久々のMK日記です。
かなりの長文です。1ページは1600~2000文字程度が妥当というWEBの鉄則を完全に無視しています。すみません。
先日エビスミュージックウィークエンドという、ライヴ、トーク、プレゼンの要素が組み合わさったフェスが恵比寿ガーデンプレイスで開催されました。細野晴臣さん、空気公団さん、吉田ヨウヘイgroupさん、大森靖子さん、ミツメさん、水曜日のカンパネラさん、Awsome City Clubさんなど私が好きなミュージシャンもたくさん出演されているイベントでした。
このイベントで私が一番楽しみにしていたのはトーク・セッション。特にTHE NOVEMBERSの音楽マーケティングに関するプログラムで、今度お手伝いをする新バンドのマーケティング戦略を考えるにあたって、参考にできるのではないかと思ったからです。登壇者にはバンドメンバーの小林さん、海外及びデジタル領域の音楽業界動向に詳しいジェイ・コウガミさんに、先日「始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング -戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-」という音楽マーケティングに関する本を書かれた高野修平さん。この方は戦略PRとソーシャルネットワークと最新のテクノロジーを組み合わせた音楽マーケティングへの見識が深い方で、THE NOVEMBERSには「プランナー」の立場でチームの一員として参加されています。
高野さんとの面識はないのですが、トライバルメディアハウスさんとは以前仕事をしたことがありました。特にソーシャルメディアの企画運用に関して、この会社が業界の各所で様々な実績を残していることは有名で、トヨタ、ローソン、グリコ、キリンなど多くの企業のサポートをされています。また社長の池田さんの著書「キズナのマーケティング」や「ソーシャルメディアマーケター美咲」シリーズは、ソーシャルメディアの捉え方、プロモーションを考える上でたくさんの気づきを与えてくれるのでオススメです。私もことあるごとに何度も読み返しています。
このブログを以前から読んでいる方はご存知の通り、私もマーケティングが専門で10年以上売るための、届けるための仕組みや仕掛けを考え実践し続けてきました。これらの経験を音楽の分野でも活かしたいと思い、あるバンドのお手伝いをさせてもらうことになったわけです。規模は小さいものの高野さんがTHE NOVEMBERSに関わる立場と非常に近いものがあると感じています。
トークセッションでは、チーム運営からプロモーションの実例まで様々なお話がありました。
順を追って聞いたお話を一部編集させていただきながら書き綴っていこうと思います。なお聞き取れなかった部分もあるので多少違っているところもあるかもしれませんが、ご容赦を。
1. THE NOVEMBERSが立ち上げたチーム「MERZ」
2. 高野さんが「MERZ」に参加するようになった理由
3. 「アンセム」のコンセプト
4. 「シェアCD」の開発
5. 「パラレルワールド」のプロモーション
6. 終わらないニュース(戦略PR)
7. バンドとマネージャー、チームの関係は「所属」から「パートナーシップ」へ
8. 大事なのはバンドとファンをつなぐコンテキストと物語
1.THE NOVEMBERSが立ち上げたチーム「MERZ」
THE NOMVEMBERSは以前レーベル「UKプロジェクト」からリリースしていたロック・バンド。UKプロジェクトと言えば新宿下北沢渋谷界隈のバンドマンで知らない人はいない有名なレーベルです。小林さん曰くレーベルではスタッフにも恵まれて大変お世話になったものの、バンドが描く将来像とレーベルが目指す姿が少し違っていたため、一度リセットしたくて、ミニマムな形でやり直すためにレーベルを離れて「MERZ」というチームを立ち上げ、独立したとのこと。
「MERZ」のメンバーはバンドメンバー4人にマネージャーのナメタさんを加えた5人と、その周りにプランナーである高野さんやデザインチーム、映像チームなどが「プロジェクト毎に参加」するかたちになっている。従来の組織のように「所属」するのではなくて、必要なときに参加してもらう形にしていており、海外のバンド運営ではよくある形らしく、それを参考にしたそう。
2.高野さんが「MERZ」に参加するようになった理由
