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第2回石田ショーキチ presents デビュー20周年特別企画 “FURTHER ALONG 20th anniversary TALK”!!

石田ショーキチによるリ・ミックスについての基礎講座が終わったところで、いよいよ試聴タイムスタート! ゲストに『FURTHER ALONG』の20年前のアルバムをプロデュースした藤井丈司さん、そして当時高校生、現役リスナーとしてアルバムを聴いていたキンモクセイの佐々木良さんをお迎えし、そして編集者で、Witsフリークでもある黒須誠を加え、楽曲を徹底解説しました。音源を聴きながら、解説をお楽しみください。

1曲目「Life is Spiral~ライフ・イズ・スパイラル」


石田 「1ラウンド目なので、リスナーの方に先制パンチ食らさないといけない、とガツっとぶん殴りにいったミックス」

「Life is Spiral」試聴!! 左から石田ショーキチ、ゲストの藤井丈司さん、佐々木良さん
「Life is Spiral」試聴!! 左から石田ショーキチ、ゲストの藤井丈司さん、佐々木良さん

藤井丈司 「パッと聴いてどこが違うかわからなかった! 俺でさえも(笑)」

 

石田 「そうでしょうね。わかりやすいところでいうと、エンディングはリ・ミックスのほとんどの曲で変わってるんですよ」

 

藤井 「エンディングが違うだけなの? 他は一緒なの?」

 

石田 「そんなことはないんですけどね(笑)」

 

あず 「慣れているリスナーの耳からすると、わかりやすいところだと、ギロの音が小さくなっていますよね。ギロチョチョ、ギロチョチョ・・・っていうあの音が。あとベースの音が大きくなったと思います。よくこういう会場で音を流すときにはメリハリある音を出すために低音をミキサーで足すことが多いんですけど、今回はきちんと試聴するために、低音全く足していないんです。だけど、これだけの低音が鳴っているんですよ」

 

石田 「この曲で大変だったのは、48個のチャンネルのうち、1チャンネルが読めなくなっていたんです。元が物理的なテープじゃないですか? で、テープって素材の特性で端っこからダメになって、両端からクシャクシャになっていくんですよ。その端っこが1チャンネルと25チャンネルなんです、48チャンネルある中の。テープ4本あったんですけど全ての曲の1チャンネルと25チャンネルがつぶれていたんですね」

 

あず 「全部ですか!?」

 

石田  「そう、全部。全テープ。で、この「LIFE IS SPIRAL」に関しては1チャンネルにオンマイクのバスドラムが入っていたんです。大体バスドラムはレコーディングするときに、バスドラムの手前につっこんだ所にオンマイクというマイクを一本と、ちょっと離したところにオフマイクっていうマイクを、計2本立てるんですけど、そのうち重要な方のオンマイクの音が無くなっていました。一番「ドン!」と芯になる音が無くなっていたという残念な状態でしたね。それをどう修復したというのがあるんですけど・・・オフマイクの音から、バスドラムの音を取り出したんです」

 

あず 「そんなことができるんですか!」

 

石田 「はい。(機材をいじりながら)オフマイクで録ったドラムの音から、バスドラムの音だけが残るように、ゲート(注4)という機械で他の音を切っているんですよね。80ヘルツぐらいの音が入ったときだけこのマイクが開くという回路を組んでそれにまたイコライザ(注5)を当てて補正しているんですね。これで大分、音が近くなったでしょ? ただ、まだ、バスドラム以外の音が反響してバウバウいっているから、この音をしめるために、最後にコンプレッサー(注6)をかけて、音圧を上げるんです」

 

あず 「専門用語が多くて会場の皆さんに伝わりづらいかもしれませんが・・・要は、ドラム全体を録った音からバスドラム以外の音を消して、バスドラムの音を際立たせる作業をしているということですね。(補正した後のドラムの音を聴きながら)確かに、バスドラムの音が聞こえています! こうやって、なくなったものを修復したわけですね。まるで古代の遺跡から何かを復元するかのような」

 

 

(注4)【ゲート】 鳴っている音から指定した周波数以外の音をカットするのに使われる。ここでは、バスドラム以外の音の周波数帯を削って、バスドラムの音を浮かび上がらせるという作業を行っている。

(注5)【イコライザ】 ここでは、バスドラムの音の周波数帯を増幅させるのに使っている。

(注6)【コンプレッサー】 入力したシグナルの比率を調整をすることで、入力した音の強弱を平坦にするエフェクターの一種。ここでは、バスドラムの音圧を上げるために使っている。

実際のリ・ミックスで使われたレコーディングソフトの画面。
実際のリ・ミックスで使われたレコーディングソフトの画面。

藤井 「歌や歌詞がちゃんと聞こえて、世界観が伝わるってところがこのリ・ミックス盤のいいところ・・・これだけ覚えて帰ってください!」

佐々木良 「聴いていて思ったんですけど、頭のS.E.が長くなっていますか?」

 

石田 「長くはなっていないですね。ただあれ、もともとのオリジナル盤は、エコーがものすごく強いんですね。それを抑えめにしました」

 

藤井 「あのイントロのシンセの音は、20年前に、僕が作ったんです。ピコピコピコとはじまるやつね。アメリカのカートゥーン番組っぽい音が入ってから、ギターがジャカジャーンって始まるっていう・・・近未来のテレビが始まるみたいな感じをイメージしたんです。僕は、布袋寅泰さんのアルバム『GUITARHYTHM(ギタリズム)』のプロデュースもやっているんですけど、そのアルバムではストリングスから始まるんです。やっぱりテレビ番組風に。それがもっとポップに始まったらスパイラル・ライフっていいんじゃないかな、と当時35歳の僕は考えて作りました」

 

黒須誠 「このリ・ミックスを事前に聴かせていただいたときに、僕はイントロでゾクゾクっときたんです。何かというと、イントロのS.E.に入っているサンプリングされた声がはっきりくっきり聞こえるようになっているんですね。段々ヴォリュームが上がっていって、ギターがジャーンって入ったときの音がすごくメリハリが出ていて、くっきりとパンチのある音に仕上がっていますよね」

 

石田 「まさにですね。1ラウンド目なので、先制パンチ食らわさないと・・・やっぱりリスナーの方を一発目で打ちのめさないといけない、と。そういった音を意識して、ガツっとデカくぶん殴りにいったミックスです(笑)。あとどの曲もそうですけど、今回のリ・ミックスでは、歌に関するエコー、リバーヴ系を全部薄くしています。当時はそういう時代だったから、もっと強めのエコーがついていたので」

 

藤井 「それで全体的に聴きやすいし、キラキラしだしたんだよね、今回のリ・ミックス盤は。そこがいいんですよ。歌がしっかり聞こえて、歌詞がちゃんと聞こえて、世界観が伝わるってところがこの20周年アニバーサリーモデル・・・リ・ミックス盤のいいところなので、これだけ覚えて帰ってください。あとは蛇足ですから (笑)」

イベントでは、東京カルチャーカルチャーから石田氏に「アニバーサリー炒飯」がふるまわれた
イベントでは、東京カルチャーカルチャーから石田氏に「アニバーサリー炒飯」がふるまわれた

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