──前作までのアルバムは日本語中心でしたが、今作では半分以上が英語詞になっています。
YeYe 「これは特に意識はしていませんでした。英語でできたので、英語で書いただけですね」
──英語はお得意ですか?
YeYe 「高校生の時に1年間ニュージーランドに留学していて、英語は中学生の時から一生懸命勉強していました。今は当時ほどのスキルはないですが、会話程度はできます。常日頃から海外ドラマを見て発音のニュアンスや表現の言い回しなどを観察して、歌の参考にもしています。特に、ジャド・アパトー(Judd Apatow)プロデュースの『GIRLS』は、エンディングでかかる音楽が毎回センスのよいものばかりなので、曲が流れるたびにShazamアプリでなんの曲か検索しています。それで新しい音楽を知ることができますしね」
──英語で詞を書くときと日本語で書くときで何か違いはありますか? YeYeさんは詞を発音した際の響き、余韻を特に大切にされている印象が強くそれが作品にも表れているので。
YeYe 「確かに言われてみると余韻を大切にしているような気がします。最近はやめたんですが、昔はレコーディングの度にエンジニアさんに嫌がられるくらいヘッドフォンの自分の声をガンガンに上げてレコーディングしていたんですよ。自分にしかわからないニュアンスの正解があったからなんです。多分外側から聞いたら全部キーが一緒やし、同じに聞こえるんでしょうけどね。自分の中の正解がいつも明確にあります」
──あと曲名では、ひらがなとアルファベットを多用されていますよね。漢字を使っているのは1stアルバムの「言う」と2ndの「あるある言いたい」「明日は来ないか」くらいなのですが、何か理由はありますか? 特にひらがなを多く使われているのはYeYeさんの特長でもあるので、こだわりがあるのかなと思いました。
YeYe 「特に意識はしていなかったですが、たしかに。。。ひらがなを使うことで間口を広くしているのかもしれないです」
──「のぼる、ながめる」のように風景描写の中で人間の心情を表すような詞がある一方、「close your eyes」や「Broke Your Phone」のように、衝動にかられてある種の感情を爆発させているような詞もあり、自由に色々なことを書かれる方だと感じました。詞の題材はどこで見つけられていますか?
YeYe 「自分のことだったり、映画のことだったり、日常のことだったり、様々です。 [のぼる、ながめる] に関してはもともと写真家の濱田英明さんの写真集特典への書き下ろし楽曲でした。最近は自分から物事を切り離して考えることが多いかもしれません。特に日本語詞は」
──「Veronika」、この曲は珍しくリトアニア語で書かれています。
YeYe 「2年前にバルト三国のひとつであるリトアニアにライヴ招待されて、そのときにずっと現地コーディネーターとしてお世話してくれたのが、ベロニカという女の子でした。リトアニア滞在中はスーパースターになったくらいのスケジューリングで毎日寝不足だったんですが、彼女もそれに毎回付いてきてくれて。一緒にいるうちにほんとうにみんな仲良くなったんですよ。曲のフレーズはリトアニアで写真撮影しているときに突然浮かんできたメロディでした。彼女にも伝えたいと思い、リトアニア語で歌っています」
──なるほど、わかりました。また“言葉”について普段思うことがあれば教えてください。
YeYe 「ずっと苦手なものです。こうしてインタヴューに答えるのも苦手やし、なんていうか、うまい言葉が見つからないことが多くて。もっと本を読まないといけないなと思います。やっぱり読書家の人たちは、言葉がとっても鮮やかで、素敵です」
──小さい頃はどんなお子さんでしたか?
YeYe 「とにかく兄がやっていることを全部やりたい子どもで、(兄弟では)女ひとりだったのもあって、負けず嫌いだったと思います。あんまり自覚はないですが、母にはかなりマイペースだったとよく言われていました」
──初めて買ったCDや初ライヴは誰でしょうか? またどんな音楽を聴かれていましたか?