小林さんと高野さんの出会いは2年前のラジオの対談。当時高野さんは小林さんとの会話の中で「共通言語」がたくさんあったことに驚いたとのこと。高野さん曰く小林さんの凄いところは「彼は音楽を作るだけじゃなくて、誰に届ける、どう届けるのかをすごく考えて音楽を作っている」という点。その視点がマーケティング発想であり、プランナーである高野さんをつなぐ共通言語になり、その後のMERZに参加するきっかけになった。
なお高野さんはトライバルメディアハウスでも音楽プロモーションの仕事をしており、それとMERZにおける高野さんの仕事のスタンスとの違いについては「会社でも音楽の仕事をやっているけど、それはスポットの仕事がほとんど。でもそれだと正直よくわからない部分もあって、中長期的に携わるにはMERZがいいと思っている」とのこと。
高野さんと一緒に仕事をするようになったことに対する変化として、小林さん曰く「高野さんと出会うまではマーケティングについてほとんどわかっていなかった。それまでは点でしかなくて、何かをやってもつながっていなかった。高野さんと話をするとちゃんとストーリー、季節感みたいなものがあってそこが共有できているのがいい。判断するのは自分たちだけれど、高野さんからは色々なきっかけをもらって、そこを自分たちで考えてできている」と出会いがバンドにとって大きなものであることを語っていました。
3.コンセプト「THE NOVEMBERSのアンセム」
高野さんの最初の取り組みは今年4月27日にリリースされた彼らのセカンドシングル「今日も生きたね」。この歌のコンセプトはTHE NOVEMBERSの「アンセム」。ここでいうアンセムとは、THE NOVEMBERSらしさが伝わる音楽、例えばフェスやイベントに出たときにファンが「おっ!」と思ってもらえる曲と定義している。小林さん曰く「アンセムとキラーチューンの違いって何なのか?」をメンバーと一緒にたくさん議論したそう。レディオヘッズだったらどの曲だろう、バンプオブチキンだったらどの歌だろうか? みんなが違う曲を挙げることもあった。高野さん曰くそうやってメンバーと何度も議論ができたことで意思統一を図れたことも話されており、きちんとしたコミュニケーションが大事であることを再認識。
4.バンドと世間をつなぐ翻訳と「シェアCD」の開発
「アンセム」をテーマにしたデモが小林君から届いたときに、そこからの翻訳、ファンとメンバーをつなぐものを作るのが僕の仕事だったと高野さんは語ります。音楽のことは正直わからないからそこはバンド側にまかせる、しかしそれを如何にしてリスナーに届くように翻訳していくのかが僕の仕事、という認識で作業を進めたとのこと。
そして議論の結果、そのアンセムソングを大切な人にだけ共有する「シェアCD」を開発した。(シェアCDとは一枚買ったらもう一枚同じものが歌詞カードも含めて入っているもので、from、TOを書いて大事な人に広めてもらうといった企画)単なるオマケCDとは、買った商品と等価値のものが同梱されている点が違うとのこと。そしてシェアCDという言葉(プロモーション・ワード)を作ったこともポイント。 小林さんがこれを持って前のレーベルの社長のところに持っていったところ、大変喜んでくれたとのこと。社長曰く「シェアCDというコンセプトは俺達だったらできなかった、小林君が頑張っていることがわかって嬉しい」と話してくれ、小林さんの立場としてはレーベルを出て、同じことをやっていたら意味がないし合わす顔もないけれど、こうして新しいことをやっていることを伝えにいけたことはよかったと、話されていました。
シェアCDについて高野さん曰く「例えば街中にCDが積みあがっていて、それをどうぞ持って行ってください、とやってもシェアCDかもしれない。でもそれでは「大事な人にだけ」ということにはならない。誰にでもOKということは、誰もが持つ動機ではないということ。そういうことには興味がなかった。限定することが大事だった」とシェアCDの意味、意義について丁寧に解説。この点は昨今流行しているフリーで作品を配信することに対する彼らなりの考えにもなっているなと感じます。
5.「パラレルワールド」をコンセプトにしたプロモーション
