ピアニスト岡城千歳、N響の第1コンマス篠崎史紀を迎えた坂本龍一ピアノ・ワークス第4弾を 11月にリリース!「戦メリ」などの独自楽曲分析も収録。岡城本人のコメントも!

ポップスをクラシカルに再構築することに長けているピアニスト・編曲家の岡城千歳が、11月に『坂本龍一4 ~ ヴァイオリン&ピアノ・ワークス』を、ニューヨークに拠点を置く自身のレーベルChâteau(シャトー)より発表。日本では国内盤が東京エムプラスよりリリースされ、11月21日よりタワーレコード、HMVなどを中心に全国流通がスタートした。

 

今回でシリーズ第4弾となる『坂本龍一ピアノ・ワークス』シリーズは、岡城自ら坂本龍一本人に企画を説明、許諾を得た上で独自のアプローチで編曲、演奏された作品集。2018年に発表された『坂本龍一ピアノ・ワークス3、トリビュートアルバム In Appreciation & Admiration』から2年ぶりのリリースとなる本作は、前作同様2004年6月に長野県で行われたコンサートの未発表ライヴ音源を作品化したもの。マスタリングはカナダの大手クラシックレーベル「アナレクタ(Analekta)」でプロデューサーも務めているベテランエンジニアのカール・タルボット(Carl Talbot)が担当している。

 

今作ではNHK交響楽団の第1コンサートマスターであるヴァイオリニスト篠崎史紀との共演した「Tong Poo(東風)」「1919」「レイン(『映画:ラストエンペラー』より)」をはじめ、「シェルタリング・スカイ」「戦場のメリークリスマス」「エナジーフロー」など、前作以上に大衆性のある楽曲も多数収録されているのが特長。アレンジャーとしても実績を誇る岡城がヴァイオリンとピアノ向けに編曲を手がけているほか、NHKスペシャル『変革の世紀』のテーマ曲で、坂本龍一初のオペラ作品『ライフ』からのアリアについては、オリジナルのレコーディングにも参加した篠崎史紀が所有するオリジナル・バージョンのスコアを使用したとのこと。

 

そして岡城本人による坂本楽曲の独自解説も収録。今回は「戦場のメリークリスマス」「『ラストエンペラー』テーマ」の2曲をピックアップ。楽曲のメロディと和声の構成を、譜面の一部を具体的に取り上げながら、独自の視点で分析・解説しており、リスナーが坂本楽曲の理解を深める上で大変貴重な資料となっているのも見逃せない。また岡城本人による全曲解説に加えて、坂本とも親交のある音楽プロデユーサーの牧村憲一と、音楽・文芸批評家の小沼純一によるライナーノーツも掲載されている。

 

2004年6月15日、コンサート当日の会場担当者の機転により予定外だった録音が行われ、そして10数年の時を経て作品としてリリースされた12曲入りの『坂本龍一4 ~ ヴァイオリン&ピアノ・ワークス』。現在YouTubeの公式トレーラーやリリース元である東京エムプラスのサイトで一部試聴ができるとのことなので、ぜひチェックしてほしい。

本リリースにあたり岡城から届いたコメントは次の通り。

 

岡城千歳コメント

 

「坂本龍一4~ヴァイオリン&ピアノ・ワークス」は「坂本3」の姉妹編のライブ録音ですが、これは本当に不思議で素晴らしい出来事がきっかけでした。もともとコンサートでは録音の予定はなかったのです。長野県民文化会館ホクトホールの当時のご担当でおられたかたが、私の当日のリハーサルをお聴きになられてすぐさまエンジニアに駆け寄ってくださり、「これからマイク吊れる?」と聞いてくださった、この一言がなかったら、「坂本3」も「坂本4」も生まれることはありませんでした。「あの日、表まわりの設営をしていたら、舞台まわりにいたスタッフが、すっ飛んできて、ブリッジのリハーサルをされていた岡城さまの演奏が凄すぎると。全身鳥肌がたって、この演奏は絶対に残さなきゃ、と思いました。上からマイクが下がってきて、これで残せると安堵して。とにかく、全てが特別の夜でした。昨日のことのように覚えております。あの演奏会がCDとして、みなさまに届くこと感無量です。」当時のご担当のかたがこう語ってくださいました。私も同じく感無量の思いです。様々な理由からリリースが遅れに遅れ、お蔵入りとなっていたこの音源を眠らせてはいけない、との声を大変ありがたいことに多数いただき、実現した「坂本4」。あの夜のコンサートは音楽の一番大切な部分がすべて凝縮されていたような、音楽と人とのかかわりのつながりとか思い、そんなふうに思うのです。それは独りで理想を突き詰めるスタジオ録音では絶対に得られない演奏でもあって、その時の人とのつながりを音が象徴しているためでもあるとも思うのです。篠崎さんとのあの演奏は、スタジオ録音では絶対に不可能な熱があって、あのコンサートのあの瞬間で、篠崎さんがこう弾いたから私もこう答えて弾いた、そしてそれを聞いてくださった皆様が受け止めてくださって、それにまた答えて弾いた、そういう特別なものを含んでいる音でありました。いろいろあって迷ってきて悟りにはまだまだ(多分永遠に)程遠いけど、この「闘いモード」こそが自分の人生だし、悟れないからこその私の音楽だから。大変遅くなってしまってごめんなさい。そして本当にありがとう。「1+1=2ではなく、1+1=∞でした。岡城さん+篠崎さん=∞、岡城さん+教授=∞ 感動しました!」(公演時のアンケートより)

また、コロナ渦で状況が特にひどいアメリカに住むミュージシャンとしての思いについて、下記のコメントが届いたので付け加えておく。

 

 

