こんにちは、ポプシクリップ。@制作部ミオベルレコードです。
フランスの音楽レーベル、サラヴァのピエール・バルーさんが旅立たれてから今日で一年が経った。サラヴァレーベルは世界最古のインディペンデントレーベルと言われており50年以上続いている由緒あると世界的なレーベルだ。
ピエールさんには昨年初めてお会いした。サラヴァの50周年イベントで来日されていたんだよね。あるべきレーベルの姿を模索していた僕は飛び込みで連絡をとって取材させていただいた。詳しい内容はポプシクリップ。マガジン第8号に書いてあるとおりだけど、僕は取材も含めて短い滞在期間に4回も会いに行った。
何故レーベルを始めたのか、何故サラヴァは50年も続いたのか、何故サラヴァの音楽はユニークで世界で愛されているのか?レーベルを辞めたいと思ったことはないのか?メジャーレーベルと個人のインディペンデントレーベルの果たす役割の違いは何なのか。。。
お金のやりくりの話も含めて様々なお話を。もちろん自分に同じことはできないし、そもそも目指すビジョンも音楽ジャンルも異なるけど、僕が目指している「長く続けること」に対するヒントがもらえたらなと。
周りでも個人レーベルをやっている人が何人かいたんだけど、大抵3年も続かないんだよね。数作品リリースして終わり、といったレーベルも多くて、そうはなりたくないと思ったから。
「10年経っても聴きたくなる音楽を作る」「流行には左右されず、自分の感覚を信じる」「アーティストのやりたいようにやらせる」と言葉で書くのは簡単だけど実務をまわしていくとすごく大変なことを、それを実際にやられているピエールさんに話を聴けたのは本当にラッキーというか幸運だったとしか言いようがない。
ピエールさんに話を伺う前、日本で音楽レーベルをやっている方々にも話を聞いていた。個人レーベル、ミュージシャンの自主レーベル、メジャーレーベルはもちろん、メジャーレーベルの所属するミュージシャン、過去メジャーに在籍したがインディーズレーベルに籍を移した方など、レーベル運営者だけでなく、レーベルと関わってきたミュージシャンにも話を聞くことで、レーベルの運営形態によるメリットデメリット、それに関わるミュージシャンのメリットデメリットを勉強させてもらった。
これらからわかったのは、ミュージシャンの目指す姿や立ち位置によって、フィットするレーベルの運営形式や関わり方が違うということだったんだけど、ピエールさんから教わったサラヴァのやり方はそれまでに聞いた話とも全く違っていて大変勉強になった。
ここでいくつかお気に入りのピエールさんの音楽を。
よかったら聴いてみてもらえたら。
僕がレーベルを始めてちょうど一年。
少しずつピエールさんの言いたかったことが理解できるようになってきた。まだほんの僅かだけど。 レーベルの立場でミュージシャンのお手伝いするようになると売れるのか?売れなくてもせめて投資回収はできるのか?というビジネスの話が常につきまとう。
ビジネス判断で売れないからやらないのはすごく簡単で、それは誰でもできる。その上で様々な葛藤を乗り越えて「いい作品を作る」ためにお手伝いできるのか。。。そのことをずっと考え続けた一年だった。各ミュージシャンの課題解決のため、解決方法を一緒に考えた一年と言った方がいいのかもしれない。
音楽に限らずよいものであれば売れるのは様々な仕事の経験からなんとなくわかっているつもり。いい作品であれば自然と口コミで話題になるしね。売れない、話題にならないのはリスナーにとってフィットしない、面白くない作品であるということ。この辺はとてもシビアだなあと感じる。
この一年で思うようにいかないこと、想像できなかったこともたくさんあり、その度に立ち返ってきたことがある。
・そのミュージシャンらしい作品作りに繋がっているのか
・耐久性のある音楽になっているか
・僕やスタッフがその音楽を世の中に伝えたいと思うか 、やっていて楽しいか
これはピエールさんから教わったことを僕なりにアレンジしたものだけど、いつも思い出すのはピエールさんの次の言葉だ。
「そのミュージシャンの音楽を愛しているかい?」
ピエールさんに実はレーベルをやるつもりなんだと伝えたとき「本当に?」と不思議そうに、でもとても嬉しそうだった。珍しかったのかもしれないね。レーベルのやり方を直接聞きに来る日本人なんてそれほど多くはないだろうし・・・初対面の僕の質問にとても丁寧に答えてくれた。
残念ながらリリースした作品を届ける前にピエールさんは逝ってしまった。
だけど、昨年ピエールさんに出会ったことは僕のレーベル運営の根幹に大きな影響を与えたし、それに感謝する意味もあってリリース作品のクレジットには常に彼の名前を書かせてもらっている。
少し前にお手伝いしているTプロのメンバーからこんなコメントをもらった。
「このレーベルって本当に自由だよね、こんな好きなようにやっていいの?」って。
何気ない一言だけど、実はとても嬉しかったんだよね。
ミュージシャンにそういってもらうことができたのは、ピエールさんの教えのほかならないんだ。
ミオベルレコード、とりあえず一年続いてよかった。
参加してくれたミュージシャン、応援してくださった皆さんありがとう。
来年も細々と頑張ります。そしてまた一年後ピエールさんに何らかの報告ができますよう。