こんばんは。
久しぶりのMK日記。です。
MK日記では主に音楽業界の端っこから見聞きしたことや体験談、感想などをを主に書くようにしています。
私がパブリシストとして活動をはじめてからちょうど1年経ったので、簡単にできたことできなかったことをふりかえってみます。
まずパブリシストって言葉を聞いたことがない方、要はバンドのPR、Public Relations=リスナー・ファンとバンドのコミュニケーションを行う人、と捉えてください。
宣伝マンに近いのですが、ちょっと違います。パブリシストはお金をかけたプロモーション、媒体の枠を買ってそこでバンドの伝えたいことを伝える役割だけでなく、広報マンとしてお金をかけずに、ファンとのコミュニケーションをとる役割も持っていて、宣伝マンと広報マンの両方を兼ね備えています。
音楽業界では、メジャー以外のインディーズバンドの場合、フリーの無料プロモーションが中心となるので(ここは業界によって全く違います)、広報マンとしての活動が中心でした。
目次
1.パブリシストとしてできたこと
2.パブリシストとしてできなかったこと
3.パブリシストを超えて、今後の抱負
1.パブリシストとしてできたこと
今年1年、パブリシストとして取り組んだことは下記でした。
・プレスリリースの企画、執筆とメディアコンタクトによる媒体での記事掲載の獲得
・バンドのプロフィールや新作の紹介文章、アー写の撮影など、PRに必要な素材の企画制作
・WEBサイトの企画、制作、運営
・タイアップ企画の推進 等
具体的にはメンバーの活動をふまえて、いつどのタイミングでリリースを出すか、出す内容を考えてメンバーに提案、その後プレスキットを作成して、メディアに送る、といったかたちです。バンドによって違うとは思うのですが、僕の場合は言われたことをやる、というよりもメンバーと一緒になって考えて、僕からも色んな提案をしながらやっています。
リリース資料を作成しながら、足りない情報を補強し、ネタが弱いと感じたらそのネタ作りも含めて提案して作り上げていくかたちですね。
あるイベントの集客を兼ねたリリースを出したときのことです。単に「イベントやりますよ!」といったリリースを出すだけでは、メディアに取り上げてもらうのは難しいと感じました。世の中にはイベントがたくさんあるので、メディアが取り上げたくなるような話題・ネタがないと難しいんですよね。
これがきゃりーぱみゅぱみゅやPerfume、セカオワのような著名な方だと、何をやっても多くのメディアは取り上げてくれます。何故なら世の中の多くの人が関心を持っているアーティストだからです。例えば今年の夏に川本真琴さんがツイッターでマイコプラズマ肺炎にかかったことを書いたら、スポニチが早速記事で取り上げていました。肺炎にかかったことが記事になるなんて川本さんサイドは予想外だったと思いますが、著名人の記事はアクセス数が期待できることもあって、何をやっても記事になりやすいんです。まあこれにはデメリットもあるのでいいことばかりではないのですが。。。
とはいえ、僕がお手伝いさせていただいているのはインディーズバンドです。こちらから積極的に情報発信しないと、メディアは存在にも気づいてくれません。そこで僕が考えたのは、イベント出演者同士でイベントにも関連した記念対談を行い、その記事コンテンツとイベント告知を合わせて行う、といったものでした。オリコンやBARKSといった音楽ニュースサイトではなくて、アーティスト公式サイト上でそれを行ったんです。この記事コンテンツは1万文字以上もある読み応えのあるものでした。
私がパブリシストとは別にライター、編集者でもあるからできたことなのかもしれませんが、要は自分なりにできそうなネタを作って、バンドメンバーに提案したんですよね。そしてリリース内容を補強できるような話題作りを行ったことがポイントです。
その結果、7つの音楽ニュースサイトで取り上げていただき、Yahoo!ニュースにも記事が掲載、サイトのアクセスは15倍になり、入場制限がかかるほど多くの人に来ていただくことができ、イベントは大成功でした。ギターポップという世の中のブームとはかけ離れた音楽ジャンルのインディーズバンドでも、工夫次第ではそれなりにプロモーションができるいい事例となりました。
この1年で作ったリリースは、7本です。音楽ナタリーさん、OTOTOYさん、朝日新聞デジタルさんはじめ多くのニュースサイトに取り上げていただくことができまして、パブリシスト1年目としては大変もったいないくらい、いい結果を残すことができました。
何より嬉しかったのは手伝っているバンドさんが、周囲のバンド友達にすごくいいプロモーションだったね、と褒められたことと、そのバンドのファンがナタリーに記事が載った時に喜んでくれたことです。ファンにとって自分の応援しているバンドが業界最大手のニュースメディアで取り上げてもらえることはすごく大事なんですよね。自分が認められたような気がして嬉しいもんなんですよ。このような反応をいただいたとき、パブリシストとしてお役にたててよかったなと思いました。