9月27日リリースされた5th Album『Rhapsody in beauty』のアルバムコンセプトは「パラレルワールド」で、高野さんもメンバーもこのコンセプトを元にプロモーションのプランニングをしたとのこと。「パラレルワールド」については小林さんがブログでも経緯を丁寧に書いています。これはコンセプトを理解する上で必読なので、ぜひ読んでみてください。
■パラレルワールド
http://the-novembers.com/weblog/2014/7331/
新作リリースにあたっては「誰に届けるか」という点を考えたそうです。「ファンという定義でいうと、新曲を欲する人は今のファンと考えていい。昔の曲は知っているけど、今はそうでもなければ今のファンではないと思う。もちろん大きな意味ではどちらもファンには違いないけれど、ファンには色々な階層があるということが大事で、例えばきゃりーちゃんのフォロワーは100万人以上いるけど、アルバムが100万枚売れているわけではない。じゃあこの100万人がみんなファンかといったらそういうわけではないと思う。例えば握手会をやるバンドがいたら、それはコアなファンに向けた企画としてはいいけど、ライトファン向けではない」ということで、ファンとは何かを改めて定義した上で、どうやって届けるのかを考えたとのことでした。
6.終わらないニュース(戦略PR)
ここからはアルバム『Rhapsody in beauty』でのPR活動について教えてくれました。余談ですが、PRと宣伝をごっちゃにされている方が多いので補足すると、PRとはPublic Relationsのことで、単に商品やサービスを宣伝するだけでなく、お客様との関係構築全体を含めた活動を指します。だからバンドの新作の広報リリース原稿を書いてメディアに送ることだけとか、一方通行の宣伝をするだけではないのです。どのようにしてバンドをリスナーに届けて、リスナーとバンドの関係を作っていくのか、全体を考えた活動を指すんですね。PRと言いますが、日本では従来の広報活動などとの違いをあえて明確にするために、「戦略PR」という言葉を使う場合もあります。これらも専門書が出ていますので、興味ある方は調べてみてください。
話を戻しますとTHE NOVEMBERSの新作については、話題を獲得、維持するために「終わらないニュース」ということで3週間の間に9つもの情報を適宜発信して盛り上げていくよう取り組んだそうです。ちなみに今回紹介してくれた9つのニュースはアルバムプロモーション全体の2/3であり、まだ1/3続きがあるとのことで、そちらについても今後楽しみにしておいてくださいとのことでした。
第一弾:tobirdによる全面カラージャケット
これはバンドのファン向けの施作で、バンドの新作を待ち望んでいたファンに向けたもの。以前までは白黒だったジャケットが全面カラーになったことで、ファンの間で口コミしたくなる要素も入っているとのこと。
第二弾:アー写を公開
これもファン向けの施作、上條淳士先生によるアー写を採用。 アーティスト同士のコラボによって上條先生のファンにもTHE NOVEMBERSのについて届けることができたとのことでした。この考え方はコラボの基本ですね。
第三弾:レターアド、雑誌「音楽と人」
高野さん曰く「広告にお金を出すんだったら意味のあるものにしたかった」そうです。雑誌「音楽と人」は、人にフォーカスを当てた雑誌だから、それであれば手書きの広告にしたらどう?と小林さんに話したとのこと。メディアの特性を理解した上での取り組みですね。またここでもプロモーションワードとなる「レターアド」という新しい言葉を作ったのも大きかったそうで、それがあることでニュース性が高まり広まっていくとのことでした。小林さん曰く「広告という公の場でパーソナルな手書きの手紙を書いたのは、それも公とパーソナルというパラレルワールドのコンセプトに合っていて意味があるから」とのことでした。
第四弾:Spotify世界先行配信
このニュースではテック系の人たちに届けるという意味もあったのと、もともと小林さんから、THE NOVEMBERSは海外のファンに評価されている、という話があってそれを意識した企画だったとのことです。Spotifyは日本では聞けないので、日本のバンドの音楽なのに日本では最初に聞けないのはコアなファンからしたら、ないがしろにされた感じを与えてしまうのではないか?とも思いますが、今のタイミングで使うことで話題獲得に貢献したのでしょうね。日本と海外という比較もパラレルワールドというコンセプトにつながっているそうです。