YeYe 「初めて買ったCDはポケットビスケッツの[イエローイエローハッピー]、初ライヴは大阪のバナナホールで観たANATAKIKOU(あなたきこう)でした。聴いていた音楽は、ANATAKIKOU、空気公団、advantage Lucy(アドバンテージ・ルーシー)、ベル・アンド・セバスチャン、BOaT(ボート)、倉橋ヨエコ、パパス・フリータス(Papas Fritas)など・・・。2番目の兄のCDをよく借りて聴きまくっていました」
──よく聴いていたラジオ番組やTV番組、音楽雑誌などはありますか?
YeYe 「うちはど田舎で当時radiko(ラジコ)もなかった時代なので、ラジオはひとつも入りませんでした。入っててもすごくザーザー言ってて聞ける環境ではなかったんですよ。TV番組は今もそうですが、お笑いが大好きで、『吉本超合金』あとの『大阪フジワラリゾート』や、MBSの『?マジっすか!』、それから『探偵ナイトスクープ』、『明石家電視台』、『大阪ほんわかテレビ』など、親に怒られながらずーっと夜中までお笑い番組を見ていて、小学生の時からすでに寝不足でした」
──YeYeさんはたくさんの楽器を演奏されますよね。楽器はいつごろから?
YeYe 「楽器に触れたのは、小学校低学年ごろにはじめたピアノでしたが、楽譜を見て演奏するというのが性に合わず、すぐ辞めました。小学校5年生くらいから兄の真似をしてギターを始めて、それから中学にあがると兄が電子ドラムを購入したので、それでウィーザー(Weezer)の[Buddy Holly]を教えてもらったり。ベースはあるとき兄3人とスタジオに入ってセッションすることがあったんですが、弾いたこともないのに“お前はこれを聴いてベース耳コピしてこい”と言われたのがきっかけで始めました」
──いつごろから音楽家を志すようになったんですか?
YeYe 「“よし! 何がなんでも音楽やってやる!”という感じでもなくて、気がついたら音楽を生業にしていました。本当に“ひと”に恵まれていると思います。もともとは高校生の時に友人と組んでいたバンドで、10代のバンドコンテストに出たことがきっかけで。それまでは人前で自分の曲を演奏なんてしたことなかったんですが、結構な数の中からファイナリストに選ばれてびっくりして。そこで初めて自分の曲を評価された嬉しさが自信につながって、この道を選んだように思います。それから、高校生の時の恩師であるアメリカ人の先生に、卒業間際に“Do what you love, love what you do”“passion +1 foreign language”という言葉をもらって、この時にふと自分の中のパッションが歌う事だな、というのは気がついていたんですが、なんのコネクションもなかったので、誰にも言わずにいたんです。コンテストでの評価を経て、決心する際の先生の言葉の後押しは大きかったです」
──ルーツとなる音楽やリスペクトしているアーティストについて教えてください。音楽性だけでなく生き様など何でも結構です。
YeYe 「前述したファイスト、それからアーランド・オイエ(Erlend Oye)、空気公団、この3組のミュージシャンからはとても影響を受けていて、大尊敬しています。ファイストは力強さの中にちゃんと女性のしなやかさがあって、でも女性だからといって妥協していない、だからって威張っていない、彼女の内側から出るセクシーさは圧巻です。とにかく一言で、“かっこいい”と言えるんです。アーランド・オイエに関しては、楽曲のセンスもさることながら、メロディセンスがとにかく凄いです。いつどうやって曲を作っているんだろうと気になるくらい、色んなプロジェクトをしていて、その活動スタイルにも憧れがあります。空気公団は好きすぎて会いたくないくらいの存在だったんですが、ラッキーなことに一緒に共演させていただく機会があり、そのあとも自身の企画にも出演してくださったり・・・。。どこで演奏しても歌っても空気公団、コンスタントなリリースを続けるそのスタンス、そしてツアー公演場所が“東京、京都、台湾” というそのシンプルさ、かといってタイミングを逃さないリリースプロモーションの手際のよさなど、すべてに尊敬の念を抱いています。YeYe自身はRallye Labelに所属していますが、半分はセルフマネージメントでいろんなことを動かしていて、空気公団のそのスタイルは見習いたいと思うことばかりです」
──今の時代音楽家を目指すというのは、決して楽な道ではないわけですが今になって思うことがあれば。
YeYe 「小学生のころから週休2日のルーティンに決められた生活が自分に向いていないと思っていました。大人になってから自由ではあるけど大変な音楽の世界を無意識に選んだことは、最初から間違っていなかったんだなと今になって思います。浮き沈みは激しいのですが、それでもきちんと肌でお客さんのレスポンスを感じることのできる音楽家の仕事に、とてもやりがいを感じています」
──YeYeさんはデビューされてから着実に音楽キャリアを積まれています。作品が話題を呼び、あちこちのメディアで取り上げられていますし、企業CMやタイアップの話も同世代のインディーズミュージシャンと比べても多いと思うのですが、何故そんなことができているのでしょうか?
