1974年、小学生だった11歳のころに芸能界入りした曾我泰久(そが・やすひさ)さん。その日から50年、大手芸能事務所所属時代に「ヤッちん」という愛称で親しまれ、アイドル・ユニットやバンドメンバーとしてメジャー・デビューを果たし、音楽活動以外にも多方面で活躍しました。そして1990年にソロ・アーティストとしての活動をスタート。同時に俳優活動を継続しながら30年が過ぎました。 この連載は、曾我さんの「現在・過去・未来」を思いっきり語っていただくインタヴュー・シリーズ。どんな時も自分らしくあり続けるアーティスト、曾我泰久さんの魅力に迫ります。
第6回となる今回は、開催が迫ってきた「The Good-Bye(ザ・グッバイ)」40周年ファイナルコンサートのことをはじめ、近況を伺いました。3年ぶりにニューアルバム『POP&ROCK』をリリースという、嬉しいお知らせもあり。アルバムには新曲「10 Years After」を収録したそうです。「The Good-Bye」コンサートの直前、どんなセットリストになったのか楽しみですね。
Interview & 取材・文:饒波貴子
写真提供:イクセルエンターテイメント
取材:2024年6月吉日
曾我泰久 作品 Spotify
「最高だった」50周年ライヴ
●今年3月に迎えた芸能生活50周年、おめでとうございます。記念ライヴは一部YouTubeで視聴できますがとてもカッコよく、最強のバンドメンバーでした。ドラムのファンキー末吉さんは数年ぶりの参加でしたね。
曾我泰久 「50周年とはビックリですよね(笑)。気心知れているメンバーというか、末吉さんが後ろにいると安心して全てを任せられる気持ちが大きいです。そして歌を聞いてくれた上でドラムを叩くので、歌っていてすごく心地いいんですよ。さすがバンドのドラマーで、音楽を大切に作り上げてくださると感じます。ドラムの音によって解釈が全然違いますから」
●1曲目の「Up Beat」から「最高!」という言葉が飛び出し、本当に楽しそう、幸せそうでした。「アーティスト曾我泰久」の歩みが分かるセットリストでしたが、振り返るとどうですか?
曾我 「本当に最高でした。みんなが音を出してくれて、その音の中にいるのがとにかく楽しかったです。周年ライヴは、ゲストをお呼びすることが結構多いと思うんです。僕も過去にゲストの方をお呼びしたライヴをやってきましたが、50周年になるとお世話になった方たちが多すぎて絞れなくて。なので自分の中で完結しようと思い振り返るような選曲にして、その時々の写真をステージに映し出して見ていただく内容にしました」
●デビューのきっかけになった11歳のころのオーディションのことを話しながら思い出の曲を歌ったり、リトル・ギャング時代の曲も歌ったり。このライヴならではの聴きごたえがありました。
曾我 「デビュー当時のことを知らなかった方も多かったみたいです。すごく楽しめましたとたくさんの方に言っていただいて、うれしかったですよ」
40周年ファイナルは The Good-Bye
らしい選曲を
●50周年ライヴの後は、The Good-Bye(ザ・グッバイ)メンバーとのユニットライヴが続きましたね。3〜4月は野村義男さんとON&OFFツアー、5〜6月は衛藤浩一さんと春の珍道中ツアーでした。
曾我 「8月がThe Good-Bye 40周年イヤーの締めくくりなので、そこに向けた流れになります。グッバイのこの曲聞きたいという思いがみなさまそれぞれあるはずなので、なるべく多くその思いに応えたい気持ちでライヴをやっています。ON&OFFはグッバイの曲をメインにして、例年通り盛り上がりましたよ。珍道中は“汗をかくライヴ”というテーマで大きな声を出してノリノリで楽しむ、バンドライヴのような盛り上がり方でした」
●8月は「The Good-Bye Concert Tour 2024 ~ 40th Anniversary Year Final」開催。40周年のフィナーレを飾る東名阪コンサートですね。(東京公演:8月18日(日)/名古屋公演:8月22日(木)/大阪公演:8月23日(金))去年は40周年のスタートでしたが今年は締めくくり。どんなコンサートになりますか?
曾我 「自分で言うのもなんですが、去年のセットリストは最高だと思っているんですよ。同じことはやりたくないし、それをどう超えられるのかモヤモヤ中。やりたい曲はいっぱいあるので、昔を思い出しながらみなさんと楽しい時間を共有するコンサートにするために、どういう風に整理整頓していくか・・・考え中で結構大変です。こんなことやってみたい、あんなことやってみたいと少しずつ思い始めているので、近付いてきたら集中して考えます」
●デビュー当時の曲から最新アルバム『Special ThanX』の曲まで。たっぷり入れていただきたいです。
曾我 「バランスよく入れたいですが偏るかもしれないし、まだ分かりません。義男と浩一にはやりたい曲は早めに教えて、と伝えました。“40周年なのにこの曲やるの!?”と自分が思ってしまう曲、みなさんに思われてしまうような曲は、外したいです」
●そういうことも考えながら曲を決めるんですね!
