こんにちは、MK@音楽パブリシスト3年目です。
私事で恐縮ですが、OTOTOYの学校で開催される「パブリシスト養成講座」にゲスト講師として招かれました。
9/30から全3回の講座、1日2コマ、合計6コマとパブリシストについてひと通り学ぶことができる講座。私は1回目と2回目の講座に参加します。
この講座では座学と演習があります。音楽業界におけるパブリシティの基礎が学べるので初めての方にピッタリです。
せっかくなので
・何故私が音楽パブリシストになったのか
・パブリシストって何だ?
・実際にどんなことをやっているのか
・3年やってみて思うこと
などを書いてみます。興味ある方はぜひこの機会に一緒に学びましょう。
■簡単な経歴と動機
私は一般企業で営業やマーケティング畑の仕事を10年以上、消費財から耐久消費財、ソーシャルゲームにネットサービスなど、ハード・ソフト問わず実務経験を積み重ねてきました。また新規有料サービスの立ち上げ、WEBサイトの新規立ち上げから企画編集運営、コンテンツ企画編集なども行っています。プライベートでは音楽が好きで、会社での経験を生かしながらいつか音楽業界にも貢献したいなと思っていました。何故ならば多くのバンドを見ていて「作品はいい」「ライヴはカッコイイ」などキラリと光る部分があってもそれが伝わっていない、つまりもったいないなと思うことがたくさんあったからです。その後縁あって今は2つのバンドと1組のシンガーソングライターのお手伝いをしています。最近もう1人決まったので今後は4組担当予定です。
■まずは最低限のパブリシティ獲得をできるようになろう
ミュージシャン一人一人にあった現実的で素直なパブリシティ(基本ゼロ円でできる)を最低限やれる環境やスキルを身につけること、それがファーストステップになると考えています。それ以降のプロモーション(基本有償)は宣伝予算があるときに行う次のステップです。
世の中には、話題になっているプロモーションがたくさんありますよね。目立つものや奇をてらった面白いものが取り上げられやすく、近年だと水曜日のカンパネラさんやピコ太郎さんなどの創意工夫、アイデアは大変評価されていますし、誰もが脱帽したと思います。
一方で凄すぎるために誰もができる、再現性のあるものでもないのかなとも感じています。例えばしゃべりが苦手でマジメなシンガーソングライターに二人のようなことはまずできないでしょう。
最低限のPR(パブリックリレーションズ)で早耳リスナーには届けることができるようになりますし、よい作品であれば、あとはクチコミで拡がるでしょう。パブリシスト養成講座では、ごく一部の方しかできないPRではなく、誰もができるベーシックな部分=WEBでのパブリシティの基礎を身につけることができると思います。
■インディーズバンドの実態
先ほどもったいないと書きました。
当初私は各々のバンドのスタッフ、宣伝担当のスキル不足なのかなと思っていたんです。ところが、調べたところインディーズバンドの大半、感覚値で9割以上はPR担当のスタッフはおろかマネージャーすらいないという現実でした。アイドルブームの昨今、駆け出しの売れていないアイドルでさえ大半が何らかの事務所に所属しておりPRスタッフがいるのに何故バンドにはいないのか。。。背景や是非はともかく、、、現状はそんなところです。
そして多くのバンドが作品を生み出し、ライブをやっていますが「自分たちの音楽をどこの誰に向けて届けるのかを曖昧にしたまま繰り返している」バンドもたくさん見かけられます。そこが少しもったいないなと感じたんですね。
これはバンドの目指すビジョンやポジションをどこに置くのかとも密接に関係してくることですが、そこを整理してやればより伝わりやすく、拡がりやすくなるわけです。同じことをやっていても目指す音楽が明確なバンドとそうでないバンドは届き方が違うんですよね。
■DIYミュージシャンやそのスタッフにオススメ
音楽パブリシストは、特にDIYで活動しているインディーズアーティストに役立てると感じます。
レコード会社やレーベルに所属している方ですでにPR機能を持っている場合は不要です。ただ将来的にDIYで活動することを考えている方や制作やプレスだけで、宣伝といってもニュースリリースを出して終わりの場合は実質PR機能がないのと同じなので、そのようなレーベルに所属している方に今回の講座がお役に立てるのではないかと。
あと、音楽業界の裏側に興味がある方にとっても面白いかと。
私が受講したときの生徒はインディーズバンドでスタッフをやっている方が半分くらい、音楽に興味のある学生さん、それにミュージシャン、個人レーベルをやっている人もいたりと多様でした。私のようにこの講座を受講したあとにパブリシストをやるようになった人もいます。
■パブリシストって何だろう
パブリシスト、日本ではまだ珍しい名前の仕事ですが欧米ではわりと有名です。日本ではバンドの宣伝チーム、もしくはマネージャーやスタッフが行なっていた仕事のうち、PR(Public
Relations)部分を切り出したものと考えてください。映画業界や著名な俳優さんには専門のパブリシストがついていることが多いですね。宣伝との違いは双方向であること、あとはパブリシティ主体なのでお金をほとんど使わないということでしょうか。ここで
以前ブログでも紹介した俳優の渡辺謙さんの講義映像を紹介します。パブリシストについて触れられています。音楽ではありませんが、とても参考になります。冒頭の30分程度までが特にわかりやすいですよ。