なお上記4本だけでは、「強度」が足りないので、この間にも色々なバンドに関する細かいニュースを作り発信するのが大事だったとのことです。小林さんのプライベートについても媒体に載ったそうです(笑)
第五弾:「Rhapsody in beauty」11時間フル視聴。
11時間についてははバンド名とも関連づけたもの。フル視聴の場所としてYoutubeを選んだのは、今の最大公約数がそこだったから。サウンドクラウドやバンドキャンプはまだ知っている人しか知らないサイトなので。この企画はライトファンに向けのものだった。
第六弾:24時間フリーダウンロード「僕らはなんだったんだろう」をサウンド・クラウドで配信。
これはYoutubeの企画が終わった瞬間に続けてスタートさせた企画。その連携が大事だったということで、恐らくYoutubeで知ったライトファンの誘導することで、よりバンドの音楽について触れてもらいたかったんだろうなと想像します。高野さん曰くこれはコアファン向けの企画だったとのことでしたが。
第七弾:ミュージックビデオ「Romance」-Nomal Ver -公開
今後も別バージョンがある、ということを伝える意味で「Nomal Ver」にした。 今後についてはまだ言えないのでその場では省略されましたが、気になりますね。
第八弾:After Stage Pass MUSICA×THE NOVEMBERS
音楽雑誌「MUSICA」との企画。雑誌を買った人が雑誌に掲載した広告にあるINVITATIONを持ってきてくれたら、今後行われるスタジオコーストのライヴ後にステージに入れる権利を与えたものとのこと。これはMUSICAのファンにTHE NOVEMBERSを届けるという意味もあるし、ステージからの様子をファンに体験してもらいたかったというバンド側の感謝の意向も含まれた企画のようです。特に話には出ていませんでしたがコアファン向けの企画でしょうね。
第九弾:MUSICA × THE NOVEMBERS「TOUR – Romancé – Special Web Live」
スタジオコーストは東京にしかないので、地方の人は来れない。そこでMUSICAにコードをつけてそのコードを持っている人だけWEB限定で見られるものを作ったそうです。彼らのオフィシャルサイト(http://the-novembers.com/)からリンクがありました。
高野さんは「上記9つのニュースを3週間の間に連打した。普通のアルバムリリースでやるのと比べて圧倒的な情報量の違いがあり、時間軸も考えて設計をした。もちろんニュースを出したとしてもメディアに載る保証はない。だからメディアがニュース価値を見出してくれるような価値を考えてニュースを作るようにしている」とのことでした。私もリリースを書くときはいつも悩みます。ネタは鮮度と企画が命ですからね。でも上記9つのニュースは、確かに多いですよね。
普通のバンドだったら「発売リリース」「ミュージック・ビデオ公開」「試聴」くらいだろうしね。メジャーであれば「タイアップ決定」などもあるかもしれませんが。また「発売リリース」から実際の発売まで数カ月空くこともざらで、その間にファンも忘れてしまいますからね。余談ですが、人の記憶はだいたい21日だそうです。なので私がプランを組むときは最低でも2週間以内に次のネタを出すような仕掛けをしています。
こうやって何度も何度も話題を提供することで、ファンにたくさん触れてもらって関係を高めていくのは確かにいい方法ですね。昔と違って個人が受け取る情報が多すぎるので、それくらいやらないと届かないという、情報洪水の時代だからこそ必要なことなのでしょうが。ちなみにアルバム発売後はニュースを出していないそうです。それはアルバムを買った人に聴いてもらいたいということで、あえて空白期間を設けているとのこと。残り1/3のプロモーションも気になるところです。
7.バンドとマネージャー、そしてチームの関係は「所属」から「パートナーシップ」へ
その後高野さんと小林さんとの会話の中で下記のようなお話がありました。それはアーティストとプランナーが双方のベースを理解していることが大事であるということです。高野さんは「僕は音楽をどうやって作ったらいいかわからない。だから小林君が作った曲を互いに翻訳しあっている」とのこと。小林さんは「互いの得意分野を持ち込む」ことがチームとしてやっていくのに大事だと話されていました。
