シンガーソングライターの黒沢健一がデビュー24年目にして初のセルフ・カヴァー・ベストアルバム『LIFETIME BEST"BEST VALUE"』をこの1月にリリースした。91年にL⇔Rでデビュー以後、ミリオンセラーとなったヒットシングル「Knockin' on your door」をはじめ、多数の作品を世に送り出してきた黒沢。97年の活動休止以後も、ソロとして5枚のオリジナルアルバムをリリースしたほか、ライヴ盤やDVDなど多数の作品を発表、CURVE509 や MOTORWORKS といったバンド活動も並行させながら、コンスタントにミュージシャンとしてのキャリアを積み重ねてきた。
MAROON5などのプロデューサーとしても知られるエリック・ロッセ(以下エリック)を迎えて制作された本作品は、黒沢が愛してやまない洋楽、とりわけアメリカン・ポップスへの憧れと尊敬の念を胸に、自分の作品がどのように生まれ変わるのか、黒沢自身が楽しみながら作ったアルバムとなっている。ヴォーカリストとして挑み、エリックに任せることで生まれたサウンドは、いわゆるJ-POPに多く見られた音圧重視、足し算型のサウンドとは違った、ミニマム・シンプルな作品に仕上がっている。
ポリスター、ポニーキャニオン、そして現在のプライベート・レーベルでのソロ活動と、24年の音楽キャリアを網羅して新たに作られたオール・タイム・ベストは、これまでに作られた「編集盤」のベスト盤とは違う、2015年の黒沢健一を知る上で欠かせない一枚となっていることは言うまでもない。
インタヴュー・文 黒須 誠
撮影 山崎ゆり
取材協力/24th Floor Records
2015年3月6日(金)
会場:福岡DRUM Be-1 open 18:30 start 19:00
料金:全自由 6,500円 (税込・整理番号付・入場時ドリンク代別途必要)
2015年3月7日(土)
会場:広島Live Juke open 17:30 start 18:00
料金:全自由 6,500円(税込・整理番号付・入場時ドリンク代別途必要)
2015年3月14日(土)
会場:名古屋Electric Lady Land open 16:30 start 17:00
料金:全自由 6,500円(税込・整理番号付・入場時ドリンク代別途必要)
2015年3月15日(日)
会場:梅田CLUB QUATTRO open 15:30 start 16:00
料金:全自由 6,500円(税込・整理番号付・入場時ドリンク代別途必要)
2015年3月27日(金)
会場:赤坂BLITZ open 18:00 start 19:00
料金:全席指定 6,500円 (税込・入場時ドリンク代別途必要)
──今回の作品名は『LIFETIME BEST "BEST VALUE"』とその名の通りのベスト盤ですが、これまでにリリースした『Singles&More』などのベスト盤が、ピックアップして集められた「編集盤」であったのに対し、本作品はセルフカヴァーによる「再録盤」であるのが特長です。「再録盤」はキャリア初とお聞きしましたが?
黒沢健一(Vo/G) 「そうです。「再録盤」は初めてですね。今まで再録したことがなかったので」
──今回ベスト盤を出すことになったきっかけは何だったのですか?
黒沢 「2年くらい前に、それこそ前作の『Banding Together in Dreams』を作っている最中に、今の事務所に移ってスタッフも変わって新しい環境の中になったんです。そこでスタッフからキャリアも長いからL⇔R時代からのセルフカヴァーをやってみたらどう? という話があったんですよ。その時は面白いかもしれないなあと思ったんだけど、ただ自分でプロデュースするのは嫌だったんですよね。要するに昔の作品というのはその時に納得して出しているから、もういっぺん自分でセルフカヴァーをバンドとかでやるのはどうかと……例えばアカペラでやり直すとか、ストリングスで録り直すんだったらできると思ったんだけど、セルフカヴァーでやるとなると、結局俺がオリジナルを作っているし、それを気に入っているから、(やり直しても)ほとんど同じものになってしまうので、それは面白くないなと。だから自分でプロデュースするセルフカヴァーアルバムは止めようと。それで自分でも楽しめるものにしたいなと思ったんです。そこでスタッフから、”それだったらアメリカに行って、アメリカ人プロデューサーにやってもらったら面白いよね”という話が出てきたんです。”そりゃできたら楽しいですよね”と、そこから話が始まったんです」
──事務所の変わったことがひとつのきっかけだったと。よく10周年記念など活動の節目でベスト盤を出す方が多いのですが、そういうわけではなかったんですね。
黒沢 「事務所変わってアルバム出すことになったし、それでアメリカ行ってやれたら楽しそうだから、というそんな理由です(笑)」
──海外レコーディングは確か初めてではなかったと思いますが?
黒沢 「そうですね、L⇔R時代から何度もやっていますし、それこそ今回と同じロスでもやっています。ただ今まで海外でレコーディングしたときは、結局プロデューサーが自分で、向こうのエンジニアなりミュージシャンと一緒に作って海外でレコーディングをしていたんですけど、今回は基本的にプロデューサーに任せるというやり方だったので、そこは大きく違いましたね」
──今回エリックさんにお願いすることになった経緯というのは?
黒沢 「人づての紹介なんですよ。アメリカのプロデューサーで自分のカヴァーを面白そうにやってくれる人がいないかと探したんです。その中の候補の一人にブルース・ワトソンという現フォリナーのギタリストがいて、ブルース自身がプロデューサーだから彼に頼めないかなという話が出たんです。ところがブルースはフォリナーのツアーで年間数百本ものライヴをやっていて、彼からはすごくやりたいんだけど時間がなくてできないという話があった。それでブルースが僕の音楽を聴いた上で代わりのプロデューサー候補を何人か紹介してくれたんです。その中の一人にエリック・ロッセがいて、エリックだったらいいなと思って決まったんです」