業務 | インディーズバンド | メジャーバンド |
①制作 |
・メンバー ・知人、友人のミュージシャン他 |
・メンバー ・契約先が準備するプロデューサー、ディレクター、アレンジャー他 |
②プロモーション・販売 |
・メンバー ・お手伝いスタッフ
・全国ツアーなどの場合は外部のプロモーターに依頼する場合も ・作品販売時に個別に全国流通の会社と契約するバンドは多い |
・契約先の宣伝部門、営業部門 ・外部のプロモーター、パブリシストに依頼する場合も
・契約先が持つ全国流通 |
③演奏 |
・メンバー
・お手伝いスタッフ(撮影、物販など) |
・メンバー ・ローディーなどのサポートスタッフ
・イベント制作会社やブッキングエージェントなど、最近はライヴ会場の運営に長けた専門の会社を使っているバンドも多い |
④付帯サービス |
・メンバー ・お手伝いスタッフ |
・契約先の制作部門やプロモーション部門 ・契約先の事務所 ・外部の運営会社 |
⑤契約管理 |
・メンバー ・お手伝いスタッフ ※原盤権、出版権すべてを自ら管理することが多いが、これらの権利関係は手続きが煩雑で面倒なので外部の出版社などに委託している場合も多い |
・契約先のレコード会社、レーベル ・音楽出版社 ※原盤権、出版権はメジャー契約時にレコード会社へ権利を委ねてしまう場合も多いが、最近はバンド側で事務所を設立し自ら管理するバンドも増えてきている |
⑥その他 |
・メンバー ・お手伝いスタッフ |
・契約先の担当マネージャー |
今はバンドによって活動形態は様々なので、あくまで参考ということで記載した。インディーズでも新作を発売してツアーを行うときは外部のプロモーターに依頼をしているバンドもいるし、メジャーでもプロデューサーなどは立てないでメンバーだけで制作をしている人たちもいるし、具体的な定義は難しくて、バンド毎によってどの業務を誰が担当するかは違う。ただここで言えることは、メジャー契約をしている場合の大半は、専門のスタッフ・チームがついてアーティストの活動をサポートしてくれるということ。バンドから見たらこれらのサポートスタッフがいて、特に②で様々なタイアップやメディアへの露出ができる点ががメジャー契約する大きなメリットだ。そのほか給料を固定給で支払ってくれたり(実際にはアーティストが事務所と契約し、事務所とレコード会社が契約して、レコード会社から育成支援金を事務所経由でもらう形が多い。2014年の現在においてはそこまで面倒を見てくれる会社も少ないようだが)、面倒な事務手続きから解放されるなど、不安定なバンド生活において一定の生活基盤を補助してくれるのも魅力だ。
バンド活動をしていくにあたって必要な様々な「役割」はメジャー契約の有無に関わらずほぼ同じである。それをバンドメンバー自分たちで全て担うのか、契約して各々の役割を専門スタッフに委ねるのか・・・。以前は上記の役割の大半をメジャー契約した会社がワンストップで提供していたのだけれども、最近はレコード会社も経済的に苦しくなっていく中で、各機能に特化した会社も増えていて、必要なときに必要な機能・役割を使い分けるバンドも増えている。普段はメンバーだけで活動していて、作品リリース時に全国流通できる会社と契約して販売だけを依頼したり、同様にリリース時のみプロモーターと契約してメディアへの出演を果たす、などである。言い換えると長期契約でスタッフを抱えると人件費がかかるので、スポット契約で必要な機能を必要な時に調達するといったことだ。
色々なバンドさんの話を聞く限りは、余計な費用はできるだけかけたくないというのがインディーズバンドの共通理解だと思われる。そうすると「どの役割を外部に委託して、内製化できる業務は何なのか、その見極めが重要」になってくる。
次にそれぞれの「役割」について業務の専門性という観点から、簡単にまとめてみる。
業務 | 業務の専門性 | 内製化、外部委託の判断ポイント |
①制作 |
・専門性は高いが、バンドの目指す方向性に左右される
・PRO TOOLSなど自宅でも録音からマスタリングまで制作環境が整っているので外部委託しなくても制作は可能
・ただしバンドメンバーだけで続けているとアイデアが枯渇したり、作品がマンネリ化する、もしくはスキルの問題で目指す音楽が作れない場合などもあり、そのような場合はメンバーだけでの制作には限界が出てくるのも事実
|
