──この20年間で転機になった方がいたら教えてください。
真城 「たくさんいるんですけど、小沢君かな。小沢君は節目節目で私の前に現れる人なんですよ。今回のアルバムのときもそうですし。また歌声のことでも小沢君と出会ってあのような感じのコーラスの仕事をしていなかったら、今はなかったんだろうなとは思います」
──「あのような感じというのは『LIFE』での歌い方のことでしょうか?
真城 「そうです。サポートコーラスをやるとき、私はメインヴォーカリストの声に感化されやすく、似た感じになってしまいがちなんです。小沢君とやったときもそうなってしまったんですけど、その感じが良かったみたいで。それがなかったらノーナや堂島君とも出会っていなかったと思います。女性コーラスというとソウルに見られるような、力強いコーラスをイメージされる方が多いと思うんですけど、当時(小沢君のサポートをさせてもらったとき)はポップというか少し男性寄りの歌い方をしたコーラスだったんですね。私がコーラスサポートをする場合はほとんど一人なんですけど、ソウルに見られるコーラスってグループだったりするじゃないですか? それとは違った感じでやれたことが、多くのフォロワーミュージシャンにも声をかけてもらえるきっかけになったんです」
──小沢さんとはどこで出会われたのですか?
真城 「小沢君はオリジナル・ラブ田島さんのファンでライヴを観に来てくれていたんですよ。彼がまだ高校生のころだったと思います。一緒に仕事をするようになったのは、フリッパーズ経てソロになって作った『LIFE』からですね。実はそれまで自分のコーラスについてよくわかっていなかったんですけど、(ロッテンハッツでの)バンド経験が生きたからできたんだと思います」
──と言いますと?
真城 「つまり私がバンドをやっていなかったら、『LIFE』であのようなコーラスはできなかったと思うんですよ。中森さんも木暮さんもすごく音楽に詳しいから、自分も知らないうちに色々聴くようになって、サポートする人のやりたい感じがわかるようになったというか。ミュージシャンは色んな曲を聴いていなかったら絶対にいい演奏はできないんですよ。例えばオリジナルで作者が表現したい“あの感じ”を伝えるときって、“あの曲のこの感じ”という形で伝えてわからなかったら伝えようがないじゃないですか? だからそこがわからない人と仕事はできないですよね。あの人演奏は上手いけど…となっちゃう。一緒に仕事がやりたくなる人って演奏が上手いということよりも“グッとくるあの感じを知っている人”というのがみんなが一緒にやりたくなる人であって、そういう人はいい音楽をたくさん知っている人だと思うんです」
──それはミュージシャンである以前に良きリスナーであることが大事だということですよね。
真城 「そうですね。中森さんも木暮さんも本当によく聴いているんです。私も聴きますけどあの二人と比べたら全然です」
──先ほどファンの話が出ましたけど、ヒックスヴィルは、ミュージシャンにも愛されてきたバンドではないかと思います。
真城 「バンドをまるまる応援してくれるアーティストがいるんですよ。先ほどの小沢君にはメンバー全員お世話になっているし、スカパラやフィッシュマンズもそうで、常にそういう人達が居たんですよね。今回『WELCOME BACK』ができあがったときに、ミュージシャン仲間に作品のサンプル盤を送ることができなかったんですけど、みんなお金を出して買ってくれたんですよ。そしてこの前(昨年11月)のワンマンライヴ、実は小沢君がこっそり観に来てくれていて、観に来ただけでなくて“お祝いですから”とCDだけでなくグッズも買ってくれたんです(笑)。他にも昔ラジオ局でお世話になった人が曲をかけてくれたり、インストアイベントに呼んでくださったりと本当にありがたいなと思います」
──20年一緒にやってこられたメンバーお二人、真城さんの目にはどのように映っていらっしゃいますか?
真城 「多分三人ともそれぞれ、それなりの不満は持っていると思うんですね。互いにムカついていることもあると思うし(笑)。ただ、さっきも言ったようにバンドを無くすのはすごく簡単なんですけど、ヒックスヴィルがあるから他で活動できるというのもあるし、二人とも音楽に対して真面目ですからね。私がもっとストイックであれば、もう少し違った活動ができたんじゃないか? とは思いますけど(笑)…大事な仲間ですね」
──長年活動してこられた中で、嬉しかったことがあれば教えてください。
真城 「なんでしょうね…誰かと何かを一緒にできたとか、あの人に会えたとか…ヒックスヴィルをやっているとたまに憧れのアーティストに会えることもあるんですけど、会ったからといって何かあるわけでもないですしね(笑)。音楽とそれは関係ないですし…やっぱり昔聴いてくれていた人が今も聴き続けてくれていることですね。自分が忘れているような昔のグッズを持ってきてくださったりすると、嬉しいなと思います。あとヒックスヴィルの場合はメンバー各々が独自に活動していて、他で自分たちを知ってくれた人がヒックスヴィルのライヴにも来てくれるんですよ。それはミュージシャンにとって本当に嬉しいことで…自分たちだけを応援してくれるファンも嬉しいんですけど、そうやって色々な音楽を見に行っているファンにも来てもらえることがいいなと思います」
──真城さんが目標にされているミュージシャンはいらっしゃいますか?
真城 「特にこの人というのはないですけど、やっぱりみんながよく挙げるダン・ヒックスはスタイルといい音楽といい、その存在は憧れですね。一見適当な感じに見えるんだけど、実はそうじゃないというところが。ガツガツやるのは性に合わないんですけど、粋で在りたいとは思うので」
──バンド名の由来はもしかして?
