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リハーサル中に断片的に聴こえてきた言葉をヒントにして、イメージを膨らませていくんです。(武田)

──それはぜひおひとりずつ伺ってみたいです。


大野 ジョナは聴こえてくる言葉を断片的に掴んでいるんだよね(笑)。


与那覇文子(G) そうそう。なんとなく状況を掴んで、それに合わせたフレーズを考えたりしていますね。


武田 たとえば、wafflesには「木の葉」っていう曲があるんですけど(『one』収録)、あの曲のジョナが弾くオブリのギターは、まさに木の葉が落ちていくイメージなんだよね(笑)。僕もそうやってキーワードをもとに音を探っていくタイプで。それも詞をはじめにもらうんじゃなくて、リハーサル中に断片的に聴こえてきた言葉をヒントにして、イメージを膨らませていくんです。


大野 武田さんはけっこうストーリー派じゃない?


武田 そうだね(笑)。


大野 男子だけあって、人生を歌ったような曲には反応してくれるんだけど、ちょっと乙女チックな曲になると、どんな顔をして弾けばいいかわからないって(笑)。


武田 一度かなり抵抗を示したことがあって(笑)。それが『pool』に入っている「いちじく」っていう曲なんですけど。


大野 あれは女子っぽさ全開だったからね(笑)。


武田 「俺、ライヴでどんな顔しながらこの曲を演奏すればいいんだろ?って、けっこう真面目に悩んじゃって(笑)。

武田真一
武田真一

──そこまで詞に感情移入しようとするプレイヤーも珍しいですよ(笑)。


武田 単純に詞が好きなんでしょうね。だから自然と入り込んじゃう。もちろん、音だけで楽しむものもあるんですけど、やっぱり言葉がわかる邦楽になると、詞の世界に入り込めるものが好きなのかも。で、そういう聴き方を覚えたのは、たぶんこのバンドのみんなと付き合い始めてからだと思う。大学に入ってから、自分の知らない音楽を聴いている人とたくさん出会って、そういうところで受けた影響は大きいですね。中高生の頃はどちらかというと、ギター・キッズだったので。


木村 ミッシェル(・ガン・エレファント)とかね(笑)。


武田 『バンドやろうぜ』とか『GIGS』を読んでね(笑)。だから、ヴィジュアル系もよく聴いてました。でも、自分が音楽をやるようになってからは、詞にも関心がいくようになって。


木村 僕はどっちかというと、たしかにその乙女派というか(笑)。あまりそこには抵抗がなくやってますね。女性の失恋や片想いをうたったものでもなんとなく共感できて (笑)


大野 木村さんは私よりも乙女心がわかるんです(笑)。


木村 いやいや(笑)。詞もそうですけど、曲そのものが持っているイメージは大切にしたいと思ってます。その曲から浮かぶ風景とかをちゃんと演奏で表したいと思ってて。

──総じてみなさん、大野さんの詞を気にかけているようですね。


大野 他のバンドがどうなのかはわからないんですけど、最初の頃にレーベルの社長さんから、「詞についてもっとメンバーで話し合ってみたらいいよ」と言われたことがあって。というのは、そんなことを人から気にされるくらい、私は詞を完全に自分だけの領域としていたからなんです。余裕もなかったし、自分から出てくるものがどういうものかもあまりよくわかってなかった。パッとひらめいたものだから、意図もなにもないし、説明なんてとてもできなかった。それが10年経った今になって、自分が書いた詞のことをメンバーから訊かれて、それをなんとなく私も説明しているっていう(笑)。お客さんにも伝わってほしいっていう気持ちが今はあるから、それがどこまで届いているかどうかはわからないけど、昔ほどわけのわからないものはなくなったんじゃないかな。でもね、初期のそのわけのわからないものを、それはそれで愛おしいんですよね。


与那覇 松本隆さんがラジオで「5.3」の歌詞を絶賛してくれたんだよね。


大野 死ぬほど感激してしまって、それならもう、誰にわけがわからないって言われても平気、と思えましたね(笑)。


武田 それで「わかる人にわかればいい」っていう気持ちに拍車がかかっちゃったんだね(笑)。

与那覇文子
与那覇文子

──でも、それはしょうがないかも。褒められた相手が大きすぎますよ。


大野 持ち曲がまだ10もなかった新人が松本隆さんからそんな言葉を頂けたら、ねぇ(笑)。過去の曲を最近また歌っていて思うのは、あの当時の詞は受け手の顔を想像出来るようになってからは書けなくなるものだったんだなっていうことで。瑞々しさなんて自分で言ったらおかしいですけど、そういうところを松本さんも面白がってくれのかもしれないですね。今になってみれば、あの「5.3」には当時の私が強く思っていた大きなテーマが込められていたんだなって思うこともあるし。

10年経っても演奏出来る曲だったのでここまでやってきたことが間違ってなかったと思えた。(武田)

──再録という形で自分達の曲と向き合ったことで、また曲との新たな付き合い方が始まったんじゃないかなと思うんですが。オリジナルと再録のものを聴き比べて、みなさんは率直にどう感じましたか。


武田 過去の音源が買えなくなっているっていう状況があったので、そこはなんとかしたかったんだけど、リテイクっていう案に僕は正直あまりピンときてなかったんです。というのも、その当時に録ったものはどうしたって超えられないっていう思いが僕にはどこかしらであったから。でも、実際に録り終えてみると、やる意味はあったんですよね。同じ曲でも、今の自分から出てくるものは10年前とはやっぱり違ったし、逆に10年が経っても演奏出来る曲だったっていう再確認も出来た。つまり、ここまでやってきたことが間違ってなかったと思えたんですよね。

──たしかに学生の頃にやっていた曲となると、普通はけっこう気恥かしかったりするものですよね。


武田 無我夢中でしたからね(笑)。アレンジもそんなに知識やテクニックがない状態でやっていたから。でも今回は、あえてその当時のままのアレンジで録音したものもけっこうあるんです。というのは、いまその曲をやろうとしたら、まず自分達には思い浮かばないアレンジだったから。そして、その当時のままでやってみても、すごくいいなと思えたのは大きかった。


木村 その当時ならではのアレンジが今になってみると楽しいんだよね。よく僕らはふざけて「僕らには捨て曲がなくて困る」って言ってるんですけど(笑)、ライヴの曲を選ぶ時もなかなか曲数が削れなくて困るんですよ。でも、実際に僕らは1曲1曲にものすごく時間をかけてつくってきたから、どの曲にもそれなりの重みはあると思うんです。だからこそ昔の曲を今でも違和感なく演奏出来るんだと思ってて。


与那覇 客観的に聴き比べてみたら、恭ちゃんの歌い方がすごく変わってて。ずっと一緒だったから気がつかなかったけど、昔の声は空気みたいにふんわりしていたんだけど、今はすごく芯のある声になってる。同じ曲でも聴こえ方がまったく違いましたね。


大野 自分でも驚くくらいに違ったよ(笑)。喉の使い方もやっぱり変わってるし。でもそれがよく作用しているところもけっこうあったから、私としては満足しているし、面白かったです。

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