■パブリシストはクリエイティブな仕事ばかり、単なるリリース屋ではない
ここでよく勘違いされることがあります。パブリシストってプレスリリースの記事を書いているだけだと思われがちなんですけど、それはパブリシスト業務のほんの一部なんですよ。仕事の定義はやる人の才覚やスタンスにもよるので一概にこうだと定義はできないんですが、私が取り組んでいる業務は下記の通りです。
・音楽マーケット分析及びアーティストの活動戦略&イメージ戦略の策定
・上記に基づくPR戦略の策定と各種交渉、プロモーションプランニング
・広報営業活動、メディアリレーション
・PRに必要な素材(アー写、原稿など、プレスキットやフライヤー、MV他)の企画制作
・WEBの企画制作運営
・その他作品やイベント、グッズ、メディアの企画制作など
このようにアーティストの売り出し方、目指す方向性を一緒に考えていくクリエイティブな仕事です。上流工程から関わることも多くとてもやりがいがあるのです。(なお上流工程から関わるには一定程度のマーケティング経験とアーティストとの信頼関係が欠かせません)
私の場合は必要に応じて作品やイベントの企画・プロデュースもやるし、ディレクションもやります。制作やメディア作りまでやっているパブリシストは珍しいかもしれませんが、全てはパブリシスト起点。
なおバンドのやることがネガティヴな方向になりそうな時は、それを止めるのもパブリシストの役割です。例えば最近流行りのクラウドファンディングをあるバンドで検討したのですが、企画が曖昧だったことと大義名分が弱かったこと、何よりそのバンドにとってはマイナスプロモーションになると判断してやめました。
プレスリリースを書くのも大事な仕事ですが、大切なのはそこに書く内容を企画してアーティストに提案することなんですよね。だからリリースに必要なアーティスト写真も作りますし、キャッチコピーや伝える企画を考えます。コラボが必要だったらコラボ先との交渉もやるし、イベントが必要だったらその企画もするわけで。そう考えるとパブリシストの仕事は多岐に渡りますが、とてもやりがいがあるんですよ。なお、これは私のやり方なので、個々の状況や担当するアーティストの状況によって担当する業務範囲は変わります。
■音楽パブリシストになって
やってみてわかったのは業界が違ってもマーケティングの基本ロジックは同じだということ。ただ音楽業界特有の事業構造により、クセというか勘どころみたいなものがあるのは確かで、当日の講座ではそのあたりも踏まえた具体的な事例を使いながら説明したいと思います。例えば音楽業界は構造上フリープロモーションがわりと多いんですよね。これが消費財だと(私の経験では)有料のプロモーションが9割を占めます。
それとアーティストと一緒に何かを作っていく作業はとても大変です。普通の消費財等のプロモーションとは違う感性、全く違う応対が必要になります。いわゆる一般企業であれば効率やコスト重視、成果重視で判断していくことが多いと思いますが、音楽の場合はそれだけではダメだったりしまして・・・そのあたりの勘所を、感性を養うのに時間がかかりました。参考までにバンドメンバーとビジョンを共有する際はなるべく数値で具体的にイメージをあわせておくのがよいと思います。例えば売れたいといってもそれが数百人なのか、数千人なのかによってPR手法が変わりますしね。
その代わり成果が出たときの喜びもひとしおです。自分が関わったことで「CDが売れた」「バンドのイメージがあがった」「周りのバンド仲間にプロモーションが絶賛された」といった話を聞くとやってよかったなと思います。そしてそれがアーテイストのみならず、そのファンの間でも話題になると、さらに嬉しくなるのです。パブリシストはアーティストとファンをつなぐ役割で双方向性が求められますからね。アーティストが喜ぶだけでも、ファンが喜ぶだけでもダメなんです。
そうそう、パブリシストをやっていく上で一番大事なことは何か、私の場合は「アーティストを信頼し、愛しているかどうか」だと感じています・・・色々ありますからね。辛いことも楽しいことも・・・特に辛いときに「それでもこのアーティストを応援して支えていくんだ」と思えるような気持ちが持てるかどうかってすごく大事なんですよ。
■受講すべきどうか
ビジネスマンなら研修やセミナーにお金を払うのは当然の感覚だと思いますけど、バンドマンやそのスタッフの方からしたらこういう講座にお金を払うのはもしかしたら抵抗あるかもしれません。
私も受講当時は正直迷いました。本当に役立つのか?
ただ、そのときは自分に投資しようとわりきって考えました。
アーティストをお手伝いしたい、という気持ちが強くありました。それと音楽ナタリーやYahoo!NewsといったWEBニュース、ラジオや音楽雑誌などのメディアで記事が掲載されたり、アーティストに喜んでもらえることができたら何倍にもなって恩恵が返ってくるわけですからね。未来への投資として考えました。
現に私は講座の一期生で、その後苦戦しながらも一通りのことができるようになりました。お手伝いしているバンドからも喜んでいただいています。
とりあえず話を聞くだけでも刺激になるのかな、とは思いますよ。
単回受講もできるそうなので、まずは1日だけ参加してみるのがいいかもしれませんね。
よろしくお願いします。