──今回二枚目を作るにあたって考えたことはありますか?
原田 「前作を超えなきゃいけない、ていう気持ちはありますね。今回はどうしようか本当に悩んだんですよね。お客さんもみんなサタデーサタデー(Saturday night to Sunday morning のこと)と言ってくれていたので、あれを超えなきゃいけないんだなと思って。それでCDを出してくれるウルトラ・ヴァイヴの社長に相談をしたんです。そうしたら『ディスコな感じがいいんじゃない。アコギの弾き語りのような感じでは前の曲を超えられないんじゃないか?』というアドバイスをもらって。そんなこともあって前作から少し雰囲気を変えてみたんですよ」
池田 「曲調が変わっているので、色々な意見が出てくるんだろうなとは思うんです。でもあまり気にしないで、しげゆき君の好きなようにやったらいいんじゃないかと話してました」
──新作もBPM早めで、それこそクラブでもかかっていそうなパーティーチューンが多いとは思いました。あとシンセ音源がこれでもかと詰め込まれていてびっくりしました(笑)。思い切って変えましたね。
原田 「シンセは今回本当にたくさん使いましたね。今回はほとんど打ち込みで作ったので。反対にファーストアルバムは生録音にこだわったので、打ち込みはほとんど使っていなくて、サタデーのシンセブラスくらいですね」
池田 「アルバムを作るときにライヴハウスとクラブ、両方でかけてもらえるような感じがいいよね、という話をしていたんです。だからリミックスとかどんどんしてもらいたいし、クラブでもガンガン流れてほしいなと思って。今回iTunesでも配信するんですけど、iTunesではディスク1、ディスク2の2枚組になっているんです。ディスク1はCDと同じなんですけど、ディスク2はヴォーカルだけ、BGMだけといったリミックス用素材として出しているので、使ってもらえたらいいなと。それでどんどん広がってくれたらと思います」
──でもこれだけ打ち込みにふってしまうと、ライヴでの再現が難しくないですか?
池田 「音源作るときは、ライヴでできるできないは考えないで、音源としていいものを作ろう、と話していたんです。それでも最初は再現できるかどうか考えながら作っていたんだけど、途中でもういいや!ってなって(笑)」
──前作とは違って曲名をタイトルにされましたね?
池田 「前作のときは、しげゆき君が大人の人から”若いのにすごく渋い曲を作るよね”って言われていたんですよ。山下達郎さんが好きなところとかが曲に出ていたからだと思うんですけど。あとバンド名を入れたかったんですよ。チャットモンチーが一枚目に『chatmonchy has
come』というアルバムを出していて、文章にすると覚えやすいんじゃないかと思って。それで子供じゃないという意味も込めて『Shiggy Jr. is not a child. 』にしたんです」
原田 「あれはすごくいいタイトルだったよね」
池田 「ほんと?初めて聞いたけど(笑)。そして今回はしげゆき君が作ってきてくれた曲の仮タイトルが[LISTEN TO THE MUSIC]だったんだよね」
原田 「特に意味もなく作っていたら自然と出てきた言葉だったんです。それで今回のアルバムの中でこの歌がいいなと思ったんで、そのままアルバム名になりましたね」
──歌詞についてはいかがですか?
原田 「普段曲を作るときに、何か意図しているものってないんですよ。何気なく思っていることはあると思うんですけど、意図的に何か言いたいことがあるわけじゃないんです」
──偶然なんですけどお二人の世代のミュージシャンは同じことを言うんですよね。実はスカートの澤部さんも吉田ヨウヘイgroupの吉田さんも、ルルルルズのメンバーも、歌詞については似たようなことを話されていたんです。これが一つ上の世代、ロックってもともと世間に対するカウンターみたいなところがあるから、歌詞については意識的なバンドも多かったので。
池田 「今はロックがメインカルチャーになっているじゃないですか?昔みたいにポップスが流行っていて、それに向かっていくという感じでもなくて。それこそ一瞬ポップスはあんまり洗練されていないみたいなイメージもあったと思うんです。けど最近はアイドルブームもあって、みんなポップなものを聴ける環境が整ってきているから、私達のような考えのバンドも受け入れられているんじゃないかとも思うんですよね」
原田 「ポップなことって僕からすると岡村ちゃんみたいなことなんですよね。言葉がメロディにはまる、気持ちいい、歌いやすいといった部分を大事にしたいんですよ」
──お二人が考えるポップなものって何ですか?
原田 「ポップというかキャッチーなものがいいですね。聴いた瞬間わかる!といったことがやりたくて。それこそ[LISTEN TO THE MUSIC ]のサビは聴いてすぐにわかると思うんですよね。より多くの人にひっかかってもらいたいという感じですね」
池田 「どんな人に聴いてもらっても、いいなと思ってもらえるものかな。みんなが好きだと思うものがポップだと思うんです。とにかく自己主張をするというよりは、両思いを目指すというか」
──なるほど、だから原田さんが作る曲はひねりがなくストレートで耳馴染みがいいんですね。
原田 「そうなんです、ひねらないですね(笑)。変にひねろうとは思わないんですよ。素直な歌が好きというか。いじり出したらいくらでもいじれるじゃないですか?そうすると曲作りがとまっちゃうんですよ。ひっかかりを作ってもいいんだけど、そうすると聴いていて”おっ!”っとなるじゃないですか?それよりも自然に流れていってほしいんですよね。あと僕はメロディを作るときに楽器を弾かないんです。いつも鼻歌や口ずさんで作るんですよ。だから自然と口ずさみやすいメロディになっているのかもしれないですね」
──アルバムを聴いたときに口ずさみやすい歌が多いと思いました。 あと転調も多いですよね。
原田 「嬉しいですね。実は僕メロディを作るときは、楽器を弾かないんです。いつも鼻歌や口ずさんで作るんですよ。だから自然と口ずさみやすいメロディになっているのかもしれないですね。あと半音あげるの大好きなんですよ。やっていると気持ちいいので、ついつい入れちゃいますね(笑)」