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高橋徹也 The Endless Summer Interview

プロデュースの観点でいうと、今回はリカちゃんの魅力の幅を広げることに挑戦していたんです。(及川)

──話は変わりまして、歌い方について少しお伺いします。今回のアルバムでは「スタイル」など楽曲によって歌い方を大きく変えていらっしゃいますよね。リカさん、実は3人いるんじゃないかと思ったくらいで(笑)。これは意図的だと思うのですが、どのような背景があるのかお伺いしたかったんです。

 

リカ 「[スタイル]も10年くらい前からある曲で、当時からジャズっぽい要素を取り入れた歌い方をしたかったんですけど、これまでその手の楽曲を発表することがなかったんですよ。もともとジャズは大好きだし、ジャズ特有の歌いまわし、妖艶なイメージへの憧れ・欲求もあったんです。ただ当時は歌が本当にへたっぴで、歌いたくても歌えなかったんですよね。それが最近になってようやく理想に近づけたので、今回取り入れたんです。過去にはできなかった曲なんです」

 

及川 「初めてリカちゃんと対バンをしたときに聞いた曲がまさにこの[スタイル]だったんですよ。当時は今のアレンジではなくて、シンガーソングライターの女の子がサポートを連れてジャジーなことをやろうとしているという」

 

リカ 「とってつけた感じがあったよね(笑)」

 

及川 「そうなんだけど、曲はいいなと思ったの。7thコードを主体にしている構成やメロディがね。ただ、当時の表現力ではやりきれなかったというのはあって・・・それがようやく今だったら歌えるんじゃないかと、アレンジもジャジーな匂いは残しつつロックにして、今だったらできるんじゃないかと思って、満を持してアルバムに収録したんですよ」

 

リカ 「もともと[スタイル]はアルバムに入れるつもりがなかった曲なんですよ。うまく歌える自信も全然なかったので。そこを及ちゃんが、私がこれまでにお蔵入りにしてきた曲も含めて、提案してくれたんですよね」

 

及川 「リカちゃんは喜怒哀楽が素直に出るタイプなんです。ただ人間誰しも年齢を重ねる、大人になるにつれて表情や表現も複合的になりますよね。例えば“怒る”一つとっても声を荒げるだけじゃなくて、顔は笑っていながら怒るということもある。リカちゃんも経験を積んで様々な表現ができるようになってきたから、今だったらできるんじゃないかと思ったんですよ」

 

リカ 「歌い方については一番気にした曲ですね」

 

及川 「あと、さっき黒須さんはリカちゃんの歌い方が3通りあるって言われたじゃないですか? それを聞いたときドキッとしたんです」

 

──何故ですか?

 

及川 「実は今回曲によって歌い方はもちろんマイクを3本使い分けていているんです。プロデュースの観点でいうと、今回はリカちゃんの魅力の幅を広げることに挑戦していたんですね。だからストレートに録りたい曲やファニーに歌いたい歌など、楽曲によって歌の空気感を変えようとやっていたんですよね」

 

──マイクの違いまでは気づきませんでしたが(笑)、楽曲による歌い方の明確な違いを感じられたので、その点は伝わっているし、リスナー視点でも楽しめると思いますよ。それと女性のシンガーソングライターの方々、ひとくくりにしてはいけませんが、事実その多くはわりとパターン化されやすくて、似たような雰囲気の方が次々と出てくるんです。その中でも長く生き残ってやっている人は、やっぱり楽曲のアレンジと歌い方に特徴のある人が多いんですよ。今回のアルバムは、わかりやすいピアノポップもそうですが、ロックンロールな歌やジャジーな曲もあり、アレンジが多彩なので、聴いていて飽きず、リカロープの多様な面が楽しめるアルバムに仕上がっていると思いますね。

 

及川 「確かに、今回のアルバムを作るときはリカちゃんの様々な側面、例えが変かもしれないけど、この曲は怒っているリカちゃん、この曲は楽しそうなリカちゃん、この曲は悲しそうなリカちゃんというように、楽曲ごとにリカちゃんの特徴を打ち出すようなイメージを持ってやったんですよ。リカちゃんの様々なキャラクターを意識したんです」

 

