──僕は「SHOOTING THROUGH THE BLUE」のギターリフの鳴きメロが最高だと思いました。
黒沢 「そうそう、普通にいいね! というのが何故か出てくるんです。そこに理由はないし、最高! という(笑)。日本だと何テイクも重ねて…といったように時間がかかるんですよ。自分で細かく色々と考えたことは何だったんだ? というね。言い訳じゃないけど自分がコツコツとセルフプロデュースで作ってきたサウンドも愛しているんだけど、今回エリックと一緒に作ったアルバムで、自分が好きなアメリカのロックサウンドがどういうものなのか、自分の作品で教えられた気がしましたね。今日のインタヴューでメインで言いたいことはこれですね、やっぱりホンモノだったという(笑)」
──事前にアメリカレコーディングの話を聞いていたので今日はこれを、L⇔Rの『LAND OF RICHES』を持ってきたんですよ。
黒沢 「これもアメリカで作ったんですよね」
──当時との違いなどあれば?
黒沢 「何よりも時代が違うよね。いやほんと、当時のロスのロックンロールのサウンドはちょっとエレクトリックというか打ち込みなどが入っているサウンドだったけど今はまた違うし」
──冒頭でも少しお話ありましたが、セルフカヴァーを出すにあたって自分の中でそれを否定するような思いというのはありませんでしたか? 作品としては個々に一度完結しているわけなので、新たに再録までして作品を出すとなると余程の意義が見出せないと難しいのではないかと思ったものですから。
黒沢 「これはもしかしたら年齢的なものなのかもしれませんね。不思議な感じなんですよ。10年位前だったら違ったと思うんですけどね。セルフカヴァー出せるだけの曲が揃っているというのは長く書いてきたからだと思うし、それを人に任せて、しかもアメリカでレコーディングできるなんて有難い話で感謝しかないですね。難しい話を抜きにして、アメリカのプロデューサーで自分の昔書いた楽曲がどうなってくるのか、とにかく楽しみましたね。そういった経験ができたことが一番大きかったかな」
──てっきりセルフカヴァーなどは出されない方だと思っていたんですよ。デビューして23年もやられていて、それまで一回も出されていなかったですし。
黒沢 「ああ、でも自分でプロデュースするっていったらやらないと思う。それだったら再録よりもリマスター盤を作ると思うよ。ミュージシャンも全部同じにしてアレンジも同じにしちゃうんじゃないかな(笑)。かといって日本人の知っているプロデューサーに頼む気にもならなかっただろうし。アメリカでエリックでというのがあったからですね。ジョージさん始めスタッフのおかげで…やれたら面白いだろうなと思ってやってみたら…できましたね(笑)」
──印象に残っている出来事などありますか?
黒沢 「うーん制作過程全てが印象的だけど、自分がずっと今まで好きだった音楽の国の人に音楽を作ってもらえることがやっぱりすごく面白いですよね。あと、改めて思ったことなんだけど、日本にいて、特に男性って理論的に考えたりするじゃないですか? 構築する作業が多いしね。特にミュージシャンなんて洋楽に対する憧れが強いから、どうやったらこういうサウンドができるんだろうか? という謎解きをモチベーションにやり続けてきたところが結構あるんですね。ギターの凄いフレーズがあってどうやって弾くんだろう? と、日本で一生懸命練習しても弾けなくて、アメリカに行って見てみたら、ただ単に手がデカい! とかさ(笑)。歌でもどうやったらこんな声で、こんな音圧でできるんだろうっていう疑問があって。あるときプロデューサーの友達と3人でスタジオ借りて、マイクを何本か変えたり、コンプレッサーなどあちこちいじったりして、お金をかけてやったんですよ。何度も歌い直したり録り直したりして、これだったら似ているかな? というものを作って。それで向こう行ったらさ、スタジオ汚いし、ただ声デカくてただ歌が上手いだけだったりして、一生懸命考えたのが馬鹿みたいじゃん(笑)、という。そんな衝撃が外国に行くとよくあって、今回も似たような感じでしたよ。日本でレコーディングしていると、ついついそういうことを忘れちゃうんですよね」