優しくて儚げ、独特の透き通った歌声を持つミュージシャンYeYe(ィエィエ)が、7月に3枚目のアルバム『ひと』をRallye Labelよりリリースした。京都を拠点に活動している彼女は2011年に1stアルバム『朝を開けだして、夜をとじるまで』をリリース、歌や楽曲はもちろん全ての楽器を一人で演奏した完全セルフ・プロデュース作品であったことも話題となり、インディーズシーンで一躍名を広めたミュージシャンだ。さらに収録曲「morning」が、α-STATION、ラジオ関西、FM三重など各局のパワープレイを獲得したほか、翌年にはCDショップ大賞でニューブラッド賞を受賞するなど、その名も全国に広まっていった。
話題となった1stアルバムは早々に完売したらしく今ではプレミアの値段がつくほどの人気となっている(配信で買えるのでご心配なく)。筆者も下北沢モナレコードの店員さんや空気公団ファン、ギターポップファンの知人から彼女の名前を聞かされていて、知人から音を聴かせてもらったときにその個性あるポップセンスに驚き、すぐにCDを買いに行ったのを思い出した。2013年の空気公団との対バンイベントはじめ何度かライヴも見ており、実は自分のイベントPOPS Paradeでも常に候補に挙げているミュージシャンの一人だったりする(企画の都合で未だ実現に至っていないが・・・)。
その後2013年に2ndアルバム『HUE CIRCLE』をリリース、古川本舗や後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の楽曲にゲストヴォーカルで参加したほか、キューピー「アヲハタ ジャム」、日本郵政など数々のCMへの出演や楽曲提供、各地の音楽フェスでもYeYeの名を聞くようになった。今年も20周年アニバーサリーを迎えるフジロックフェスティバルへの出演が決まっている。
そのほか2014年にはリトアニアの音楽フェスに招待されたものの、サポートメンバー分の旅費が出なかったために「YeYeバンドをリトアニアにつれてって!」というクラウド(群衆)ファンディングライヴを企画したり、インディーズミュージシャンとしては珍しくLINEスタンプを作って販売したりと、前例にとらわれず自由に音楽活動をしている点も面白い。
そんな彼女が3年ぶりに発表したアルバム『ひと』。詳しくは本文で触れているが、今回のアルバムはサウンドからビジュアルまでYeYeのイメージを一新、新境地を提示した作品となっていることもあり、 本インタヴューでは新作はもちろんのこと、これまでの音楽活動に関するスタンスや考え方まで幅広く伺った。デビューしてから5年目を迎えるYeYeプロジェクト、これからも私たちの耳を楽しませてくれそうだ。
インタヴュー・文 黒須 誠
企画・構成 編集部
作品情報
YeYe 3rdアルバム『ひと』
発売日:2016年7月13日
形態:[CD]
レーベル:Rallye Label
品番:RYECD265
価格:2,500円+税
収録曲:
1. a girl runs
2. Broke Your Phone
3. close your eyes
4. ねじれる
5. のぼる、ながめる(album ver.)
6. very bad nights make you strong
7. Veronika
8. ate a lemon
9. ほし と にし
2016年7月22日(金)
「FUJI ROCK FESTIVAL ‘16」
会場:新潟・湯沢 新潟県湯沢町苗場スキー場(Gypsy Avalon STAGE)
2016年7月30日(土)・31日(日)
「布博 in 東京 vol.7 」
場所:東京・町田 パリオ
YeYe 出演時間:7/30(土)16:00〜16:40 /7/31(日)13:00〜13:40
2016年7月31日(日)
「ひと」発売記念 トークショー&ミニライブ ※Sold out
場所:東京・下北沢mona records トークゲスト:ショコラ&アキト
2016年8月12日(金)
「ひと」リリースライブ インストアライヴ
場所:大阪・枚方 蔦屋書店 4F イベントスペース
2016年8月14日(日)
「ひと」リリース インストアライブ
場所:東京・新宿 タワーレコード新宿店7F イベントスペース
2016年8月14日(日)
「YeYe 3rd new album ”ひと”、その前に」
〜 1st / 2nd アルバムからしかやりませんワンマン 〜
場所:東京・六本木Varit
──新作『ひと』のリリースおめでとうございます。まずは今のお気持ちをお聞かせください。
YeYe 「ありがとうございます。意識してないとリリースから3年も経ってしまう怖さを身に沁みて感じました。でもこのアルバムはこのタイミングだからこそできたものだと思っています」
──前作『HUE CIRCLE』から3年もの月日が流れました。どんなことを考えながら音楽活動をされていましたか?