──なるほど、それはわかりやすいですね。今話されたことはとても大事なんですけど、これを実現するのは難しいことなんですよ。よほど互いの信頼関係、相互理解がないと見つけ出せないと思うんですね。プロデューサーの及川さんが、リカさんの良さを引き出すための、気づきがすごく重要なんです。プロデューサーとしてだけでなく、サポートメンバーとして近い立場でもあるからこそ、魅力を引き出すことができたんでしょうね。

 

リカ 「それはすごくあると思いますね。言われてハッとしました(笑)」

 

及川 「確かに・・・歴代のエンジニアからも、プロデューサーである及川君がもっとひっぱらないと駄目だよ、とは言われていましたけどね(笑)。なんだろう、僕らは、リカロープをやっていることを除けば、唯の音楽リスナーなんですよね。だから音楽的に深いものも好きだし、そういう事をやってみたい気持ちもあるんだけど・・・リカロープだけを見ると、リカロープのファンは全員が全員コアな音楽リスナーではないんですよ。普段あまり音楽を聴かない人もいるし、家族連れもライブでよく見るし。リカちゃんはある意味歌のお姉さんなんですよね。だからプロデューサーとしては、リカちゃんをそちらのファンに届くようにしたいと思っていて、アレンジも難しくしすぎないように気をつけながら、やっていましたね」

 

──参考までにリカさんはどのような音楽の影響を受けてきたんですか?

 

リカ 「小学生のときは歌謡曲ですね。EPOやユーミンなど、女性のシンガーソングライターも好きでした。あとはTVで流れるヒット曲くらいしか知らなかったんですよ。いわゆるコアな音楽はほとんど通って来なかったんですよね。中学生の時はプリプリだったし、高校生になったらドリカムとかで、世間一般的な感じで育っていたと思います」

 

──なるほど、リカさんの音楽歴をふりかえっても、及川さんが話されていた一般的なリスナー層を大事にしている点とリンクしている気がしますね。

 

リカ 「自分であれこれ聴くようになったのは社会人になってからなんです。クラウドベリー・ジャムやスワン・ダイヴなど周辺の音楽に一時ハマっていましたね。今でも大好きです」

シンガーソングライターなんだけど、ユニットやバンドスタイルを大切にしたいという想いが強いんです。(リカ)

──ジャケットデザインのコンセプトは何でしょうか?

 

及川 「昔のフランス映画をオマージュした感じにしたかったんです。収録されている[ブルーグレーな空]もパリの歌ですし。そこからイメージ・デザインしました」

 

リカ 「及ちゃんはプロデューサーでもあり、デザイナーでもあるので、ジャケットワークにも曲のイメージが強く反映されたものになったんですよ」

 

──この作品にはThe Carawayの嶋田さんはじめ多くのゲストミュージシャンが参加されています。

 

及川 「僕が課外活動としてお手伝いしているミュージシャンを中心にお願いしました。インディーズだと友達付き合いでお願いすることもあると思うんですけど、なあなあでやりたくなかったので、仕事としてちゃんと頼める方にお願いしました。僕自身、色んな楽器を弾くこともありますが、自分のやりたい音に対して自分の演奏力が追いつかないんですよね。そこはリスナーとして聴いてみて、よりよい作品を作るための判断ですね。あと、ピアノについても、普段はリカちゃんが全部弾くんですけど、今回は初めて外部の方にもピアノを依頼しました。CMソングを制作したときの仕事のパートナーであった牧野さんとオニオンズの高口さんですね。またLD&Kのレーベルメイトで最近ではControversial Sparkをやられている岩崎なおみさんにもベースで参加してもらいました。ほとんどがこれまでのつながりのある方なんですが、アコーディオンの大塚雄一さんとチェロの遠藤益民さんは今回初めてオファーしたミュージシャンです。もっとチャレンジしてみたいこともあったんだけど、現実的には制約もあるので、ベーシックなところは自分たちでやりつつも、多くのゲストに参加いただいたことで幅広い音が詰まったアルバムになったと思います。あと何より、エンジニアの小池さんが理想通りに音をまとめてくれた事が大きかったです」

 

──アレンジといえば、今回曲ごとに色んな音楽ジャンルのテイストをこめられているのが特徴ですが?

