MK日記。-ヒット・プロデューサー松尾潔さんの講座に参加して記憶に残った3つの言葉。ソニアカフェス備忘録。



久々のMK日記。です。

今日はソニー・ミュージックが主催する音楽養成講座「ソニアカ」によるイベントに参加してきました。制作者の声を直接お届けするのがコンセプトなんだそうでして、そのときの話を備忘録も兼ねて書きたいと思います。

 

 

・ソニアカフェス

http://soniacafes.com/

 


今回僕が参加したのは「松尾潔のプロデュース論 POPなものにマニアックに向き合う!トリセツがなくても・・・音楽を作る方法。」という講座です。

90分で5,000円と、この手の音楽系のセミナーにしては若干お高めのソニー価格(笑)のようですが、あの松尾さんのお話を聞けるということもあり、思い立って参加しました。

 

講義冒頭松尾さんからアンケートがあって、参加者の大半は実際に音楽に関わる仕事をしている方でした。少し興味があって参加するといった学生気分の方はほとんどいなかったようです。

 

ちなみに上記写真は受付で販売していたソニアカのグッズ。バインダーと五線譜ノートのセットを買ったんですが、これで400円。ちょうどA4サイズの五線譜が欲しかったのでラッキーでした。(最近A4を切らしていて、B5サイズの五線譜で譜面を書いていてイチイチ拡大コピーしてたんです、笑)



僕が松尾潔さんに興味を持った理由

レコード大賞も取られ、手がけたアルバムはこれまで3,000万枚以上と、あの四角さんを上回るヒット・プロデューサーということで、その輝かしい経歴に目を奪われやすいのですが、僕が松尾さに興味を持ったのは「音楽ライター出身」というところなんです。

もうちょっと言うと、松尾さんは学生時代から好きなR&Bやブラック・ミュージックの音楽ライターとしてジェイムズ・ブラウンなど世界で名だたるアーティストに取材をされているんですよね。そのバイタリティ、努力の人であるところに興味を持ちました。

それと僕が昨年からお手伝いをはじめたバンドが、ブラック・ミュージックをやっているんですね。本場のソウルを意識したようなところがあるんですけど、僕はブラック・ミュージックにはほんと疎くて・・・バンドメンバーと少しでもちゃんとした会話ができるようになりたいと思って、昨年からブラック・ミュージックを聴き始めたんです。その際ネットで検索したところ、出てきたのが松尾さんだったというわけです。

 

ちょうど松尾さんが本を出されたばかりだったので、それも買って読みました。知らないバンドばかりで、未だに消化しきれていないんですけど(笑)、松尾さんが挙げたアーティストの音楽をYoutubeなどで聞いたり、気にいったのはCDを買ったりして・・・といった感じです。

なので、CHEMISTRYやEXILE、平井堅さんのプロデューサーだったことは昨年まで知らなくてですね・・・それよりも音楽ライターだった松尾さんが、どういう過程を経てプロデューサーになって、またどういう視点で音楽に取り組まれているのか、その思考プロセスと行動に興味があって参加したというわけです。


松尾さんが挙げた7つのテーマ。

今日の講座で松尾さんが挙げられていたのは下記7つのテーマでした。

 

1.「作り手が楽しくなければ音楽じゃない」は本当か?
2.センスは磨けるか?
3.WANTとNEED
4.INPUTとOUTPUT
5.TIMELYとTIMELESS
6.ヒットミュージックとグッドミュージック
7.好きを仕事にするということ

 

各テーマについて松尾さんの経験に基づいて考え方をご教授くださいました。
例えばWANTとNEEDではWANTが先にあってNEEDがあとになるから、その順番を間違えちゃいけないとかね。

またお話の中で「音楽に導かれるように行動していった」といったお話がありました。最初は音楽ライターからはじまり、周囲からプロデュースをやってみなよと勧められて、その際ソニーから会社形態でないと取引できないと言われたから、じゃあ会社を作るかといって、そしてプロデュース業務をはじめて・・・といった流れのことです。

 

受講生からは「何故松尾さんはそういうこと、導かれることができたのか?」という質問が挙がり、次のように答えていました。

 


・音楽ライター時代にR&B分野でクインシー・ジョーンズやジェイムズ・ブラウンなどと仕事をしてきた実績があったこと。
・自分が楽器をできないこともあって、アーティストに対しては常に尊敬の念を持ってやってこれたこと。
・傲慢にならなかったこと。周囲にも松尾さんを叱ってくれる人がいたこと。
・楽器ができないこともあって、文字・言葉で音楽を説明するコミュニケーションに、くどいくらい力を入れてきたこと。それをきちんと行ってきたから間違いがあっても、どこで間違ったかわかるようになった。これらを通じて確認をする癖がついたのは大きかったとのこと。

