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第2回石田ショーキチ presents デビュー20周年特別企画 “FURTHER ALONG 20th anniversary TALK”!!

3曲目「ANOTHER DAY,ANOTHER NIGHT」~アナザー・デイ,アナザー・ナイト

 

石田 「クルが“俺は過去にこだわらない男だから、石田君好きにやってくれたまえ”と(笑)」

「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」試聴! 左は司会の河原あずさん
「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」試聴! 左は司会の河原あずさん

石田  「この曲は、苦労しました。25トラックが、車谷君のギター・ソロのOKテイクだったんです。それが無くなっていたんですよね。これによってギター・ソロがまるっと失われてしまっていました。先ほども話した、テープの経年変化による事故ですね。それで車谷君に連絡をとって・・・」

 

あず 「そういえば、このアルバムのリ・ミックスにあたって、車谷さんには連絡をしたんですか?」

 

石田 「はい。この仕事を始めるにあたって一緒にやらないかという話をしたんですけど、”俺は過去にこだわらない男だから石田君好きにやってくれたまえ”と。“ま、君のことだからまかせておけばいいものを作ってくれるとは思うので、好きにやってくれたまえ”といった感じで(笑)」

 

あず 「車谷さんの模範解答のような答えですね(笑)」

 

石田  「そうそう、それで、この曲に関しても、ギター・ソロ無いんだけどもう1回弾かない? ってメールしたんですけど、いやあ、もういいじゃん、って言うわけです。じゃあ俺が弾くけどなるべく君が弾いたのと同じように弾くから、といったら、いやいやいやもうどうせだから今の君の感覚で弾きなよ、っていう返事がきて・・・もう、とことんどうでもいいやって感じでしたね(笑)。こんな感じで、彼とは、直接電話はせずに、メールでずっとやりとりしてました」

 

あず 「ひょっとしたら車谷さんじゃない人が返事をしていたりして(笑)」

 

石田 「可能性ありますね(笑)。で、僕がギターを弾きなおしたというわけなんです。他にももう1つサビの後ろに流れているギターのフレーズがあって、そのギター・フレーズもところどころ音が欠落していたんですよ。ただフレーズの後ろ側は残っていたので、そこをコピーして前の部分に貼り付けてやったんです。それと曲の最後に自分が弾いたソロがあって・・・ほぼ一晩ギターを弾いていましたね。これがそのギター・ソロなんですけど・・・(ギター・ソロのパートを流す)基本的にはクルそっくりに弾こうと思って」

 

藤井 「二人ともこういうハードなギター・ソロってうまいんですよ」

 

石田 「でもこの当時は彼のソロに勝てなくて・・・敗れたんですよ、すごくうまくてね、彼」

 

藤井 「やっぱり、車谷はBAKUで鍛えられていたからね」

 

石田 「僕がソロを弾いたテイクもあったと思うんですけど、このテープには残っていなかったんですよ。残念ながら。もともと前の年に山中湖でデモを録ったときの、そのテイクに上書きするかたちでレコーディングが進んだので、録って消して録って消してが何回も行われて磁性体がボロボロになってこういう事態になっているんですよね。それでこのテープの痛みが一番ひどかったんですよ。一番修復に苦労した曲のひとつです」

 

藤井 「しかしほんといい曲ですよね、この曲は。音が消えた瞬間に会場のみんなが一斉に拍手したのは、この曲の良さに拍手したんだと思いますよ!」

 

石田  「ありがとうございます。あと、俺としてはドラムが一番バキっとできたかなと思っていて。特にエンディングのフロアタムがドンスコンスコ、ドンスコンスコというところとか。タムって、 ドラムってテンポラリーなビートを刻んでいる時って多少スネアやキックが聞こえなくなっても全体の流れの中でリズムが鳴っていることも想像できるし、あまりそこはこだわらなくてもいいと思っているんですよ。だけどオカズ(注9)が入るところってドラマーがすごく主張しているところだから、ギターでいうとソロみたいなものじゃないですか? そういうフレーズは絶対に強く出さなきゃいけないといつも思っていて。ことさらフロアタムとかは一番ドラマーが主張するところだから強く出したいと思ったんですよね」

 

あず 「石田さんと藤井さんのお二人にお伺いしたいんですけど、この曲がファースト・シングルで切られた経緯とかあったんですか?」

 

藤井 「次の「RASPBERRY BELLE」にしようか「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」にしようかものすごい迷ったんですよ。わりと「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」は当時の、スパイラルみたいな新しいロック・バンドの形態としてはちょっと普通すぎるかなっていうのと、あとキーが高くて車谷も石田も歌が苦しそうっていう、それがライヴでできるかなあというのが心配事としてあったんです。次の「RASPBERRY BELLE」は聴いてもらえばわかるけど、いい曲なんだけど、静かだから地味かなあというのもあって、でもみんなの思い入れの強い曲だったし・・・けど、曲の派手さ、良さをとって 「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」にしたんですよ」

