ドラム10台を擁するDQS(DRUMS QUICK SERVICE)が、5月15日に待望のデヴュー・アルバム『10 Drummers vs EARTH』をリリースした。DQSは2010年2月8日に初ライブをした後、瞬く間にファンを獲得、デビュー7ヶ月あまりで2daysワンマンを敢行するなど何かとその活動が話題を集めてきたモンスター・バンドである。その彼らが初アルバムをリリース後、初の遠征ライヴまで行うということを聞いた。そこで編集部ではDQSのリーダーである溝渕ケンイチロウ氏に、DQSの初となる作品へのこだわりをはじめ、これまでの活動についても振り返るインタヴューを行った。インタヴューを通じて彼らの心意気を感じるとともにぜひ京都や下北沢で行われるライヴに足を運んでもらえたらこんなに嬉しいことはない。なお特集最後にはDQSと縁の深いアーティストらによる応援コメントも紹介しているので、そちらも忘れずにお読みいただければ幸いである。
取材・文 黒須 誠/編集部
協力/下北沢mona records
ワンマン目前!DQSの副リーダー高橋浩司へのショート・インタヴューもぜひお読みください。
コチラから。
──デビュー・アルバムながらCDとDVDの2枚組みでペーパー・クラフトのダウンロードもできるなど、大変こだわりのあるパッケージだと感じました。と同時に楽曲からはとても10台とは思えない、シンプルに構成、作り上げられた作品だとも。
溝渕ケンイチロウ(Dr/Vo) 「前々から音源は作りたいと思っていたんだよね。それは俺だけではなくて、DQSのメンバーでLookHearRecordsのレーベル・オーナーでもある高橋浩司や下北沢CLUB Queの店長でDQSを結成当時から見守ってくれている二位さんもね。ただ、どのようなものを作ればいいのかわからなかったんだよね。音だけだと“どうなんだ?”というね。DQSはやはり映像あってのものじゃない? ライヴに来たことあるからわかると思うけど」
──ライヴの凄まじい緊張感、空気感を伝えたかったということでしょうか?
溝渕 「そう、やっぱりルックスありきだから(笑)。“音だけを聴いたら10台もあるとは思えない!”、と話していたけど、そういうことだよね」
──確かに。
溝渕 「そうなるとライヴDVDをリリースするのか? という話になる。当初その話もあったんだけどね。レコード店に行くとわかるけどCD売場ですら衰退してきている中で、DVDコーナーはさらに縮小されているんだよ。ライヴDVDにするとそちらのコーナーに置かれるからね。俺たちとしては多くのリスナーの手に渡って欲しいからさ・・・それでCDをメインでやらないと駄目だってなったわけ。とはいえ最初はみんながよくやるようなCDのケースに2,3曲収録したライヴDVDを一緒に封入して「DVD特典付き」という、つまり映像を「付録としてつけよう」とスタートしたんだ。でも作品を撮り進めていくうちにいい感じになってきたから、レーベルの判断もあって、CDとDVDの2枚組みにすることになったのよ」
──しかしメンバーが10人もいると制作を進めるのが大変だったのではないでしょうか?
溝渕 「作品にどの楽曲を入れてどういう録り方をするのかは相当悩んだね。1台ずつ録って10台重ねていくという手法はミックスが大変だし、そもそも10台重ねてレコーディングしたところで、聴いてもそれほど効果ないんじゃないか? と経験上思ったのね。それであれば全員の一発録りができないのかと思ったんだけど、みんな忙しくて10人をもう一回どこかで集めて録音するのは難しかったんだよね。そこで何かしらの形で全員が作品に参加するというスタイルにしたんだ。「RESCUE」は近藤智洋(GHEEE/ex.PEALOUT)にゲスト参加してもらっているんだけど、ドラムについては新しく参加したメンバーのハゼ (UNUS / ex.PICK2HAND)、比田井 修 (ex.School Food Punishment)、おかもとなおこ (つばき / THE GIRL)と北野愛子 (your gold, my pink)の4人にお願いをした。新メンバーにはあと2人、ハギー(ソレカラ)と森信行 (ex.くるり)がいるんだけど、彼らには映像作品に参加してもらった。元からいる4人のドラマーがこれらに加わることで全員が参加できたんだ」
──DVDのお話をお伺いしたいのですが、最初の4トラックはライヴ映像ですよね?
溝渕 「そう、だけど1曲目の「Parallel」だけは ミュージック・ビデオ扱いなんだ。この前のワンマンライヴの日に下北沢CLUB Queでね。リハが終わってから会場オープン前までの1時間くらいで撮ったんだよ。無観客ライヴと言ったらわかりやすいかな?」
──6トラック目には「wanted (10drums setting movie)」が収録されています。
溝渕 「これはみんなが興味ありそうなことを映像で伝えたかったんだよ。ドラム10台と聞いたとき、どのようにセッティングをしているのか?、どんな陣形をしているのか?、というのは気になると思うんだよね。この「wanted」は下北沢CLUB Queのステージに搬入するときの映像。カメラを定点で置いて10台のドラムが次々とできあがるまでの様子を早送りしたやつなの。昨年11月のワンマンライヴの際に撮影したんだけど、これは本当に面白いよ。ファンが喜んでくれそうなことを考えて提示しているつもりなんだ」
──二位店長制作のショート・ムービーもありますよね(笑)。
溝渕 「二位さんはライヴハウスの店長でもありながら怒髪天の増子直純主演の映画「Colors of Life」の監督でもあるんだよ。そこでこのアルバムのためにロケまで行ってDQSを撮ってくれたんだ。俺らは役者の経験はないのだけれども(笑)、二位監督の言うとおり、役者になりきって撮ったからね。これも楽しみにして欲しいな」
──続いて新作について1曲目の「RESCUE」がスタジオ録音で残りがライヴ盤だと聞きましたが?
溝渕 「そう、「RESCUE」は代々木Zher the Zooで録音して、残りの3曲はライヴ音源なんだ。そのうち2曲「Next 9」と「Stroke」はYANA(ZEPPET STORE)君がミックスしている。ドラマーがミックスをするのがいいと思ったんだよね。またLookHearRecordsというレーベルは色々な人とやるというコンセプトがあるからね。俺はドラマーだしミックスもできるんだけど、俺がやると関わる人が一人減っちゃうから今回はそこには参加しなかったんだ。みんなそれぞれ人脈もあるから、そこからの広がりにも期待しているしね」
──「RESCUE」についてもう少し詳しく教えていただけますか?
溝渕 「ドラムは4人で一発録りをしたね。でも実はドラムのアレンジが完成してメンバーにデモ曲を送れたのは前日だったのよ。それをあの4人はたった1日で仕上げてきてくれたからね。なおこは前日大阪でライヴだったのに夜行バスで帰ってきてそのまま直行で翌い11時にZooに来てくれたし、修やハゼも全部譜面を書いてきた。愛子も含めてたった1日でよく体に入れてきたなと感心したよ。またその日はヴォーカルの近藤君とギターの野口徹平 (Hi-5)君の録音もした。ベースのひらっち(平田博信/Swinging Popsicle)だけは都合が合わなかったから彼が自宅で録ったものを後で重ねたんだよ」