『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』の中でジェームズが自分の演奏を“素朴だけど正確なギター”と評するシーンがあって、そのセリフがヒントになりました（野崎）
──曲は全て神野さんが作られているんですか？
神野 「そうですね、普段何気なく浮かんだメロディをスマホなどで録音しています。僕の場合はコードを作ったあとに歌いながらメロディをつけていくことが多いんですよ」
──作られている中で、神野さんがピンとくるときってどんなときですか？
神野 「うーん、自分の中では具体的にこれだというのはないんですけど、直感ですね」
野崎 「あ、でも次はこういう雰囲気の曲にしようという話を普段からしていて、それを意識して神野さんが作っているから、その方向性と合っているなと思えたときというのがあるんじゃないかな」
神野 「それはありますね。自分のiPodをシャッフルで聴いてみてカッコイイなと思う曲に出会うとこれumbrellaでやってもいいかな、と気づくことがあるんですよ。それをイメージしながら作ることもあります」
──普段はデモ音源をきっちりと作りこんでいるのですか？
神野 「いや、簡単な弾き語りで録音したものをメンバーに送って、みんなでスタジオでアレンジして作ってますね。その場でこんな感じのキーボードやギターを入れたいよね、という感じで」
──ギターの音を入れるときに意識されているポイントはありますか？
野崎 「気をつけていること・・・なんでしょうね、ただ事前に深く話し合ってやっている感じではないんですよ。スタジオで合わせていくうちに、それぞれの音を差し引きしていく感じなので。asakoさんのキーボードもそうですね」
asako 「色々試しながら作っているんですけど、例えば野崎さんがリズムを刻んでいる時は他のことをしようというか、ギターとキーボードの役割は分けるようにはしていますね。全く同じことはしないようにしています」
──umbrellaの楽曲は全体的に音数も少な目でシンプルじゃないですか？ エモーショナルな感じは一切なくてサラッと乾いた感じがするんですよ。それがかっこいいしこのバンドの特長だと思ったんですけどね。あと鍵盤が音像において要になっているように感じたのですが？
asako 「鍵盤の音では、アコースティックピアノやエレピ、オルガンなどが好きなんですよ。電子的なシンセサウンドは聴くのは好きなんですけど、このバンドにはあまり合わないと思っているので使っていないんですよね」
野崎 「そういえば、この前別の知り合いからもバンドのメインヴォイスは鍵盤だね、と言われたんですよ」
──いや、そうだと思いますよ。ギターポップバンドだけど鍵盤の音が胆だっていうのも面白いなと思っていたくらいで（笑）。言い換えたらギターをあっさり、淡々と弾いているということなんでしょうけどね。他のインディーギターポップバンドよりも鍵盤の音数が多いのも特長なんですよ。
asako 「それで言うと、私が他のギターポップバンドの曲をあまり聴いていないからかもしれないですね。ギターポップといったらこういうものだよね、といったフォーマットを知らないからだと思います（笑）」
神野 「曲作っている僕も、あまりギターポップを意識したことがないんですよね、だからかも」
野崎 「レコーディングの際ドラムとベースとキーボードは３人が立ち会ったんですが、ギターの録音はあとで僕一人でやったので、その影響もあるかも。けっこう煮詰まってしまったんですけど、さっき話していた『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』の中でジェームズが自分の演奏を“素朴だけど正確なギター”と評するシーンがあって、そのセリフがヒントになりました」
神野 「前に作った３曲入りのCD-Rのときはメンバーがライヴで再現できることを意識して、そのまま録音したんですよ。今回アルバムを作るにあたりもっと音を重ねたいなと思ったので、それでオルガンやエレピにストリングスなど音をたくさん入れるようにしたんですよ。作っていくうちに面白くなっちゃって」
asako 「１曲６時間くらいかけてやったよね（笑）」
神野 「やっているうちに楽しくなっちゃって（笑）」
野崎 「そうそう、だからkiwakoさんの歌録りをするときには、リハでやっていたときに入っていなかった音がたくさん入っていたんですよね（笑）」
──バンドとしては初作品となったわけですが、できあがったのを見ていかがですか？
kiwako 「そうですね、ようやくできたという感じなんですけど、次回作はもっとバンドのカラーを出せたらいいなと。今回作った1stアルバムは今の私たちのベストではあるんですけど、次回はもう少しコンセプトというかやりたい方向性を明確にして作れたらってことですね」
神野 「僕はやっとできてホッとしたというのもあるんですけど、早く次の作品を作りたいという、はやる気持ちがもうありますね（笑）」
asako 「私はわりと満足だったりしますね（笑）。これが私にとって初めてのCD作品だったので」
野崎 「思っていたより時間がかかっちゃったなというのはありますね。最初は昨年の夏には完成する予定だったんですけどね（笑）。ミックスを担当したんですが、歌がいい感じに響くように、kiwakoさんの声をできる限り生かすことに、とにかく集中しました」
──確かに一般的なJ-POPと比べると音圧も高くなくて、歌が心地いい塩梅で聴けるようになっているんですよね。ベースやギターの音もいい意味であっさりしていますし、音も詰め込んでいないので・・・それが皆さんの演奏にも表れているとは思いました。ミックスで苦労されたことはありますか？
野崎 「やっぱり音圧と音の立体感、ヴォーカルと後ろの音のバランスでしょうか。メンバーに何回も聴いてもらってギリギリまで調整しました」
──苦労されたのは音からも伝わってきましたよ。僕は皆さんのライヴを何回か観させてもらっているんですけど、ライヴだとPAさんの腕や会場によってはヴォーカルが聞こえづらいこともあったんです。音源ではクリアになっていて、とても聴きやすかったんですよね。umbrella marchは作品映えするバンドなんだろうと思いました。