真城 「そう、ダン・ヒックスから名付けたんです。でも名付け親は私たちではなくて、(音楽評論家の)能地裕子さんなんですよ。ロッテンハッツを解散してからしばらくバンド名をつけていなかったんですが、ライヴをやろうという話になったときに、“あなたたちバンド名くらい決めてからライヴやりなさいよ。ヒックスヴィルでいいんじゃない? ダン・ヒックス好きなんだから(笑)”という話をもらって決まったんです」
──そんな裏話が(笑)。それでは最後になりますが、ファンの方にメッセージをお願いいたします。
真城 「やっぱり一度ライヴに来てもらえると、CDの聞こえ方が違ってくると思うんです。別に私たちのライヴでなくてもいいので。ライヴの後にCDをまた聴いてもらいたいなと思うんです。私たちはずっとやっているので、いつでも遊びに来てください」
──ありがとうございました。
2015年3月21日(土祝)名古屋・Cafe Dufi ※終了しました
OPEN 18:00/START 19:00 前売り¥3500(ドリンク別¥500)/当日 ¥4000 (ドリンク別¥500)
2015年3月22日(日)大阪・digmeout ART&DINER ※終了しました
OPEN 18:30/start 19:00 前売り¥3500(ドリンク別¥500)/当日¥4000(ドリンク別¥500)
2015年3月29日(日)東京・代々木 Zher the ZOO YOYOGI ※終了しました
OPEN 17:30/START 18:00 前売り¥4000(ドリンク別¥500)/当日 ¥4500(ドリンク別¥500)
2015年5月9日(土)静岡・LIVING ROOM
OPEN 18:00/START 19:00 前売り¥3500(ドリンク別)/当日 ¥4000(ドリンク別)
2015年5月10日(日)岡山・ONSAYA
OPEN 19:00/START 20:00 前売り¥3500(ドリンク別)/当日 ¥4000(ドリンク別)
2015年5月11日(月) 福岡 CLUTCH 「WELCOME BACK HICKSVILLE」presented by BEEHIVE DELUXE
OPEN 18:30/START 19:00 前売り¥3500(ドリンク別) /当日¥4000(ドリンク別)
2015年5月16日(土) 福島・AS SOON AS 「WELCOME BACK TOUR+LIVE ALIVE」
LIVE:ヒックスヴィル
DJ:kumico(foretoile、超黄)/sikamadness(indépendant) /不死身のクッシー(exパロパロ)
OPEN 18:30/START 19:00 前売り¥3500(ドリンク別)/当日¥4000(ドリンク別)
2015年5月17日(日) 水戸・MINERVA
OPEN 17:30/START 18:00 前売り¥3500(ドリンク別)/当日¥4000(ドリンク別)
<本編取材終了後>
真城 「ヒックスヴィルをどこで知ったんですか?」
──僕の場合はスウィンギング・ポプシクル(Swinging Popsicle)がきっかけでした。トナカイレコードでヒックスヴィルと一緒だったじゃないですか? 皆さんが彼らのCDの帯にコメントを寄せていたのを見て知ったんです。中森さんがポプシクルのジャケット写真を撮られていましたし、結成もメジャーデビューも確か1年違いでしたしね。彼らも来年(2015年)結成20年だそうです。
真城 「以前440で一緒にイベントやったんですよね。ポプシも私たちと同じようにメンバー変わらず三人でずっと続けていますもんね。みんな長いですよね、やっぱり(笑)」
──リスナーやファンにとっても長く続けてくれることは嬉しい話だと思います。ところで…事前にお伝えしていた新作『WELCOME BACK』にまつわる思い出の品についてなのですが。
真城 「思い出の品というのとは少し違うんですけど、これを持ってきました」
──はちみつですか?
真城 「『マヌカハニー』というはちみつなんです。今回のレコーディング、喉が痛くてぜんぜん声が出なかったんですよ。それで以前ファンの方にいただいたものがいくつかあって、試しに舐めたらすぐに声が出るようになったんです。強力な殺菌作用があるみたいで、レコーディング中ずっと舐めていたんですね。ただ 食べ過ぎで顔がまんまるくなってしまったので、要注意ですけどね(笑)。喉が痛いときに欠かせないもので、ヴォーカリストにオススメです」
──ファンの方とのつながりが本作品『WELCOME BACK』制作においても役に立ったということなんですね。最後まで楽しく心あたたまるお話、ありがとうございました。
<プロフィール>
1987年頃、真城めぐみ(ペイズリー・ブルー)、中森泰弘(ザ・ハワイズ)、 木暮晋也(ワウワウ・ヒッピーズ)の3人が、それぞれ別々のグループ活動中に 都内のライヴハウスで出会い、ネオGSシーンの中で交流がスタート。 1989年、ロッテンハッツ結成。 インディ盤(UKプロジェクト)リリース後、 92年にキューンソニーレコードよりメジャーデビュー。(メンバーはヒックスヴィル3人+GREAT3の3人) 2枚のアルバムとシングル数枚発表後解散。
1994年、ヒックスヴィル結成。 ライヴ活動を展開しながら95年にインディ盤『RIDER』(BAD NEWS)発表。 渋谷クラブクアトロワンマンライヴ後、96年にソニーレコードよりシングル 「バイバイブルース」でデビュー。 その後、1stアルバム『トゥデイ』、 2ndアルバム『サンセットブルヴァード』、 元はっぴいえんどの松本隆が参加した3rd『マイレージ』と、3枚のシングル、 その他コンピレーション参加盤が多数ある。その後2013年にはライヴ会場限定となる再録ベストアルバム『SONG RECYCLE』を、 2014年12月には15年ぶりの新作アルバム『WELCOME BACK』をリリース。 また、メンバーはそれぞれ様々なアーティストの作品やライヴに参加中。
関連リンク
掲載日:2015年4月5日