を会場全体に響きわたらせていた。この曲で落ち着いたらしく、続けて演奏したオリジナルは2曲ともとても楽しそうな表情で歌っていた。「Timeline」はイントロがポプシの「Blue Small Sailboat」に似た感じの美しいメロディの歌で、従来のポプシファンにはたまらない曲、一方「Untitle」は跳ねるようなリズミカルな歌で彼女の引き出しの広さを見せてくれた格好だ。
最後は彼女が敬愛するジョニ・ミッチェルの「All I Want」をカバー。アルバムblueに収録されている名曲で僕も大好きな曲だったこともあり、ついつい体が自然とゆれて魅入ってしまったようだ。ステージには藤島美音子がいたのだけれど、僕にはジョニ・ミッチェルがいるような錯覚さえ覚えた、いやこれは決して大袈裟なことではなく軽快で美しいメロディに合わせた彼女の歌声がそうさせたのだと思う。曲としてもリズムやコード進行が難しく、本日演奏した中でも一番ハードルが高かったと思われるが、それをなんなく弾きこなす彼女の歌と演奏に会場からは盛大な拍手が送られていましたね。満身創痍の中、演奏面では微塵も感じさせないプロ意識も含めて元気づけられました。いつか彼女のカバーアルバムも聞いてみたいですね。
そして最後の旅人はヒックスヴィルの中森泰弘。洋楽のカバー中心に6曲演奏。特筆すべきは洋楽をすべて日本語の訳詞で歌ってくれたこと。ただすみません・・・実はMCが面白すぎて曲の印象があまりなくて(笑)終始会場は笑いの渦だったんですよ。曲はモンキーズのカバーや1930年代のアメリカの曲のカバーなど普段なかなか聞けない隠れた名曲を披露。
どの歌も中森さんの解説つきだったので、曲はわからずとも楽しく聞けたのはよかった。友達もすごくわかりやすくて面白かったと話していたしね。 普段ヒックスヴィルの時はあまり話をしない中森さんですが意外な一面が見れましたね。特に洋楽の訳詞のお話が面白くて、中森さんが訳詞をされた歌もたっぷりと聞かせてくれました。また当時のポプシクルとの出会いの話なども興味深くて。ポプシのインディーズ盤の裏ジャケット写真を撮られたのが中森さんだったとか。そのほかMCではツイッターのフォロワー数のお話も・・・・フォロワー増えるといいですね(笑)。
演奏はさすがにベテランらしくギターから色んな音を紡ぎ出しながらテクニックの違いを見せつけてくれました。これでもソロではやるのは5年ぶりだったそうだけどそんなことは微塵も感じさせない楽しいステージ。今でも思いかえすと笑いがこみあげてきます。
写真はこの日限定カクテル「ON THE PEAKS」。テキーラベースの強いカクテルは、ステージ演奏と合わせて身も心もあたたかくしてくれましたよ!
改めて藤島美音子のオリジナル曲を思いだすと60年代、70年代の洋楽を聴いているような感覚を味わった。それは曲の構成だったり、歌い方だったり。 彼女が尊敬しているとジョニ・ミッチェル、フェアグラウンドアトラクション、キャロルキングなどの影響が色濃く出ているというか。披露した4曲全てに英詞が使われていた点もそうだろう。
溝渕ケンイチロウ、藤島美音子、中森泰弘・・・・三者三様で各々の新しい一面が見られて心底楽しい時間だった。ライブならではの緊張感も、アコースティックだからこそいつも以上に伝わってきて、まさにライブで・・・。エレキ、アコギ&キーボード、エレキ&MCと3人とも歩く道は違えども、目指した先の山の頂上にはたどり着くことができたようだ。そこからの見晴らしはどんなものだったのだろうか?是非第2弾のイベントでその見晴らしについて語ってほしいと思う。そして今後はソロデビューも期待したいところだ(笑)。
会場にはadvantage LucyやVASALLO CRAB 75、ハックルベリーフィンのメンバーも応援に駆けつけており、とてもあたたかい雰囲気でした。
改めて中森さん、美音子さん、ケンイチロウさんありがとうございました。
setlist 溝渕ケンイチロウ
1.始まりの雨
2.ハッピーデイズ
3.現在地
4.夜と朝の間に想う
5.タイムマシーン
setlist 藤島美音子
1.Endroll
2.うわごと
3.卒業写真(荒井由実のカバー)
4.あるべきかたち(Swinging Popsicleのカバー)
5.Timeline
6.Untitle
7.All I want (Joni Mitchellのカバー)
setlist 中森泰弘
1.アンジー(サイモン&ガーファンクルのカバー)
2.ダイダ?
3.ケント(バズのカバー)
4.カリコ・ガールフレンド (マイク・ネスミス(元モンキーズ)のカバー)
5.恋のはじまり(ヒックスヴィルのカバー)
6.不明
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