 

 

ヒット曲を作る上で大事にしたこと


後半ではこれまで松尾さんが手がけてきた楽曲を流しながら、ヒット曲と作る上で大切にしていた点を解説してくれました。気になったキーワードを挙げると

 


・まずは音像、イメージからリスナーは入る
・口ずさみたくなるのは、メロディーのキャッチーさ
・歌い続けたくなるのは、メロディの強靭さ
・そして大事なのは歌詞、言葉の力

 


松尾さんは作詞をたくさんされるのですが、その中では

 


・サブカルチャーの中にアカデミックな、文学的な言葉を一節入れると光り輝く
・楽曲の中に「コア」をちゃんと作ること。ポップカルチャーではその核があると、ポップの壁を超えることがある

 


最近のJ-POPでは上記のようなことは忘れられがちだけど、松尾さんとしては今でもとても大切にされているとのことでした。

例えば

・「Only human」の〈流れに逆らう船のように〉の一節。

「Ti Amo」では〈時計をはずして 微笑んでくれる 優しい人ね あなたは〉の一節

 

 

これらの意味を解説されまして、目から鱗が落ちる内容がたくさん詰まっていました。

ヒットの要因を一つだけ挙げるとするとそれは「テンポ」だそうです(笑)。
なんでも以前クインシー・ジョーンズに音楽ライターとして取材したときに聞いたら、そういう返事があったんだとか。


そのほか、松尾さんが成功された理由を語る中で、彼のキャリアを話されることがあったのですが、その中で挙げられていたこととして「自分には音楽ライターで培った武器があった」ことを繰り返し話されていました。講演の最後でも「一人でできることは限られている。自分のできることを強く知ることが大事で、それがわかればチームを組んでやっていける」といったことも話されていまして、(ここは少し意味合いが違うかもしれません)何らかの自分の武器を持つことが大事だと繰り返されていましたね。

 

 

エアプレイが第一義の海外では、ラジオDJの評価がすごく高いんですよね。日本ではラジオよりもテレビの印象が強いんですが、アメリカですとDJは人気なので、ライターでもありラジオDJでもあった松尾さんは海外で仕事をするときには、その肩書がとても役に立ったそうです。




松尾潔さんへ。読まれることが万一あれば

センスの話の際に指名いただいたのは、私です。
「センスは磨けるものではないのでは?」と私はお話ししましたが、厳密に言うと「スキルを磨くことはできてもセンスは磨けないのではないか?」と私は思っていたのです。

ただ松尾さんの話されていたセンスの定義は、「スキルなども含めたoutput全体」にあるのではないかと、お話を聞いて感じました。それであれば、私自身で申し上げますと確かに自分なりに色々なモノを見聞きしてoutputを繰り返していくうちに、身に着いたものがたくさんあります。インタヴュアー・ライターとしても最初はインディーズバンドからスタートしまして、最近では著名な方への取材も少しずつできるようになりました。自分自身振り返ってみるとそれは松尾さんの話されていた、センスを磨く、修練をするということに当てはまるのではないかと感じた次第です。大切なことは努力を怠らないということでしょうか?


 

僕の心に残った3つ言葉

講義冒頭、松尾さんから「言葉を持ち帰って欲しい」と話がありました。

たくさんある中で私の心に残ったのは下記言葉です。

 


・(商業音楽においては)まずはヒットさせましょうよ。TIMELESSの話はそれからだ。
・アウトプットがあればインプットは自然と入ってくる。アウトプットをより意識しよう。
・まずは一番好きなことをやりましょう。好きであれば自然と情熱も伝わる。


考えれば考えるほど厳しい言葉だと思いましたが、メジャーの第一線に立つ方だからこそ言える、重みを感じました。自分の経験と照らし合わせても腑に落ちることがたくさんありましたしね。つたない英語でも一生懸命やれば情熱は伝わるんだ! というさりげない一言にも共感しました。


何よりも松尾さんはとても楽しそうに話される方だったんですよね。ユーモアもあってとても面白かったです、滑っているところもありましたけど(笑)。また松尾さんのお話を聞く機会あればぜひ受講したいです。聞きたかったことがたくさんあったんだけど、時間がオーバーして質疑応答の時間がなかったんですよね、まあ仕方ないんでしょうけど。

 


明日10/4も様々な講座があるようなので、気になるかたはぜひチェックしてみてください。当日券で受講されていた方もいたので、恐らく飛び込みでも空席あれば大丈夫かと。


駆け出しのパブリシストでもある自分にとって、勇気とやる気を増幅してくれたそんな講座でした。

 

 


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