海外バンドが来日したときに前座ができるようになれたらいいですね（神野）
──今後はどのような活動を考えていらっしゃいますか？
神野 「そうですね、コンスタントにライヴをやりたいんですよね。3カ月に1回くらいはできたらいいなと思いますね。あと並行して新曲も作っていて、ライヴやるごとに新曲1曲はやりたいという目標があるんですよ。だから今度のライヴでも新曲を披露するつもりですね」
──今回のアルバム、ライヴ会場や下北沢モナレコードで販売されているとのことですが、配信はされないんですか？ 英語詞ですし、海外のリスナーに聴いてもらってもいいんじゃないかと思ったのですが？
野崎 「サウンドクラウドでは海外からのアクセスも多いんですよ。アニメファンが多いようなんですけど、普通の音楽ファンの方も結構いるみたいで（笑）」
神野 「海外でいえば、スペインにあるElefant Records（エレファント・レコーズ）からリリースされている作品が大好きなんですよ。特にkiwakoさんが好きなバンドって大抵このレーベルから出ているので（笑）、いつかそのレーベルからリリースしてもらえたらいいな思いますけどね」
kiwako 「まずはライヴで曲を知ってもらってそこで気に入った人に買ってもらいたいですね」
──数年後の目標はありますか？
神野 「ライヴをやるときに、自分たちの知り合いじゃないお客さんが20人30人来てもらえるようにはなりたいですね」
kiwako 「一般のお客さんにライヴに来てもらうのってすごく難しいじゃないですか？ やっぱりライヴをやりたいんですけど、そのためには集客ができないと駄目なのでそこをきちんとできるようにはなりたいですね」
神野 「あとは海外のバンドが来日したときに前座ができるようになれたらいいなと思いますね。自分たちが好きなバンドのリスナーにも聴いてもらいたいので、ぜひやってみたいです」
──ぜひそうなるよう、応援しています。本日はありがとうございました。
オマケ
──今回皆さんにオススメのCDをお持ちいただきました。お一人ずつ紹介してもらえたら。
神野 「僕は藤原さくらさんの『good morning』を持ってきました。彼女とにかくすごいんですよ。声も独特で英語も日本語も歌えるし、まだ二十歳なんですけどドラマにも大抜擢されている し、今注目しているんです。プロデューサー陣も豪華でいいですよ。多分みんな洋楽を持ってくるんじゃないかと思ったので、今日は邦楽で（笑）」
asako 「私は昨年リリースされたクラムボンの『triology』ですね。結成20周年アルバムで作品はもちろんなんですが、付属のDVDのライヴ映像がすご くかっこよかったんですよ。クラムボンは3人のコンビネーションがすごくよくて、ジャズでいうとトリオで会話をしているような雰囲気が演奏から感じられて 好きなんです」
野崎 「僕はこれですね。トーレ・ヨハンソンプロデュース、原田知世さんの『I could be free』。カーディガンズよりもこちらのほうが好きなくらいなんです（笑）。今日はumbrella marchだしスウェディッシュ・ポップつながりでこれがいいんじゃないかと思って。去年アナログ7インチも出たんですよね。個人的ルーツとしては The Bandなんですけど今日はこちらで（笑）」
kiwako 「私はこれですね。ベル・アンド・セバスチャンの 『Fold Your Hands Child, You Walk Like A Peasant』。このCDで初めてベルセバの音楽に触れたんです。ベルセバはもう本当にすべてが大好きなので、どのアルバムがいちばん好きだとかは選べないんですが、初めて聴いたアルバムということで思い入れはありますね」
──神野さんとasakoさんは意外なところが出てきましたね（笑）。でもこういう個性がバンドにとっていいと思うし、皆さんの人柄も垣間見られて楽しかったです。ありがとうございました。
umbrella march 作品
umbrella march 1stアルバム『polka-dot puddle』
発売日：2016年2月6日
形態：[CD]
品番：なし
価格：1,000円（税込）
収録曲：
1.an ordinary man
2.moustache
3.cruel song
4.a clumsy man destroys the home
5.that's crying for the moon
6.deep navy
7.the room is ivory
下北沢モナレコードで販売中（通信販売あり）
polka-dot puddle digest
LIVE INFORMATION
Guitar Pop Restaurant vol.31 ～it's naughty and cute with spirit of guitar pop～
日時：2016年7月3日(日) OPEN 11:10／START 11:30
会場：渋谷HOME ※会場内禁煙
料金：adv. ￥2,200 / door. ￥2,700 (+ 1drink)
出演：umbrella march / three-weeks-old lovesick puppy / humming parlour / reddam (吉田ヨウヘイgroup、ex.OK?NO!!) / waffles
ＤＪ：ササキアツシ (ポプリ、Melting Holidays)
SWEETS：okashico.
予約：イベントページより
umbrella march プロフィール
2012年に結成、東京を中心に活動するkiwako（Vo）、神野（Ba）、asako（Key）による3人組のポップスバンド。メンバー交代を経て現在の形に。カーディガンズやベル・アンド・セバスチャンなどのスウェディッシュ・ポップや90年代渋谷系、ギターポップ、ネオアコの影響を強く受けており、歌詞を全て英語で書くなどのこだわりをもっている。2016年2月6日に待望の1stアルバム『polka-dot puddle』をリリースした。
関連リンク
掲載日：2016年7月2日