また私も気になるマネージャーの存在について、小林さんは「マネージャーはすごく大事で、自分たちのことを知っている人、信用できる人ということで役割は大きい」とのことでした。高野さんも「僕とバンド側で翻訳し合っているといったけど、やっぱりマネージャーの存在が大事で、ナリタ君がすごくいい役回りをしていて、僕と小林君が補完し合えない部分を埋めてくれている」と、その大きさを話されていました。
メジャーレーベルの存在についても言及。高野さんが話すには「メジャーレーベルは大事で、やはりマスメディアへPRの力は非常に大きい」とのことでした。ただ小林さんが言うには「メジャーレーベルとの関係も以前のような「所属」とは違って、「パートナーシップ」という形が今後望ましいのではないか?」といったようなことを話されていましたね。つまりチームMERZのパートナーとしてイコールの関係でメジャーレーベルと付き合っていくということなのだろうと私は理解しました。
8.大事なのはバンドとファンをつなぐコンテキストと物語
途中コウガミさんから「マーケター(高野さん)と作曲者(バンドメンバー)が一緒に届け方まで考えて音楽を創るということになるのか?」という質問について、高野さんは「それは少し違っていて、バンドが作った音楽をいかに翻訳してしかるべき人に届けるか? を考えるのがマーケターの仕事であるということ。小林さんのすごいところは音楽をただ作って終わりじゃなくて、届けることを考えているという点」だと改めて強調されていました。
「今の様々なバンドのスタッフは音楽マーケティングをやっていなかったということなのか?」という問いには、「それは違っていて、もちろん(世の中多くのバンドのスタッフは)音楽マーケティングをやっているわけだけど、今の時代に即したやり方という点においては少し差があるかもしれない。単にTVやラジオに出たらいい、雑誌に載ったらいい、ということも大事だが、それだけでは今の時代に合わなくて物語が必要」との認識を示されました。
コンセプトを大事にする、という点は楽曲を作った小林さん側バンドメンバーもきちんと理解されており、先のシングルの話では、小林さん曰く「「今日も生きたね」はバンドにとってアンセムとなる曲。大事な人にだけ、届けることを考えて作った。大事な曲だからフィジカルのCDにこだわった。そこに文脈、コンセプトがきちんとあることが大切で、突飛なことはできるけど、それだと次にはつながらない」と歌のコンセプトがファンへの作品の届け方まで一貫したものであることを教えてくれました。なお限定すると広がらないのでは? という疑問については、「シェアCDという企画については拡散、話題にしてもらい、CDそのものは大切な人にだけ届けるという二段構えの構成にしていたのでその点は問題ない」と高野さんが補足してくれました。
幾度も登場した物語についても最後少し触れられました。
■物語
つくる人=アーティスト
翻訳する人=プランナー
語る人=ファン
上記のように定義されていて、物語がないと自己満足で終わってしまうので、まずは身内が(そしてファンが)語りたくなるようなものにしないといけないとのこと。「物語ってやっぱりマーケティングだと思っていて自分ゴト化をしてもらわないといけない」と高野さんが話されていました。
チーム「MERZ」の今後について、小林さんは「互いが得意のものを持ちあえるコミュニティを作りたい」と回答、高野さんは「THE NOVEMBERSを唯一無二のカッコイイものにしたい」と話されていました。
最後に、現在の時代をどう捉えているか?、という質問に、小林さんは「これまでがこうだったから、これからもこうだと思っている人が多いと思いました。思考停止気味の人が多い。もっと考えていくべきものだと思う」とのこと。高野さんは「届ける相手の目線がどこにあるのかを考えるのが、難しくなった時代だと思う。そのときにテクノロジー、ソーシャルメディアは大きな武器になる。そしてPR。この3つがより一層重要になると思うので、それを意識できるかどうか、実践できるかどうかが大事だと思う」ということで、PRの重要性を説いて90分にわたるトークセッションは終了しました。
私的まとめと感想
今回高野さん、小林さんのお話を聞けて本当によかったと思います。
