アーティストにとってライヴは二種類のお客様と一度につながることができる場。

 

こんにちは。

ポプシクリップ。です。

 

 

突然ですが、皆さんはライヴ行きますか?

 

このサイトに遊びに来られている人であれば、ほぼ100%の方がライヴ、コンサートを見にいっていると思います。というかライヴがないと人生つまらないと思う、そんな方も多いのではないでしょうか?・・・かくいう私もその一人です。私でいえば、年間50本から70本程度見にいきます。とはいえ僕の周囲だと100本越えの人もたくさんいるので、まだまだだなあと思ってますが・・・。

 

たくさんライヴを見に行くようになると色んなことに気付かされます。業界では当たり前のことでも、普段違う世界を見ている自分からしたら、驚くこともしばしば。今日はそんな中から感じたことをひとつ。

 

 

それは、アーティストにとってライヴは二種類のお客様と一度につながることができる場であるということです。

 

ミュージシャンにとってのお客様は主に二種類あると思います。それはファン・リスナーと業界関係者(取引先)です。ライヴというのはその二種類のお客様が一斉に集まる場なんですよね。当たり前のことなんでしょうが、でもこの仕組みって良くできていると思いませんか?

 

これが普通の仕事だとそうはいきません。例えば私のBtoBtoCの仕事の場合は、対法人、対お客様、それぞれの別々に出向かなければいけません。また10箇所の取引先があったら10回足を運んで挨拶をしなければなりません。ところがライヴにはみんなが足を運びにきます。ある意味非常に効率的なんですよね。しかもライヴではつながりタイムが三回もあります。

 

 

一つ目はこの本番前のリハーサル前後の時間です。

通常は本番前に会場でリハーサルを行います。19時スタートのイベントであれば大体15時、16時頃から始まります。夕方にも関わらず「おはようございます~」と言いながら、会場に来られるアーティストとその関係者。まずはそこで出演者・関係者が「はじめまして、今日はよろしくお願いします」と挨拶を交わされます。

 

そこにはミュージシャンはもちろん、事務所、レーベル関係者にはじまり、メディアの方なども来られます。「最近どうなの?」みたいな話にはじまり、場が盛り上がると「次一緒に何かやろうよ!」といった話になることも。いわばこの時間は、関係者による営業タイムでもあるわけです。リハでの何気ない一言で生まれたイベントや企画って結構多いと思います。現にポプシクリップ。のイベントもいくつかはこの空き時間での雑談から生まれました。ちなみにこの本番前の時間を使ってメディアによる取材などが行われることもあります。私もよく利用させていただいています(^^;

 

またイベントのフライヤー(PRチラシ)を当日持参して来られるミュージシャン・スタッフの方もいます。当日出演するわけではないけれど、各自のイベントを告知したいために、折り込みにくるんですね。なので本番前は出演者以外のミュージシャンがひょっこり現れたりすることもしばしばあります。そこでもまた挨拶があり、つながりが作られていくんですね。レコ発イベントだったりすると特に多いですね。そのアルバムに楽曲提供をしている関係者が集まったりします。少し前だとツイッターでSwinging Popsicleの平田さんが某アイドルに楽曲提供をした折にライヴを見にいったと書かれていましたし、先日の南波志帆さんのイベントに元Cymbalsの矢野さんが見に来ていたし、先日のキリンジの最終公演でも、大変多くのアーティストが来られていました・・・いくらでも事例がありますよね。

 

 

次にライヴ終了後の物販が第二のつながりポイントです。

ライヴ終演後にやることといえば、物販でのグッズ販売ですよね。ファンにとってライヴ直後の感動をアーティストに直接伝える大事な場ですし、彼らからしてもその日のライヴの感想をいち早く知れる大切な時間となります。サインなどファンサービスもしながら、ファンとミュージシャンがお互いの存在も含めて確認しあうことができる時間。昨今は物販がマネタイズの大事な要素となっているのでなおさらでしょう。またファンと書いていますが、実際には業界関係者やミュージシャンもお客さんとして来ています。例えばあるミュージシャンがファンとして憧れのミュージシャンのライヴを見にいきこの場を利用して挨拶、自分のCDを渡したり気持ちを伝えることもあるようです。これらの積み重ねで新たな出会いも生まれますし、ファンとのつながりを強くしているアーティストは多いですよね。

 

 

最後に打ち上げ・歓談が第三のつながりポイントになります。

私の経験では、メジャーレーベルや事務所がマネジメント管理をきちんと行っているところでは、担当者が仕切って出演者との面会時間を作っています。関係者を集め、順番に楽屋での紹介時間を設けるんですよね。そこにはミュージシャンだけではなく、メディアの方々も大勢参加されます。

 

インディーズバンドの場合は、もう少しラフな感じで和気藹々とした簡単な打ち上げをライヴハウス内で行うことが多いですね。サークルの飲み会のイメージに近いかもしれません。誰かが仕切って順番に紹介するというよりは、幹事こそはいるものの会場に残っている人が各自で名刺交換したり互いに挨拶をすることが多いです。ここでも少し気楽なイメージの営業活動が行われますね。でも決して昼間の仕事にあるような仰々しさはあまり感じません。お酒の席ということもありますし、何よりライヴ後の打ち上げです。会場は高揚感に満ちています。 

 

 

ライヴ会場は夢を魅せる場と同時にアーティストにとって大事な仕事現場。しかも会社員が仕事現場である会社に毎日出社するのとは違い、ライヴは月にあっても数回、そもそも一年に数えるほどしかライヴを行わないミュージシャンもたくさんいます。レコ発前後のプロモーション時期をのぞけば大半のミュージシャンにとって、ライヴ会場が多くの人と交流できる主な仕事現場になるのではないでしょうか?

 

 

特にネットとツールが発達したおかげで、今では自宅でレコーディングやミックスなど、作業の大半が行えるようになりました。宅録世代も増えています。そうすると楽曲制作中でもメンバー間ではファイルのやりとりで済ませ、実際には会わないまま完成させることもあります。普段の連絡もメールと電話というのもざらでしょう。昔と比べて圧倒的に直接会う必要性、機会も減ってきているんですよね。

 

 

だからこそ普段は人前にはあまり出てこないミュージシャン、彼らが出てきたときにそれを最大限に活用するような慣習が、すなわち「アーティストがつながる場としてのライヴ」がある・・・一度のライヴで3回のつながりポイントがあり、ファン、取引先双方と一度に出会える場・・・若干こじつけかもしれませんが、私からはこの当たり前の出来事に何かしらの必然性を感じられずにはいられません。

 

 

ライヴ終演後にミュージシャン同士が、アーティストとファンが楽しそうに話しているのを見るのは気持ちのいいものです。もしかしたら、近い将来何か面白いことをやってくれるかもしれない・・・そんな期待もしながら今日もライヴ会場を後にします。