曾我 「好きなアーティストのコンサートを見に行った時、この曲やるんだったらあの曲入れてくれないかな~みたいなの、誰にもあることだと思うんですよ。新曲が良くない、ということではないですよ。8月のコンサートは40周年の最後のお祭り。来場した方への感謝の気持ちから、新しいグッバイというより、活動休止になる前の思い出も含めた集大成になるコンサートにしたいです。去年の40周年幕開けライヴではそれができたと僕は思ったので、そこからいかにプラスアルファしていけるかを考える感じですね」
●グッバイといえばこの曲を、という期待に応えたいんですね。新しめの曲はあまり考えませんか?
曾我 「もちろん期待に応えたいです! 必然性があれば新しい曲をやるのはいいと思いますが僕の中で無理やり感があると、それが伝わっちゃうと思うんですよね」
●自然な流れが組める選曲で、メンバーさんと観客の希望がかなうコンサートができるといいですね。
曾我 「そう思っています。僕も聞きたい曲というか、メンバーと僕が歌いたい曲を考えながらセットリストを決めていきます」
The Good-Bye
は説明できないバンド!?
●「The Good-Byeはどんなバンド?」と聞かれたら、どんな説明が良いと思いますか? 現在の音楽レーベル、ユニヴァーサル・ミュージックジャパン<伝説のパワー・ポップバンド>とうたっていますね。
曾我 「最近注目されている、パワー・ポップというワードを使ったと思います。The Good-Byeというバンドはいろんな要素がある特殊なバンドなので、どういう風に言われてもいいんじゃないですかね。僕はパワー・ポップが好きですし、メロディアスな中にちょっとハードなロックサウンドを絡めていくのが自分の音楽スタイルだと思っています。なので、パワー・ポップなことをやっていきたい気持ちが今もある。でも義男と浩一にそれが当てはまるかと聞かれたら、そうでもないだろうと思えます」
●アイドルバンド、4人組ロックバンドなどいろいろ言われてきたと思います。バンドの特徴を言葉で的確に表現するのは難しいですね。特にグッバイはメンバー4人の個性、さまざまな曲調があるなど要素が豊富です。
曾我 「そうですね。最近のバンドはリードヴォーカル1人と他のメンバーで構成、というのが多いはずです。でもグッバイはシングル曲は大体義男と僕がメインでやって、アルバムは初期のころからメンバーそれぞれがリードヴォーカルをとるスタイルでした。そんな風にいろんなカラーがあるから、グッバイというバンドは面白いんじゃないかと思うんです。コンサートのセットリスト考える時はいつも、まず義男がメインで歌っている曲、次に僕がメインで歌っている曲を選ぶ流れで作っています。コンサートもCDも誰かひとりに偏らないように、バランスを大切にしたいです」
●80年代はグッバイのことをアイドルとして見ていた方たちが、後になって楽曲を聴いたり自作曲が多いと情報を知ったりすることで、驚きと同時に実力派だと認めるパターンが多いように感じます。そういう状況はどう受け止めていますか?
曾我 「よっぽどのことがない限り、自分が好きなアーティスト以外のライヴには行きませんよね。もし行くとしたら、例えば誰かに連れられて行く、付き合いで行くとかだと思います。そもそも僕らの音楽は所属事務所の関係で聞く耳を持たない人も多く、届くわけがなかったです。でも時間が経ち、サブカル好きな方たちがグッバイを話題にしてくれたことがありました。サブカルとしてグッバイを聞くと、面白みがあったりするんですよね。きっかけは何でもいいですが、どこかでグッバイの音楽に触れて興味を持ってもらえることがあればうれしいです。イラストレーター・漫画家の本秀康(もと・ひでやす)くんはグッバイを好きでいてくれて、応援してもらっています」
●本秀康さんプロデュースで去年、℃-want you!が「ペパーミント・パティTelephone」をカバーしましたね。女子ヴォーカル、そして7インチレコードでのリリースで新鮮でした。
曾我 「はい。そうやってカバーしていただいたことで初めて耳にした方もいるでしょうし、音楽は何がきっかけになって触れるのか広がるのか、本当に分からないんですよ。僕もラジオで流れている曲を聞いて、いいなと思ったらもう一回聞いてみたりCDを買ったりします。昔はレコードショップに行ってジャケ買いしたり、店内でかかっている曲が気になってレコードやCDを買ったりとか。そうやって音楽に触れるシーンが多かったけれど、今は少なくなりましたよね。なので僕たちの曲にたどり着いてもらうのは、難しいかもしれません。でも僕たちは、楽しみながらやりたい音楽を続けるだけ。これから触れてくれる人たちに向けて、ということは一切考えていませんよ」
ライヴも作品も最善を尽くすだけ
●最近曾我さんのライヴに来る方は、グッバイ時代から知っている人が多いですか? ソロから入った人もそろそろ増えてきたころですか?