「ニューヨークでのコロナの状況は、4月には1日800人もの死者を出すほど悲惨でしたが、今でもアメリカ全体の状況は悪化する一方で、死者はすでに25万人を超えました。コンサートも来シーズンまですべて中止、先が全く見えません。ミュージシャンにとって、そしてすべての人にとって大変な日々が続きます。この大変な状況下で生きるということ、そして音楽に携わるということの意味を問われている、そんな気がしています。3月に始まったニューヨークのロックダウン、それは、ひっきりなしの救急車のサイレンの音、そしてゴーストタウンの街全体からサイレン以外のすべての物音が消え、皆が死を意識して息をひそめながらそっと部屋に籠っていた時期。そんな中でも独り部屋でピアノを弾きながら体験した音があります。他人に語ることを前提としていない音。他人に伝えるとか他者に対して表現するとか、いや、自分のためでもない、 ただただ存在する音。そこには、他人に認められなくても、この世界の誰も聴いてなくても、自分がただただ惚れ込んでいる音を出したい、そんな本質的な音がありました。生きるという音、そんな音のために、自分のために、そしてそれを皆さまの心に深くお届けするために、このコロナ渦であえてCDを創っていきたい、そう強く思っています。コロナ渦だからこそ、最悪な状況のアメリカニューヨークから、強い思いを込めて、それが新譜『坂本龍一4』です」

関係者による推薦コメント

 

坂本龍一作品のカバー曲は数々ありますが、その多くが模倣以上のものではありませんでした。しかし数は少なくとも、素晴らしい作品が生まれています。一つは大貫妙子の作詞、歌唱を伴った「UTAU」、藤倉大による「Ballet Mecanique」のオーケストレーション、そして本作RYUICHI SAKAMOTOシリーズ、岡城千歳による編曲演奏です。坂本龍一という稀有な作曲家への、作品を通しての協働であり、と、同時に篠崎史紀と岡城千歳からの挑戦でもあるのです。RYUICHI SAKAMOTO 4は、待っていた作品集でした。(音楽プロデューサー 牧村憲一)

 

坂本龍一作品の骨格がこんなふうに明示され、書かれた音にある歴史や背景、斬新さがみやすくなることが、ただ音楽を聞くという以上の、音楽のふかみ、音楽作品というものの持っているふかみを感じさせてくれる。(音楽・文芸評論家 小沼純一)

坂本龍一による過去のピアノ・ワークス作品への推薦コメント

 

「自分の音楽が違う衣装を着て、別な表情でぼくの前に現れたので、とても新鮮でした。」

(坂本龍一、ライナーノートより『ピアノ・ワークス3』)

 

「岡城千歳という優れたピアニストが、ぼくの曲を弾いたCDを作るという。習作時代の作品から最近のものまで網羅しているこんなアンソロジーはぼく自身も作ったことがなく、もちろん初めての試みだ。そして岡城はぼくより数段ピアノがうまいんだから、これ以上いいことはない。」

(坂本龍一、ライナーノートより『ピアノ・ワークス1』)

作品情報

作品名:坂本龍一4 ~ ヴァイオリン&ピアノ・ワークス

アーティスト:岡城千歳/Chitose Okashiro

レーベル:Château

国内盤販売元:東京エムプラス

品番:C20002

形態:CD

発売日:2020年11月21日

価格:オープン価格

 

収録曲

01. Tong Poo(東風)

02. 1919

03. レイン(『ラストエンペラー』より)

04. Tango

05. 変革の世紀

06. 『シェルタリング・スカイ』テーマ

07. タコネス・レハノス(『ハイヒール』より)

08. 『ラストエンペラー』テーマ

09. 戦場のメリークリスマス

10. エナジーフロー

11. ピアノ組曲

12. オッペンハイマーのアリア(オペラ『ライフ』より)

 

岡城千歳(ピアノ)/篠崎史紀(ヴァイオリン:1-5,12)

日本語解説&日本語曲目表記オビ付き

解説:岡城千歳、牧村憲一、小沼純一

篠崎史紀プロフィール

Photo by K.Miura
Photo by K.Miura

愛称 "まろ"。NHK交響楽団第1コンサートマスター。

3歳より両親の手ほどきを受ける。15歳の時に毎日学生音楽コンクール全国第1位。北九州市民文化賞を史上最年少で受賞。高校卒業と同時に渡欧しウィーン市立音楽院に入学。翌年コンツェルト・ハウスでコンサート・デビューを飾り、その後ヨーロッパの主要なコンクールで数々の受賞を果たす。 88年帰国後、群馬交響楽団、読売日本交響楽団のコンサートマスターを経て、97年NHK交響楽団のコンサートマスターに就任。以来“N響の顔"として、国内外でソロおよび室内楽など多岐にわたる演奏活動を行う。また、東京ジュニアオーケストラソサエティの芸術監督を務めるなど後進の育成にも力を注ぐ。これまでにCD13枚がリリースされているほか、ヴァイオリン小品集「MARO’s Palette」(監修)、エッセイ「ルフトパウゼ ウィーンの風に吹かれて」、「絶対!うまくなるヴァイオリン 100のコツ」が出版されている。

 

2001年福岡県文化賞受賞、2014年第34回有馬賞を受賞。北九州文化大使、東京藝術大学非常勤講師、桐朋学園大学非常勤講師、昭和音楽大学客員教授。 WHO国際医学アカデミー・ライフハーモニーサイエンス評議会議員。 現在、『音楽の友』でMAROの誌上名曲喫茶「まろ亭」を連載中。また2018年4月よりNHK『クラシック音楽館』の案内人として出演中。

坂本龍一ピアノ・ワークス3特集&インタビュー
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