トルネード竜巻のなかまきことyou & me togetherとrisetteの常盤ゆうによるレディース・ユニット、ぱいなっぷるくらぶが1stアルバム『BANANA』を8月にリリースした。
もともとバンドマン、フロントマンとして活動していた二人が、メインコンポーザーである新城賢一とPerfumeの衣装も手掛けたことのあるデザイナーたまこと一緒に創り上げたのは、ラップも取り入れたハッピーなダンス・ポップ・チューン。歌はもちろんシンセに歌詞にアレンジと、曲作りに様々な形でコミットすることで生まれた楽曲は、等身大でどこか緩い彼女たちの在り姿。
バンドとは違う、解放された立ち位置で作られたためか、南国のトロピカルなゆったりした雰囲気が作品のあちらこちらに漂っている。それは沖縄出身者が多数を占めるぱいなっぷるくらぶだからこそ表現できるものではないだろうかと筆者は思う。
勝手な想像だが、地元を離れて都会に出てメジャーシーンなどで活躍、そして一息ついて自分をふり返ったときに、ふと根底に流れていたうちなーの血が自然発生的に求めたものだとすると妙に納得がいくのだ。作りこまれたメロディだけでなく、ラップというリズムを重視した歌唱法を取り入れることで、血が求めていた”らしさ””自由””解放”といったキーワードをより的確に表現できるようになったと捉えることもできる。
最後、余談になるが、3曲目に収録された「Beef or
Chicken」は、女同士の戦いを表現したものだとなかまきこが取材中に話してくれた。この「Beef」という言葉は、1980年代にアメリカのハンバーガーチェーンの論争をきっかけに大統領選挙のスローガンでも使われた有名な言葉で、音楽の世界ではアーティスト同士の喧嘩や論争を意味する言葉としても機能する。どこまで意識的に使っているのかはわからないが、歌詞や楽曲を丹念に紐解いていくことで新たな発見や解釈ができる面白味をちゃんと用意しているのは、ぱいなっぷるくらぶが深みを持つアーティストだからであろう。明日10月12日に開催されるリリース・パーティーも楽しみである。
インタヴュー・文 黒須 誠
撮影 木目田隆行
企画・構成 編集部
日時:2015年10月12日(月・祝)open 17:30/start 18:00
会場:東京・下北沢THREE
出演:ぱいなっぷるくらぶ/SUBMARINE/963(くるみ)etc.
料金:前売 2,000円/当日 2,500円(共に+1drink)
予約:メール予約 infopineappleclub@gmail.com までお名前と人数をお知らせください。
詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。
──ぱいなっぷるくらぶは、トルネード竜巻のなかまきこさんと risette の常盤ゆうさんによるユニットということで、まずは結成の由来から教えてください。
なかまきこ(Vo/Key) 「もともと常盤さんと“うしろ髪シンセ隊”というユニットをやっていたんです。シンセサイザーが好きで、ちょうど新しい機材を買ったときに、常盤さんと出会って。常盤さんもアナログ・シンセを弾くので一緒に何かやれたらいいなと思って始めたんです。その後、高校のときの同級生で“SUBMARINE”をやっている賢一君と、同じくデザイナーをやっているたまこちゃんも集まり、自然とクラブ活動的に始まったのが、ぱいなっぷるくらぶなんです」
──ユニット名はどうされたんですか?
なか 「名前は私がつけました。沖縄出身者が三人いることもあって、“沖縄で楽しかったことって何だったかな?”と思い浮かべて。私は那覇出身なんですけど、母の出身の久米島に行ったとき、パイナップル畑の傍にある小屋でその畑のパイナップルをたくさん食べたことがすごく楽しかったんですよ。あと単純にパイナップルの形が可愛くて好きだったから(笑)」
──出身の沖縄カラーを出したかったということでしょうか?
なか 「特にそういうわけではないですが、パイナップルってつけたので、自然とそうなったかもしれません(笑)。沖縄というと、ディーヴァ(歌姫)みたいなイメージがあったのですが、自分はそういうタイプではないので…。南国のモチーフ…マンゴー、ココナッツやヤシの木などが持つ特有の雰囲気が好きで、このユニットではそういう空気が出せればと思ったんです」
──沖縄にある琉球民謡「唐船Dooooooi!!!!!!」がアルバムに収録されているのも、そういう理由ですか?
なか 「これはたまたま賢一君がトラックを作ってくれたことがキッカケです。沖縄のポピュラーな民謡の一つ[唐船ドーイ]をアレンジしてます。沖縄では定番のかちゃーしーという踊りがあるんですけど、結婚式やお祭りでこの曲が流れると、みんな踊るんですよね」