・新しいアイデアを入れたいとき。外部のプロデューサーを入れることで新しい視点が加えられるし、アレンジャーを入れると曲の印象を大きく変えられる ・新しい楽器を使いたいとき。生ブラスや生ストリングスなど自分たちでは演奏できない類のものなど ・音像を変えたいとき。レコーディングエンジニアを変えると音像を変えられることが多い
・他のアーティストとのコラボレーションなど |
②プロモーション・販売 |
・マーケティング、プロモーション業務は専門性が非常に高く、音楽に限らずあらゆる業界で専門家が活躍している領域 ・マーケティング理論などの専門知識に加えて、実経験によるノウハウが必要で例えばWEB上で新作リリースの際のキャンペーンを行う場合は景品表示法などの関連法規も理解していないといけない ・フライヤー制作、簡易ネットプロモーション(動画や音源をアップする程度)であれば内製化できるが、そこに「集客」「話題作り」をするためには専門知識・ノウハウがいる ・PR活動においてはメディアとのパイプ、人脈などを持っていないとなかなか露出が挙げられない
・ライヴ会場での手売り、オフィシャルサイトでの通販、AmazonやiTUNESでの販売であれば内製化できるが、全国流通させたい場合は外部委託しないとできない。またパッケージ商品を販売する場合は店頭でのプロモーションが重要であり、店舗で大きく取り上げてもらうためにはCDショップへの営業が極めて大事になる |
・コンセプトを作りネタを仕込んだ本格的なPR活動による話題作りをしたいとき ・メディアに露出をしたいとき。
・全国20カ所ツアーなど規模が大きいツアーの場合は手間暇を考えると予算が許せば外部委託したほうが効率的。東名阪など数カ所であれば内製化しているバンドが大半
・全国流通で作品を販売したいとき
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③演奏 |
・ライヴ演奏だけであればメンバーだけで問題ないが、最近増えてきている映像とのコラボレーションや、舞台演出も含めたステージ作りをしたい場合は、映像クリエイターや制作会社の力を借りた方が無難 |
・ステージでライヴ演奏以外に凝った演出をしたいとき |
④付帯サービス |
・専門知識がなくてもグッズ制作は可能 ・グッズ製作においては、デザインが必要なことから自分たちでデザインができるのであれば内製化できる。デザインだけを知人や外部のデザイナーに依頼して作ることが大半。またグッズ制作会社でデザインをしてくれる場合もあるので内製化はできる項目と考えられる
・ファンクラブ運営などになってくると専門知識やノウハウが必要。会費を集めたり、問い合わせ対応などは大変手間暇がかかるものだし、種々の企画を考えることも大変な労力がかかる。メンバーだけで内製化するのは困難と考えていい |
・ファンクラブ運営といった一定規模のサービス、顧客と対峙するような場合はバンドメンバーだけで行うのは難しいため外部委託が必要になる |
⑤契約管理 |
・著作権をはじめ専門的な法務知識や外部取引先企業との交渉が必要な業務
・契約はバンド収入に直結する最も大事な部分であることを考えるとよほど法務に精通したメンバーがいる場合を除いては専門家に入ってもらうほうが無難。エンタメ系のライセンスビジネスに強い弁護士や実績のある音楽事務所に相談をするのがよい
・事務手続きについては内製化できなくもないが、規模が大きくなると煩雑になるので通常は音楽出版社や事務所を通すのが一般的 |
・基本的に外部委託が必須となる業務 |
⑥その他 |
・予算やスケジュール管理は一部法律や経理の知識は必要なものの、メンバーだけで管理できる業務だ。ソロアーティストの場合はスケジュール管理も比較的容易だがバンドとなるとわりと手間暇がかかるので、予算が許すならばマネージャーをつけたほうが便利 |
・バンドの活動規模に応じて判断 |
とまあざっくり書き出してみたけれど、やっぱり②のプロモーション・販売業務と⑤の契約管理業務はバンドで内製化するのは難しい仕事だけれども、それ以外はアーティスト側でやってやれないことはないと思う。インディーズで、1作品につき数千枚程度の作品を販売している中堅規模のバンドであれば十分内製化できるだろう。
上記を踏まえつつ次にどのような形で活動をしていくのがよいのか、次回は自分の考えていることなどを交えながら書こうと思う。
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