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それこそ世界征服でもないけど、アブストラクトなことを歌うのが今のDQSの結論

──そもそもDQSの楽曲はどのように作られているのでしょうか?

 

溝渕 「これもやってみなければわからなかったことなんだけどね。実はアコースティック・ギターを一人で弾き語るところからはじめているんだ。ただ普通に作ると歌いたくなっちゃうからさ(笑)、そこの部分は殺して作っている点が違うくらいかな。DQSもスタートはギターの弾き語りからなんだよ(笑)。そしてデモを作るときはドラムを1パターンか2パターン位しか入れていないしね。またドラム・パターンを打ち込んでデモができたら一度冷静に聞くようにしている。それをハジが叩いていると想像する、高橋君が叩いていると想像する・・・といったようにそのパターンをメンバーが叩いている様子に置き換えて“これでいけるな!“と思ったものをデモとして出している。逆に今回はお休みしている山崎の場合はリズムをたくさん構築していくタイプだからメンバーでもアプローチが違うよね」

 

──その後はスタジオで詰められているのですか?

 

溝渕 「そう、実際にやってみることで気づくことが多いからね。ブルー・インパルスじゃないけどさ(笑)、5台の飛行機が一列になったり、広がったり、そういう感覚を大事にしているというか。3つの編隊が一緒になっている感じだね(笑)

 

──今回のアルバムには歌ものが2曲入っていますが詞は?

 

溝渕 「「RESCUE」の歌詞は近藤君におまかせしているんだよ。PEALOUTの時からあの人のメッセージの強さ、熱い魂があることもわかっているからね。「Understand」は俺が書いたんだけど、DQSの詞の世界はいつも悩むんだよ。あんまりミニマムなことも言えないんだよね、スケールがでかいから。だから世界規模のことを言うか、少し抽象的なことを言うか、ものすごくちっちゃいことを思いっきり歌うか極端なんだよね(笑)」

 

──歌詞にご自身の体験や思い出などは?

 

溝渕 「ないね。弾き語りで自分のことを歌うときは悩まないんだけどさ。体験談を入れると俺の歌になってしまうからね(笑)。それこそ世界征服でもないけど、そういうアブストラクトなことを歌うのがDQSでの結論だね」

 

 

アルバムではDQSの多用な側面を表現したかった。

──ライヴ盤の楽曲についても教えてください。

 

溝渕 「昨年11月のワンマンライヴの音源だね。ただライヴ音源では「Understand」の歌声が聞こえなかったから(笑)、ヴォーカルだけ後から録り直したんだ」

 

──実は収録曲を見たときに「The circle of the rhythms」が入っていないことに違和感を覚えました。何故ならあの曲がDQSの真髄を表現していると思っていましたので。

 

溝渕 「アルバムではDQSの多様な側面を表現したかったんだよね。でもドラム10台が鳴り響く地響きのような爆音なのかよくわからない感じとか(笑)、ライヴではお馴染みの「The circle of the rhythms」、肉体の限界を越えるやけっぱちのあの曲の凄さについては、それらをCDやDVDにしても伝わらないからね。あれはライヴに来て楽しんでもらう、体全身で浴びてもらうものとしてとっておいたんだよ。その上で色々な楽曲の種類をパッケージしたほうがキャッチーだと思ったんだ。歌ものを入れたのもそういうわけ」

 

──確かに「The circle of the rhythms」はスポ根みたいなところがありますしね(笑)。毎回ライヴ最後の曲ではケンイチロウさんがその場の様子を見ながら締めを決めるじゃないですか?メンバーもいつまで叩き続ければいいのか、見ている方もドキドキするあの感覚が大事なのかなと。

 

溝渕 「そう、だからこそライヴじゃないと伝わらないと思ったんだよね。あとあの曲は長いからね(笑)。もしCDに収録したら3曲になっていたと思うしね。DQSはキャッチーで決してマニアックじゃないところを狙っているからこそ、あえてCDには入れなかったというのもあるね」

 

──キャッチー、確かにその通りだと思います。だからこそ歌ものが入っているのだと思いますが、今回「RESCUE」を聴いたときに自分の中で驚きを覚えたんです。ドラムが4台というイメージからは想像できないほど綺麗にまとまっているじゃないですか?ドラムだけではなくギターやベースもシンプルに。いわゆるドラムの騒音も皆無でした。

 

溝渕 「そうだね、ミックスのバランスとしては歌を大事にしながらドラムを少し大きめにしているんだけどね。手にしたリスナーには、ヘッドフォンでもいいんだけど、できればステレオで近所迷惑にならない範囲で限界まで大きくして聴いて欲しい。松井敬治(the primrose)さんのミックスが凄まじくかっこよくて、あの人しかできない曲になっているんだよね。この曲のミックスはやる人がやるともっとオルタナティヴなものになってしまう。でも松井さんの攻め方、根底に流れるブリティッシュの80’s感がこの曲を絶妙なスポットに持ってきてくれたんだよ」

 

──ライヴ盤のミックスについても伺っていいですか?

 

溝渕 「ライヴミックスは難しかったと思う。ドラム10台あるけど、それぞれの音をいったん2チャンネルにまとめあげてからプロ・ツールズに出したからね。2チャンネルで10台のドラムをミックスするのは大変だったと思うよ。ただギター、ベース、シンセはそれぞれ1チャンネルあったから(笑)、それぞれのフレーズが聞こえやすくなるように仕上げたんだ。一方「Understand」に関しては他の2曲に比べて音像を広げない方向でひらっちと相談してミックスした。また80’sのハワード・ ジョーンズとかデュラン・デュランっぽいシンセ感が大好きだからキーボードの堀越和子(GOMES THE HITMAN)にもそれに近い音色をリクエストしたし。それでシンセをちょっと大きめに出したり、楽曲の感じも80‘sを意識したりね。そういう意味で80年代前半のニューロマンティックのムーヴメントじゃないけど「Romantic Live Version」いうミックス名にしたりね(笑)。俺は80’sが大好きなんだよ」

 

 

              

 

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