マーケティングの仕事をしている方であれば、恐らく気づいたと思うのですが、高野さんが取り組まれたことそのもののフレームワークは、特段新しいものではないように見えます。PR活動において時間軸を設計し、ターゲットに合わせた情報を展開していくというのはプロモーションにおいて基本的なこと。 ただ高野さん自身の発言にもあったように「今の時代に合わせたものをバンド側と何度も議論を重ねながら作っている」という点が素晴らしいと感じました。商品やサービスであればプロモーションワードを作る、キャッチコピーを作るのは誰もが考えることですが、それをバンドと一体となってできたのが、成功の秘訣なのではないかと。また新しいことができたのは、高野さんが音楽業界の人でなく、あくまでプランナーとして別の領域での知見があり、それをバンド側と一体となって取り組めたからだと想像されます。 良い化学反応が起きたのでしょうね。ちなみにシェアCDの話を知ったときに私が思い出したのは、ネスレが数年前から実施しているキットカットのプロモーションでした。それはシェアでなく気持ちを送り合うものですが、あれもファン心理を考えた優れた企画なので興味ある方は調べてみるといいと思います。
高野さんも話されていましたが、マーケティングと聞くとなんだか身構えたり、難しそうだと考える人が多いように思いますが、要は音楽を届ける、モノやサービスを売ることはマーケティング活動そのものを指すんですよね。小林さんはミュージシャンにも関わらずそこから逃げずに取り組まれていて、リスナーのことを考えている人であることが伝わってくるセッションでした。
MERZのチーム構成、考え方もシンプルでいいですよね。最近メディアでも取り上げられる「新しい働きかた」の話題の中でも見られるジョブ制の話、クラウドソーシングに見られるプロジェクト毎の働き方に近いものを感じました。特段目新しいものでもないのでしょうけど、現在の時代にフィットしていると思いました。
本題の今後これらのお話をどうやって私の活動に落とし込んだらいいのか、ずっと考えているのですが、フレームワークや組み立てについては、まだいいとして、やはり実現するにあたってはバンドメンバーとのコミュニケーションを大事にしたいなと思いました。
高野さんと小林さんは共通言語がある程度あって話は早かったみたいですが、普通のミュージシャンはなかなかそういうわけにいかないのが現実だろうと思うからです(もちろん人によりますが)。あとTHE NOVEMBERSの事例では雑誌などメディアとのタイアップ企画が含まれていましたが、あれは広告費がないとできないので、私の担当させていただくバンドでは現実的ではありません。なので、そこはメンバーと一緒に知恵を絞りながらやっていきたいと思っています。
1点ヒントになりそうなのは、スカートさん、吉田ヨウヘイgroupさん、Shiggy Jr.さんら若手インディーポップバンドのここ数年の動きです。多くのバンドに取材している中で、一定の話題を集めている新人バンドにはある共通の動き方、展開があることに最近気づいたからです。もちろん大前提として彼らがいい音楽を作っているのは言うまでもないのですが、彼らの音楽の広がり方を振り返ってみたときに、実は見えるものがあって、それはPR活動の基本的なことにも関わらず、意外とそれができているバンドは少ないことに気付きました。これらのヒントも交えながら、今回聞いたお話を踏まえて、リスナーにどうやったら届けることができるのか、バンドメンバーと一緒になって自分たちなりのやり方を模索していきたいと思います。
いやー、本当に勉強になりました。高野さん、小林さん、ジェイコウガミさんありがとうございました。
そうそう高野さんとTHE NOVEMBERSのサイトでは関連する記事があるので、興味持たれた方は必読ですよ。特に高野さんのサイトでは上記の個別施策についてより詳しく書かれています(後から知りました・・・笑)
■高野修平
■THE NOVEMBERS
学ばなければいけないことがたくさんあって大変ですが、1年後には私も一つ答えを出せたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
一応年内にはレコーディングを予定しているので、 バンドのためにいいプランニングができればと思っています。
頑張ります。。。
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