2014年の夏は吉田ヨウヘイgroupにとって、二度と忘れられないものになったに違いない。今年新たに8人編成となったこのバンドは、2月に吉田ヨウヘイ自らが渋谷CLUB
QUATTROに連絡して会場を予約、その後に「森は生きている」も所属する国内屈指のレーベルP-ヴァインと契約、6月にセカンドアルバム『Smart Citizen』をリリース。その後は新人ながらフジロックフェスティバルを始めいくつかの大型フェスにも出演、そしてレコ発全国ツアーの最終日となる8月28日に、ツアーファイナルを渋谷CLUB QUATTROで大盛況のうちに終えた。まさに東京インディーポップシーンにおいて最も勢いのあるロックバンドである吉田ヨウヘイgroup、今回はリーダーである吉田さんに新作『Smart Citizen』についてお話を伺った。
企画・構成 黒須 誠/編集部
撮影 木目田隆行
※本インタヴューは「Popsicle Clip. Paper+vol.5」に収録された記事を加筆修正したものです。
──いきなりですが、出来上がった作品に点数をつけるとしたら何点ですか?
吉田ヨウヘイ(Vo,G,Sax) 「うーん、すごく自信がある作品なんですけど…60点くらいかな」
──それはできなかったことややり残したことがあったということ?
吉田 「いやこれからの可能性を含めてというか。この『Smart
Citizen』では、今できることは全てやり尽くしたとは思っているんです。でもメンバーの今の状態と今後のことを考えるともっと伸びるんじゃないかと思っていて…。つまり人に聴かせるときに60点だと思っているわけではないんです。今回の作品の大半は僕が作ったんですけど、今後メンバーそれぞれがもっと曲を作ったりアレンジに加わるようになっていくような、理想的なバンド像からするとまだ距離はあるかな、という感じですね。」
──普段はデモをかっちり作ってみんなに聴かせる感じなんですね。ヘッドアレンジでスタジオで一緒につめていくわけではない?
吉田 「現状は前者で、今後は後者の割合を増やしていきたいと思っているんです。自分の気持ちとしては、自分の作っている音楽が自分だからできるというわけではなくて、かっこいいと思っていることがあってそれをみんなと共有できればと。そしてメンバー各々が成長することで、みんながそのかっこいいものを作れるようになるのが理想なんです。自分がデモを作ったとして、メンバーと一緒につめて、それをより高いレベルで返ってくるのが当たり前になるのが理想かなと。自分のものを全部反映させるというより、各自がもっと関わってくるようにしたいんですよ」
──ちょっと話がずれるかもしれないんですが、吉田さんが音楽をやっている理由は?
吉田 「最初は音楽をやっていることが楽しいからやっていたんですよ。理由も考えたんだけど、何でやっているのか自分でもわからなくて好きだからついやっちゃうという感じだったんです。でも社会人になって一度普通に働いてみたときに、どうしても音楽がやりたくなって仕事を辞めて今に至るので…。ついやっちゃうというだけなのかなと。誰かに何かを言いたいわけでもないし、空いている時間があったらつい練習しちゃうといった、そんな感じなんですよ」
──自己表現をしたいといった欲は?
吉田 「特にないですね。”常に新しい音楽を作りたい”というのはありますけどね。自分のことを表現者とも思ってないというか。ミュージシャンと言われたら嬉しいけど、アーティストと言われたらびっくりする、そんな感じですね。アートだと思ってほしいとか、自分の行為がアートだとも思っていなくて単に音楽が好きでやっているという」
──なるほど、じゃあ自意識も特にない?
吉田 「いや、あったのかもしれないんですけど、忘れちゃったというか…(笑)。社会人になって会社員生活をしていたんですけど、会社での生活で自意識を出していい場面てないじゃないですか?僕はそのこと自体は悪いことだと思わなかったんですよ。色んな人がたくさんいて、みんなが自意識出していいわけじゃないから、自意識を出さないことが結構尊いことだと。そういう姿勢は好きだったので、音楽をやることになったから自意識をすごく出すというのも、なんか嫌だなあという気持ちがすごくあるんですよね」
──面白いですね。ヴォーカルをとる人は自意識の強い方が多いので、意外でした。話を聴いているとチーム、バンドが好きなんですか?
吉田 「バンドが好きというよりバンドで作った音楽が好きなんですよ。誰かバンドで好きな人ができたときに、その人がソロをやったりすると、そのソロよりも最初にやっていたバンドが好きなことが多いんです。だから自分もそれをやりたいというのはありますよね」