こんにちは、ポプシクリップ@制作部ミオベルレコードです。
先日年明けリリース予定のコンピレーションアルバムのマスタリングをしてきました。いつもお世話になっている乃木坂のソニー・ミュージック・スタジオです。
1日かけてレコードとCD向けのマスター音源を作りました。都合のあったミュージシャンには立会いもしていただきました。
ミオベルレコードではミュージシャンが納得いく作品、10年後でも聴き続けられる作品を目指してやっています。
文字で書くと”そんなの当たり前じゃん!”と思う方も多いと思いますが、世の中実はそうでもないんですね。
セールスという現実や多くの方が関われば関わるほど色んな意見や思惑が混ざってしまうし、ミュージシャンの意向よりもプロデューサーやディレクターの意向が優先されることも多いという話を聞きます。”売れるためにこうしよう”という言葉には色んな意味があるようです。
ミオベルレコードは小さなレーベルで関わる人も数人、ミュージシャンの意図をできる限り尊重しています。今回初めて参加いただくあるミュージシャンから”こんなに自由にやらせてもらっていいの?”と聞かれました。これはお手本にしているサラヴァレーベルの思想を一部取り入れているからかな。そう言ってもらえたのはピエールさんのおかげです、きっと。
ミオベルでコンピレーションアルバムを作るのは初めてだったので、事前に知り合いの音楽プロデューサーや音楽レーベルを企画運営している方々に話を聞きました。
例えばマスタリングのやり方。通常コンピレーションの場合はミュージシャンの立会いなしでやることが一般的だそうです。
理由は”どのアーティストの音楽を基準にするのか”を決めるのが難しいからなんだそうです。もちろんレーベルオーナーに決定権があるわけですけど、実際にミュージシャンを目の前にして話をするのは難しいものなのだとか。。。
もう一つの理由として、ミュージシャン側からしたらコンピレーションアルバムは自分の作品とは捉えにくいし、そこまで思い入れがある企画ではないことが多く、さらにコンピの性格も踏まえてそこまでは拘れないからというのもあるようです。この場合は企画次第なのでしょうけど、その気持ちは理解できます。いい悪いというよりコンピというのはそういうものなんだろうなと。
原則音楽に優劣はないので、そうなるとその時々で何を大事にして音を作るのか、レーベルオーナーが明確な基準を持っていないといけないわけですけどね。それ故にコンピでマスタリングの立会いは珍しいようです。周りに聞きましたけど、そんな面倒くさいことやってない、という方がほとんどでした。
でも今回のコンピは新作が大半を占めることもあり〝個々のミュージシャンがどうしたいのか?〝を考えるプロセスが大切だと考えました。
あとレコードを作る場合、レコードのマスタリング音源をどうするかという問題もあります。
一般的にはマスタリングを(その前の工程のミックスも含めて)、アナログ向けに専用に行うことが望ましいと言われています。それはCDとレコードでは媒体の音の特性が異なるからです。
でも色々な方のお話を伺うと、現実にはCDのマスター音源をそのままレコードに使っている作品も多いそうです。
理由の多くは予算の都合です。アナログ専用にミックスしたりマスタリングするとそれだけお金がかかります。マスタリングだけでも1.5倍程度費用が膨れ上がってしまうんです。
予算の少ないインディペンデントレーベルにとってはなかなか難しい問題です。作品によってはそのまま使える場合もあるのですが、音に拘るミュージシャンにとって同じマスターを使うのは許せないという方も多かったり。。。
予算と音への拘りの間に立たされながら、しかも投資効果が音に現れるとはいえ、宣伝費のように投資した分売上に直結するとは限らないものでもあるため、どのレーベルの担当者も大いに悩まれるところ。
音への拘りで言えば、誰にマスタリングを頼むかも大事なポイント。今回はいつもお世話になっている方に依頼したけど、このマスタリングも人と機材によって予算ピンキリです。
便利な世の中になったもので、インターネットを使って無料でやる方法もあります。1,000円/曲でやってくれる人、5,000円/曲の人、12,000円/曲の人、25,000円/曲の人もいます。これといった正解もないので予算と相談しながらミュージシャンなりレーベルが納得のいく音を作ってくれる方にお願いすることになります。
今回はCD向けとアナログ向けに各々にマスターを作ることにしました。さすがにミックスまで立ち返るのはコンピの性格上できませんでしたけど、1組だけは一部レコーディングを追加してミックスからやり直した作品もあります。
スケジュールが合った方には立会いもお願いしました。都合合わなかった方は申し訳なかったんですけど、僕ができるベストは尽くしました。それが音にどのように反映されたのかは聞いてみて判断してもらえたらと思います。
この日は10時間スタジオにこもったのですが、さすがに精神力を使い果たし終わったあとはグロッキー。でも納得のいくマスターが完成しましたよ。
レコードはあとカッティングが残っています。アートワークもこれからです。
まだまだ制作作業は続きます。