もちろんここに書いていることは、メジャーのレコード会社などでPRを担当している人間からしたら「できて当たり前の最低限のこと」だと思います。ただ私が大事にしているのは自分たちの置かれた環境の中で、目標をきちんと達成できたこと、そして個人でもやり方次第でインディーズバンドのプロモーションがそれなりにできることを実証できたことでした。
私は別の仕事でもたまにリリースを書くのですが、そちらは発信元のブランド力もあって、書いた記事は毎回40~60サイトくらいに掲載され、集客力も桁違いです。同じ記事を書くという行為でも、立場が変われば影響力は大きく変わるのは身を持って理解しています。
この1年、右も左もわからない中、バンドのパブリシストとしてイベントやCDのリリースプロモーションに取り組ませていただきました。はじめてのことばかりだったし、メンバーとの関係作りも含めて正直反省ばかりの1年でしたが、リリースはじめタイアップ企画もできたし、雑誌を活用したプロモーションもできたので、それなりにお役にはたてたと思います。
2.パブリシストとしてできなかったこと
パブリシストとしてできなかったこともたくさんあります。
・バズが起きるほど話題となる面白い企画
・ラジオやTVといった大型メディアとのタイアップ
お手伝いしているのはとても真面目なバンドなので、一般的に話題が獲得しやすい突飛なことは向いていません。また普段から多忙なメンバーのため、あまり稼働をかけることもできないんですよね。
担当する前は、いわゆるSNSでバズを起こすようなプロモーションや、新しい話題作り、をやりたいと思っていたのですが、上記制約もあるなかでそれを実行することができませんでした。
これらはできなかったから悪いものではありませんから、落ち込んでいるわけではないのですが、今の状況で如何に話題作りを行うのかは来年以降の課題です。
またラジオやTVといったメディアとのタイアップ、これは結構難しいなと感じています。これを実現するには、それぞれのキーマンとの人脈が不可欠なのですが、私にはそれがないんですね。それとKPI、成果設定をどう置くのか、整理が必要で。
時間をかけて人脈を作っていかないとこの手のものは、かなり難しいのが実情です。幸いなことにメンバーからそれらを求められているわけではないのですが、やっぱりどこかで大きな話題の一つとして、取り上げてもらえるようにはなりたいので、地道に人間関係を作るところ、そしてとりあげてもらえるような企画を考えるところからはじめたいと思います。
3.パブリシストを超えて、今後の抱負
この1年はあっという間でした。
その中でやりながら考えていたのは、ニューミドルマンの存在です。
これはジャーナリストの津田大介さんと渋谷系ムーブメントの生みの親でもある音楽プロデューサーの牧村憲一さんが書いていた本で知った言葉です。レコード会社、事務所に代わって今後はファンとバンドの間をとりもつニューミドルマンが必要になってくるだろうと。ニューミドルマンはコミュニケーションに長けた人で、バンドの情報をわかりやすく翻訳してリスナーに届けたり、またバンド活動を行うにあたってのビジネス基盤を作りあげることが求められます。
多分、ライヴイベントの企画制作やCDの企画制作といったバンドにとって必要な活動を理解したうえで、彼らをサポートできる人間のことだと思うのですが、僕が目指したい姿はここにある気がしています。
パブリシストとしてはもちろんやっていきますが、その上でバンドがもっといい制作環境で、いい音楽が作れるようサポートしたいんですよね。編集者、ライターとしての経験も生かしながら今以上に実力を身につけたいなと思います。パブリシストという位置づけで活動していますが、名前にこだわることなく、バンドの生成発展につながることは何でもやっていきたいです。パブリシストは個人でやっていますが、ポプシクリップ。がそのベースキャンプになったらよりいいのかもしれません。「ポプシクリップ。パブリシストチーム」として、色んなバンドのお手伝いをしていくイメージでしょうか?
まだ1歳を迎えたばかりの駆け出しパブリシストですが、今後ともよろしくお願いいたします。
そうそう、よくパブリシストのやりがいって何なのか聞かれるのですが、それはメンバーやファンの喜ぶ姿を見たときやライヴでたくさんお客様が入ったとき、CDが売れたときなどに感じます。あとは・・・わかりやすいところだと自分の担当したアーティストのCDにクレジットを載せてもらえたときでしょうか・・・映画のスタッフがテロップに自分の名前を載せてもらえるとやりがいを感じるといいますが、それと同じですね。少なくとも僕は死ぬほど嬉しかったです。