曾我 「グッバイの曲になじみがあるみたい。昔グッバイを聞いていて、結婚や育児であまり音楽に触れずに過ごし、ひと段落した後にホームページやYouTubeなどで僕の最近の活動を知ったという方が多いです。そして久しぶりにライヴに参加して、続けて来てくれる方が増えてきています。ライヴ会場に来る度にソロCDを1枚ずつ買って、聞き込んでまた来てくださる方も多いと聞いています」
●人それぞれ、曾我さんのファンもそれぞれですね。
曾我 「そう思います。それぞれのきっかけで僕の音楽に触れてくれている中、僕にとって1回ずつのライヴが勝負という気持ちです」
●毎回のライヴが大切だと、曾我さんよくおっしゃいますね。そして2019年に「Special ThanX」、2023年に「Oldies But Good Buy! Vol.Ⅲ」をリリースしましたから、新作2つをきっかけにグッバイを知る人も増えてほしいです。
曾我 「きっかけはやっぱりいろいろでしょうね。僕はいい音楽を聴くと誰かに話したくなりますが、そういう方は多いと思うんですよ。グッバイの曲を聴くのは、そんな風に誰かの影響や勧められてというのが、一番近いんじゃないかな~と思ったりします」
●「Special ThanX」と「Oldies But Good Buy! Vol.Ⅲ」は、時代に合わせて今っぽくしよう、新しいテイストでいこうなど考えたりしませんでした?
曾我 「全く考えませんでした。音楽業界の流れにどうのこうのではなく、今この曲をこういう風にしたいという気持ちのまま単純にやっただけ。今の自分たちにできる最善のやり方でやっていこう、という思いしかありませんでした」
●そういうことを教えていただくと、本当にいいアルバムだと改めて感じます。
曾我 「ありがとうございます。『Oldies But Good Buy! Vol.Ⅲ』を必死になってレコーディングしていたのが、ちょうど一年くらい前ですよ」
奇跡のバンドの関わりはアドバイザーから
●40周年も終わりに近付き、グッバイのエピソードをお聞きしたいです。デビューコンサートとされているのが1983年7月25日、場所はよみうりランド オープンシアターイースト。覚えていたりしますか?
曾我 「そうでした。オリジナル曲が少ない中でやったことは、なんとなく覚えています。義男のデビューアルバム『待たせてSorry』から数曲披露しました」
●野村義男さんのバンドデビューにあたって、曾我さんは最初のころはアドバイザーのような関わりでしたね。それが自分は中心メンバーになっていると、理解や納得したのはいつくらいでしたか?
曾我 「始まってしまったら2~3カ月に1回のシングル・リリースのローテーションが待っていて、アルバムも年間2枚くらいのペースで作っていました。とにかく必死で曲作りをしていたので、気付いてみたら目の前のことに一生懸命。なので分からない、というのが本当のところです」
●いつの間にかツインボーカル、ツインギターになっていったんですね。そして加賀さんと衛藤さんを外部から呼んでメンバーにしたことも特別ですし、奇跡のバンドですね。
曾我 「まさにそうですね。この4人じゃなくて、事務所の中である程度楽器ができる子をメンバーにしていたら、こうなっていないでしょうね。ぱっつぁんの個性、浩一の個性があってグッバイというバンドになりました」
●演奏でき、歌える4人が結成40周年を迎えました。考えるほど奇跡にあふれています。
曾我 「義男がメインボーカルで3人がバックメンバーではなく、全員が同じ立ち位置でリードボーカルもとって、ということを最初からやっていたので本当に奇跡的だと思えます。ぱっつぁんがいないことだけが寂しく感じます」
●本当に寂しいですね、加賀さんが亡くなったのは30周年を迎える直前、2013年7月でした。それからいろいろあったと感じます。加賀さんのこと、ニューアルバムをまさかの30年ぶりにリリースしたことなど、30周年から考えるとすごい11年でしたね。8月の40周年ファイナルコンサート、見逃せません!
