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吉田ヨウヘイgroup Smart Citizen 発売記念特集

きっかけは音楽ジャーナリストの岡村詩野さん

──このバンドがここまで来たきっかけは、音楽ジャーナリストの岡村詩野さんのコンピレーションに参加されたことだったんですよね?

吉田 「以前フジロックでダーティー・プロジェクターズ を見て感動したときに、ちょうど岡村さんが書いた記事を読んだんです。それで岡村さんという人がいて、自分の好きな音楽についても書いている人なんだなと認識をしたんですよ。もちろん以前から岡村さんの名前は知っていたんですけど、こういう音楽とかをわかってくれるんだなあというのがなんとなく思ってて。それで2年前に仕事を辞める直前の有休のときに岡村さんがラジオのradio kittenでデモテープの募集をちょうど始めたんです。それでこれでラジオでかけてもらいたいなあと思って、そのタイミングが自分の転機と重なったこともあってそれでデモを送ったんです」

──それが採用されてコンピにつながったんですね。

吉田 「そうなんです。その後会社を辞めて数ヶ月した頃に、岡村さんのラジオで自分の曲がかかって。第三者の立場の人に紹介してもらえたのが始めてだったので、心底嬉しかったんですよ。今でもあのとき以上の感動はないかもしれないですね」

──そして活動を本格化されていったわけですね。確か昨年のファーストアルバムリリース後に、フルートの池田若菜さんとファゴットの内藤さんが新たに参加されたんですよね。

吉田 「前のファーストアルバムのときにも結構いいメンバーが集められたんですけど、そのときは他のメンバーがそれぞれ別のバンドもやっていて、その別のバンドからメンバーがそっちのバンドに集中してやってくれと言われていた人もいたりして、それではがっつり活動してうまくいくのは難しいなと思ったんです」

──意外なのはその時に楽器などパートの構成も変えられているじゃないですか? 例えばギターが抜けたらギターを探すといったようにするのが普通かなと。

吉田 「もともとファーストアルバムでもコーラスを2人入れていたんです。ただライヴを考えたときにコーラスだけだと手持ちぶたさになることが多いというか、コーラスを作らなければならなくなるじゃないですか?だからコーラスだけの人だと楽しんでやるのが難しいんじゃないかとも思ったんです。前のメンバーはコーラスがあって楽器も少しといったかたちだったので、次やるときは楽器ができて、コーラスもって形にしたほうがよりバンド感が出るんじゃないかと思って」

──フルートとファゴットはポップスバンドには珍しいですもんね。ヴァイオリンやヴィオラといったストリングスはたまに見かけますけど。

吉田 「ファゴットはほんと偶然で。ただ自分がサックスを吹いているので管楽器を入れることについてはイメージはできていたんです。フルートの若菜さんを誘ったときにもう一人楽器ができる人いないか探していて、それで若菜さんの友達であった内藤さんがファゴットが吹けてコーラスも頑張ってくれるということだったので。・・・でも実はそのときまでファゴットについては、あまりよく知らなかったんですけども(笑)、音色を聴いていいなと思ったんです」

──今のような管楽器も取り入れた音楽に至ったのは?

吉田 「管楽器に興味を持ったのは23、24歳のころですね。ちょうど菊池成孔さんの著書『東京大学のアルバート・アイラー』が発売されてすぐのころだったかな。それを聴いてから大友良英さんの音楽も聴くようになって、”バンドに管楽器を入れたい!”と強く思うようになりました」

──楽器は小さいころから?

吉田 「中学のころからギターを弾いてバンドをやっていましたね。最初は洋楽志向のコピーバンドでディープ・パープルやオアシスなどをやっていました」

──昔から洋楽志向だったんですか?

吉田 「というよりも、中学のころ買ったギター雑誌に洋楽のコード譜がたくさん載っていたから自然と好きになったというか。高校のころにはっぴぃえんどを聴いてから、邦楽も聴くようになりましたね。メジャーどころではウルフルズや奥田民男さんが好きでした。また大学のころはくるりやスーパーカーもよく聴いていました」

──フリージャズ、そしてウーター・ヘメル も好きだと伺いましたが?

吉田 「やっぱり楽譜上にはない音を入れていくところですね。フリージャズだとその辺のものを叩いたりして、音として面白いものを取り入れるところがすごく好きなんですよ。ウーター・ヘメル はバックにスイング・ジャズみたいなアレンジを入れていて、それでかつ歌ものであれだけ広く売れていることが、自分では想像できなかったので…。クラブミュージックの要素が強いバスドラムの上にスイング・ジャズが乗っていて、それが最新のポップスに使えるってことに、可能性があることにびっくりして好きになりました。組み合わせの妙ですよね」

岡田君だったら頼めるなと思ったんです

──森は生きている、の岡田さんと共同プロデュースなんですね。

吉田 「演奏者に関しては音のイメージがバンドだけでは完結しないかなと思ったときに森は生きていると仲良くなったので、彼(岡田君)だったら頼めるなと思ったんです。ROTH BART BARON もそうですね」

──プロデュースまでというのは大きな話だと思うんですが?

吉田 「森は生きているの岡田君とは去年から仲良くなったんですけど、彼のことを天才だと思ったんです。つき合う中で音楽の話もたくさんしていた中で、この人はプロデュースに向く人だなと思って。それと岡田君の話は僕自身素直に聞けるという関係ができていたので、やってもらいたいなと思ったんです。聞こえかたとして新しいものにしたくて、そこが岡田君とも方向性が合ったので。そもそも今回のアルバムは岡田君に見てもらう前に、一度自分でやりきったんですよ。でももっといいものにできないかと、駅伝で例えるならば最後のゴールでもう一度襷を渡してもらって走るといった、イメージですね(笑)。」

──最後の仕上げの部分を一緒に?

吉田 「そうですね。構成はこれ以上変えられないといったところまでは自分でやってしまったので、最後もっとこういう風に音を足したほうがいい、とかこのままだと地味だからこの音をもっと上げた方がいい、といった形でアドバイスをしてもらいながら一緒につめていきました」

──音像についてなんですが、ギターがわりと奥にあってフルートやファゴット、コーラスを表に出していて、バランスも左右にも大きくふっているところなどが、普通のロックバンドのそれとは違って、このバンドが新しく聴こえる妙だと思いました。

吉田 「ミックスエンジニアを立てずに僕自身がミックスを最後までやったので、他のバンドさんとは違うかもしれないですね。普段ライヴをしている中で、管楽器とギターがどうしたら重ならずにうまく聴こえるかを常に考えているので、そのバランスが反映された結果だと思います。あとスフィアン・スティーヴンスが好きなので、ロック的なサウンドで管楽器が入っていてかつコンパクトな感じというのは参考になったのかもしれないですね」

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