YeYe 「YeYeでの活動以外にCMなどの楽曲提供やGotch(後藤正文)さんソロワークのコーラスサポートなど、いろんなことを経験させてもらいましたが、それら全てがメインであるYeYeの活動に大きな影響を与えてくれたと思っています。また、YeYeを“シンガーソングライター” ではなく、ひとつの”プロジェクト”として見せるために、必死でした。いろんな編成でライヴをやったり」
──アルバムタイトル『ひと』にはどんな意味がこめられているのでしょうか? 英語詞の曲が多い中で、タイトルが日本語だったのも少し気になったんですよ。
YeYe 「たしかに…でも英語詞ばかりというのもあまり意識していませんでした。英語でできた歌は英語、日本語でできた歌は日本語、くらいの気持ちでした。今回のアルバムは全編通して初めて YeYeの主要メンバーである田中成道(TANAKA OF THE HAMADA)、浜田淳(Lainy J Groove / TANAKA OF THE HAMADA)、senoo ricky(LLama) の3人とレコーディングしたというのがとても大きな意味を占めているんですよ。今までの作品をふりかえると、初作はすべてセルフプロデュースで、セカンドアルバムも半分以上は一人だったんです。今回、やっと“人”と演奏する温度感をより濃く出せたアルバムになったなあと思い、“ひと”というタイトルを命名したんです。それから、今回の作品は歌以外ほぼ一発録音、さらにその録音もなるべく1テイク目を採用、というルールを元に、現代のテクノロジーをなるべく駆使せずにレコーディングしたんです。(デジタルツールなどで)整えられたアルバムが全てじゃない、と前々から感じていて、とにかく生々しさを追求しました。“ひと”にはそういう意味も込められています」
──そのゲストミュージシャンを迎えて作られた理由について、もう少し詳しく教えてくれませんか?
YeYe 「基本的には1stアルバムリリースパーティーの時からメンバーは変わっていません。実はゲストミュージシャンやサポートミュージシャンという言葉がずっとしっくりこなかったんですよ。ほんと家族のように集まったメンバーで、みんなYeYeのファミリーメンバーなんです。YeYeはYeYeなんですけど、バンドでもないし、シンガーソングライターでもないし・・・。会社で例えるならばYeYeという名前の会社で全員がそれぞれの部門の社長みたいなイメージです(笑)。わしはそのYeYeという会社を作るきっかけになっただけに過ぎなくて、なんていうか、もうみんな一緒です」
──収録曲はいつごろ作られたんですか?
YeYe 「[ねじれる]なんかは3年以上前の曲だったりといろいろあるんですけどね。実はこの2年もの間、ソロ弾き語りでのライヴを無しにして、すべてバンドスタイルでライヴする、と決めて活動してきたんですよ。だから収録曲も4人のライヴで叩き上げてきた曲ばかりなんです。基本的に、アレンジは一旦3人に丸投げでお願いして、それから意見を伝えていくやり方で作業に入ったんです。そもそもわしはこの3人のミュージシャンをとても尊敬しているんですよ。自分にはない引き出しをたくさん持っているので。彼らのアレンジは洗練されているのに、全然尖っていないしかっこつけてもなくて、肩の力がふわっと抜けているんです。その上で芯がずぶずぶに図太いアレンジをいつも提案してくれるんですよね。もともと私は3人の兄に影響されて音楽を始めましたが、今やこの3人に多大な影響を受けていると言っても過言ではありません」
──レコーディングはどこで行われたのですか? その際のエピソードなどもありましたら。
YeYe 「今回のレコーディングは主に山梨県の小淵沢の『星と虹レコーディングスタジオ』で行いました。スタジオと寝るところとキッチンなどがすべて一つの場所にある一軒家です。お兄ちゃんや友達まで遊びに来たりして、まるで外国のようなレコーディング風景でなんかすごかったです。レコーディングが終わってからも下のキッチンに降りて、みんなでピアノやギターを弾いたり、ボードゲームをしたり・・・。どこにオンオフがあるのかわからないくらい。でもそれがTeam YeYeらしさを作っていて、このアルバムにコンパイルされているんだと思います」
──アートワークは小池アミイゴさんに依頼されたそうですね。ジャケットがこれまでの写真からイラストへと大きく様変わりしています。
YeYe 「今回、顔を出さないことは決めていました。小池アミイゴさんにお願いした経緯は、アミイゴさんとはもともとイラストレーターとしての出会いではなく、ライヴ会場のPAさんとしての出会いでした。今までPAを初対面でお願いした中で、一番YeYeの音楽を理解してくださったのが小池アミイゴさんだったのです。自分が内に秘めている部分をドカンと見抜いてくださった。そのときにもう小池アミイゴさんしかいないと思いました」
──アー写も一新されて、イエローを基調としYeYeさん自身を前面に押し出したものになりました。
YeYe 「ほんとは顔も黄色に塗りたくって、オカレモンのおしゃれな感じをイメージしたんですが、それはなんとなく流れて(笑)このように至りました。ほんとはもっと尖ったアー写のイメージだったんですが、そこはRallye社長の冷静な判断、これで正解だったと思います」