 

あず 「なるほど」

 

藤井 「でもわりと俺はまだずっと後をひいて・・・終わったあともやっぱりシングルどっちがよかったかなあ? と悩んでいたんですよ。でもある日、発売された後にコンビニに入ったら、この曲が流れてたんです。最初、“あれ、この曲なんだろう”と思ったんだけど、あ、そうか俺がやったスパイラル・ライフの曲だ!って思い出してね。それがすごく良くて。その後ライヴでも聴いてみて、ライヴ映えもしてたし、シングルとしての華があるなって。やっぱこの曲が良かったんだなって思って(笑)」

 

(注9)【オカズ】 ドラムにおけるフィルインのこと。フィルインとは、小節のつなぎめの小節で、即興的に演奏を差し込むこと。多くはドラマーに一任されるため、ドラマーの個性が出る。『FURTHER ALONG』のドラムの「オカズ」を聴くと、60年代、70年代ロックのドラムのフィルインが連想されて、マニアなリスナーはニヤっとでき、まさに「美味しいオカズ」。

藤井氏と石田氏によるレコーディング・エピソードが会を盛り上げた。
藤井氏と石田氏によるレコーディング・エピソードが会を盛り上げた。

石田 「クルが詞を書いて、彼が歌って、よかったなと思います」

佐々木 「この「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」はショーキチさんのソロパートがあるじゃないですか? スパイラル・ライフは二人組のバンドで、ダブル・ヴォーカルであることが印象づけとして良かったんじゃないかと」

 

石田  「これには複雑な経緯があって、もともと、この曲はアマチュアの頃から僕がやっていた曲で、当時自分が歌っていた曲なんですよ。元々、スパイラル・ライフっていうのを作るときに、BAKUというバンドのギタリストがBAKUを解散させて新しいバンドを作るからお前やらないか? って誘われたんです。それでてっきりヴォーカルで誘われたと思ったんですよ。僕ヴォーカルだったし、ギターの人がバンド解散させて新しいバンド作るって聞いてたので。何より、クルを始め周りのスタッフが、特にこの「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」で僕を採用してくれたところがあったんですね・・・ところが行ってみたら僕がヴォーカルじゃないってことが、レコーディング直前でわかって(笑)。けど、92年11月のデモ・テープレコーディングでクルが歌ってみたところキーが高すぎて大サビ(注10)が全然歌えなかったんですよ。それで結局、じゃあしょうがないから僕が歌うってことになったんですよ」

 

佐々木 「でもあそこでショーキチさんが出てくるっていう衝撃はやっぱりありましたね」

 

石田 「なんか運命めいたものですよね。じゃあ俺が全編歌って良かったのかというとああいうことにはならなかったし」

 

藤井 「そうなんだ・・・じゃあ全然ツイン・ヴォーカルっていうアイデアじゃなかったんだ? いや、わりとサイモン&ガーファンクルとか、狩人とか、そういう男二人ですごい綺麗にハモってみたいなことを考えると「RASPBERRY BELLE」の方が一発目のシングルとしては存在感がわかりやすいのかなとか、色々当時は考えたんだけどさ」

 

黒須 「お話を伺って思ったんですけど、石田さんがアマチュアから始めた曲に、結果的に自分でちゃんと歌って参加したことに、実は意義があったんじゃないかなと」

 

石田 「そうですね、結果論的にそれでよかったなって。あとね、当時自分が考えていた詞がね、また今聞くとひどいんですよ。だからクルが詞を書いて、彼が歌ってよかったなと思います」

 

藤井 「石田君の当時の歌詞が実はボーナス・トラックに入ってたりしたら面白いんだけどね(笑)。今度ライヴで、石田の歌詞のオリジナル・テイクの「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」やろうよ」

 

石田 「ない! ないないないないない(笑)」

 

 

(注10)【大サビ】 Cメロとも呼ばれる。Aメロ→Bメロ→サビというのがポップスの典型のメロディパターンだが、曲の間に違うパターンのメロディを出して、曲の展開にアクセントをつけるのに使われる。「ANOTHER DAY, ANOTHER NIGHT」では「あざ笑うキング ジョーカー~」からはじまる石田氏パートが、「RASPBERRY BELLE」では「ほら見て凍る言葉の海で~」ではじまるメロディが「大サビ」にあたる。ちなみに石田氏は、スピッツのアルバム「ハヤブサ」をプロデュースをした際に、既にシングルリリースされていた「メモリーズ」の大サビを作曲し、草野マサムネ氏も喜んでそれを採用したという実績を持つ。 

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