 

及川 「同じ人が普通に10数曲作っただけで世界観を広げるのってなかなか難しいと思うんです。そこで世界観と窓口を広げるためにアレンジしていくのが僕の仕事だと思っていて。例えば[北欧ロマンス]では、ケルト音楽の雰囲気を出したくてアコーディオンを入れたり、パーカッションだけでやってみたり。曲ごとにワールドミュージックの要素を散りばめることで、trip観を作ろうと思ったんです。[Have fun]はスリー・ピースのスウィング・ジャズを意識したアレンジにしてみたり。最終的にはリカちゃんが歌ってピアノを弾けばリカロープとしてまとめられる自信はあったので、アレンジでは色んなジャンルにチャレンジさせてもらいました」

 

リカ 「ただ最後の[恋がSwing!]はアンコール的に収録した曲で、『a little trip』の流れからは外れているんですよ。この歌はもともとコンペに出していた歌で一番だけしかなかったんだけど、幸か不幸か戻ってきたので(笑)、それに二番や三番をつけて仕上げたんです」

 

及川「最近僕もギターポップ界隈の音楽をやるようになってきたので、そこで得たことをアレンジにフィードバックできるんじゃないかと思ったしね。アルバム紹介文で“ピアノポップの枠を超えた”と書いているんだけど、まさにそこを狙ったんですよ」

 

──リカさん自身は既成感のあるシンガーソングライターの枠を超えたいのでしょうか?

 

リカ 「うん、そうですね。今はやっぱりいわゆるシンガーソングライターなんですけど、スリー・ピースやバンドスタイルを大事にしたいですからね」

 

及川 「奥田民生さんがいい例かもね。奥田さんはシンガーソングライターだけど、バンドとしてのイメージが強いじゃない?ああいう感じなのかもね」

 

リカ 「一人、ピアノの弾き語りライヴを絶対にやらないのもそういう理由なんですよ」

 

及川 「ライヴはスリー・ピースにこだわっているもんね」

 

──今後のミュージシャン像などはありますか?

 

リカ 「インディーズの狭い範囲だけではなくて、より大衆的な感じになっていきたいというのはありますね。もうちょっと規模を広げていきたいというのもあるし。あとは楽曲提供をもっとやっていきたいです。コンペもそうなんですけど、この前作詞の依頼があったんです。そういったことはどんどんチャレンジしたいんですよ。テーマ、制約がある中での作品作りにも興味があるので。合唱曲とかね。コアな音楽ファンだけではなくて、普通の、一般の人、それこそ私の妹が聴いていいと思える歌を作っていきたいです」

 

──最後にバンド名の由来についても教えてください。

 

リカ 「これは一番好きなシンガーソングライターであるリサローブからとっているんですよ。アーティスト名を考えるときに自分の名前を使うのは嫌だったんですよね」

 

──意外ですね。シンガーソングライターの方は自分の名前をそのまま使う人も多いんですけどね(笑)。

 

リカ 「シンガーソングライターなんだけど、ユニットやバンドスタイルを大切にしたいという想いが強いんですよ。それで私の名前がリカなので、リサローブをもじってリカロープに。ロープには音楽の輪を作っていこうという意味もこめたんです。ボブ・ディランとホフ・ディランみたいですね(笑)」

 

──本日はありがとうございました。

Ricarope作品

HARCO ゴマサバと夕顔と空心菜

Ricarope

a little trip

2015年11月4日リリース

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HARCO ゴマサバと夕顔と空心菜

Ricarope

Good morning!

2009年2月4日リリース

Amazon商品ページ




LIVE INFO

リカロープワンマンライブ「春のリトルトリップ」

日時:2016年 3月26日(土) 開場13:30 開演14:00

会場:東京・北参道ストロボカフェ

出演:Ricarope

料金:前売¥2,700円(+1D) /当日¥3,000(+1D)

MUSIC VIDEO

Ricarope(リカロープ)プロフィール
ピアノポップシンガーソングライター。
日常の断片を切り取り、弾むピアノにのせて人生を歌う。


朝がテーマのアルバム「Good morning!」をリリースしたのを機に、1000万アクセスの人気サイト「朝時間.jp」で心地よい朝時間の過ごし方を綴る。

また「たまごクラブひよこクラブ」を筆頭に、CM音楽の歌唱やナレーションも多数担当。

 

2002年にLD&Kより6曲入りのミニアルバム『Rica tea』でデビュー。これまでに3枚のシングルと3枚のミニアルバムを発表。2015年11月に初となるフルアルバム『a little trip』をリリースした。

 

 

オフィシャルホームページ

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