YeYe 「本当に何も意識していなくて、とにかく人に恵まれていると思います。もしかしたら昔から母に口すっぱく言われてきた“人に感謝しなさい” は今になって生きているような気がします。意図したことはなにもないですが、周りからみたら危うい決断だとしても、自分の決断とタイミングをすべて信じて選択してきたように思います。音楽をはじめたこともそうやし、レーベルを移籍したことも。そういう小さな積み重ねが今につながっているような気もします。正直に生きてます」
──音楽を通してYeYeさんが伝えたいことはありますか?
YeYe 「伝えたいことは今のところ何もないんですよ。 基本的にはほんとうにクローズドなんです。でもそれが曲を聴いてくださるそれぞれの捉え方で広がっていたら、うれしいです」
──ちなみにYeYeさんはもともと本名の橋口なつこさんで活動されていましたが、途中でYeYeに改名されて今にいたりますよね。改名したかった理由は何だったのでしょうか?
YeYe 「ひとつのプロジェクトとして見られたかったからです。本名だとどうしてもシンガーソングライターにカテゴライズされてしまっていたので。あるときはソロで、あるときはバンド、あるときは9人編成のホーンセクション、コーラスありき、あるときはコーラスとギターだけなど・・・最終的にはすごい大所帯での演奏もしてみたいと思っています」
──10年後どんなミュージシャンになっていたいですか?
YeYe 「今はまだ色んなことに精一杯で余裕がないので、スペースのあるミュージシャンになりたいです。それからかっこいいお母さんミュージシャンにもなっていたいです」
──3rdアルバムも完成しました。今後の目標などあれば。
YeYe 「今回のアルバムリリースを特別なことと捉えないで、日本にとどまらず、もっともっと海外でライヴしたいです」
──ありがとうございました。
作品情報
YeYe 3rdアルバム『ひと』
発売日:2016年7月13日
形態:[CD]
レーベル:Rallye Label
品番:RYECD265
価格:2,500円+税
収録曲:
1. a girl runs
2. Broke Your Phone
3. close your eyes
4. ねじれる
5. のぼる、ながめる(album ver.)
6. very bad nights make you strong
7. Veronika
8. ate a lemon
9. ほし と にし
2016年7月22日(金)
「FUJI ROCK FESTIVAL ‘16」
会場:新潟・湯沢 新潟県湯沢町苗場スキー場(Gypsy Avalon STAGE)
2016年7月30日(土)・31日(日)
「布博 in 東京 vol.7 」
場所:東京・町田 パリオ
YeYe 出演時間:7/30(土)16:00〜16:40 /7/31(日)13:00〜13:40
2016年7月31日(日)
「ひと」発売記念 トークショー&ミニライブ ※Sold out
場所:東京・下北沢mona records トークゲスト:ショコラ&アキト
2016年8月12日(金)
「ひと」リリースライブ インストアライヴ
場所:大阪・枚方 蔦屋書店 4F イベントスペース
2016年8月14日(日)
「ひと」リリース インストアライブ
場所:東京・新宿 タワーレコード新宿店7F イベントスペース
2016年8月14日(日)
「YeYe 3rd new album ”ひと”、その前に」
〜 1st / 2nd アルバムからしかやりませんワンマン 〜
場所:東京・六本木Varit
掲載日:2016年7月22日