曾我 「30周年から思い出すと、本当にいろいろありました。40周年のファイナルが終わった後、グッバイのスケジュールは何も決まっていませんし、年齢的なこともありいつまで一緒に音楽を続けていけるか分かりません。明日のことは誰にも分からない、という意味でね。次は45周年、そして50周年かなと思ってはいますが、まず40周年の締めくくりは集大成になるコンサートにしたいです。開催できるだけでもありがたいですから」
●グッバイの集大成、楽しみですし去年以上に盛り上がりたいです。
曾我 「会場に来たら、何も考えないでただただ楽しんでいただきたいです。去年を上回るコンサートをやらないと負け、という気持ちで僕は取り組みます」
POPでROCKなアルバムをリリース
●9月8日からはキーボーディスト・野津永恒さんを迎え、すべてグッバイ曲で構成したライヴツアー<ALL「The Good-Bye」SONGS>を開催。8月のグッバイ・コンサートでできなかった曲を披露しますか?
曾我 「そういう曲もあるでしょうね。9月はグッバイのデビュー月なので、去年に続いてやってみたいと思い計画しました。今年は野津くんとやるので、幅広い曲を披露できるはず。ソロで歌ってみたいグッバイ曲を集めて、みなさんが8月に聞きたかった曲を聞いてもらうことができればと思っています」
●7月〜8月3日まで「POP&ROCK LIVE TOUR ~ SUMMER 2024」を開催ですね。
曾我 「はい。『POP&ROCK』をテーマにしたCDも作っていて、POP&ROCKのライヴツアー中にみなさんに届けたいと思っています。聴いていたら踊りだしたくなるような、楽しさがギュッとつまったCDです」
●派手なサウンドでしょうね。
曾我 「めちゃめちゃ派手です。新曲を1曲、過去の7曲はアレンジを変えて収録しました。すごくよくできた作品だと満足しています。かなり音数が多くていろいろな音があり、おもちゃ箱をひっくり返したようなカラフルなサウンドを作り上げましたよ」
●ライヴで聴くのとは違いますか?
曾我 「ギターもコーラスも結構な多重で、ライヴよりもさらにいろんな要素がつまっています。ライヴ同様打ち込みは大坪正さんにお願いして、ギターとコーラスワークは自分でやりました」
●ツアーが続き、配信ライヴもファンクラブ・イベントもよく開催していますし本当に忙しいですね! 忙しい方がテンション上がって元気になりますか?
曾我 「はい、まさにそうです。忙しいといえば結構忙しいのかも!?」
●忙しいですよ。その中で気を付けていることはありますか?
曾我 「基本的には何も変わらずですが、インプットする時間を作りたいです。気がつくと見たかった映画が上映終了になっていたりするので。行きたいと思った時に行かないと『あれ!? あっという間に終わっちゃってる』ってなりますね。バランスを取るために、映画を見たりコンサートに行ったりしてインプットしたいです」
●「POP&ROCK LIVE」「The Good-Bye Concert」と続きますが、最後にメッセージをお願いします。
曾我 「ライヴやコンサートは、行ってみたいという気持ちが強くないと行かないもの。なので実際に来ていただくまでに、高いハードルがあると思っています。それでも来ていただけたら絶対に、予想以上に楽しいと思っていただける内容を提供します。試しにぜひお越しください」
LIVE INFORMATION
The Good-Bye Concert Tour 2024 ~ 40th Anniversary Year Final~
2024年8月18日(日) 会場:東京・人見記念講堂/問合せ:ネクストロード 03-5114-7444
2024年8月22日(木) 会場:名古屋・ダイアモンドホール/問合せ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
2024年8月23日(金) 会場:大阪・なんばhatch/問合せ:サウンドクリエーター 06-6357-4400
【プレイガイド】
チケットぴあ> https://t.pia.jp
ローソンチケット> https://l-tike.com
イープラス> https://eplus.jp
曾我泰久 LIVE TOUR ~ ALL「The Good-Bye」SONGS
2024年 9月8日(日) 会場:東京・原宿 La Donna (ラドンナ) http://www.la-donna.jp/
2024年 9月13日(金) 会場:横浜・Yokohama mint hall https://minthall.com/
2024年 9月15日(日) 会場:千葉・新鎌ヶ谷 MT Milly's http://www.hmcorp.co.jp/mtmillys/
2024年 9月22日(日) 会場:名古屋・新栄シャングリラ https://shan-gri-la.jp/nagoya/
2024年 9月23日(月・祝) 会場:大阪・心斎橋JANUS http://www.arm-live.com/janus/
RELEASE INFORMATION
曾我泰久『POP&ROCK』
2024年7月リリース。新曲「10 Years After」を含むポップでカラフルな8曲を収録!
<収録曲>TIME/約束の場所で/僕の月面計画/愛を育てよう/21st Century/流されて/UP BEAT/10 Years After
【全8曲収録/価格3,000円(税込)/YS-013】
※ライヴ会場、「公式オンラインショップ」(http://excel-ace.shop-pro.jp)で販売中
掲載日:2024年8月15日