これまで使っていたヘッドホン・イヤホンが壊れたので新しいものを買おうと電器屋に出かけたけれど、沢山ありすぎてどれを買えばいいのかわからない--そんな経験をしたことのある人も多いんじゃないでしょうか。
この場合、自分がどういうヘッドホン・イヤホンを求めているのか、具体的にはよくわかっていないというケースが多いようです。ヘッドホン・イヤホンを選ぶ際には音質だけでなく色々なポイントがあるので、その点について簡単に整理してみます。
まずは予算です。ヘッドホン・イヤホンは100円ショップで売っているものから何十万円もするものまであります。高ければよいとは限らないのですが、予算に余裕があった方がより自分に合ったものを選べる可能性が高くなります。アバウトで構わないので、具体的に上限を設定した方がよいでしょう。音質にこだわるなら、できれば1万円くらいの予算はほしいところです。
次に、どこで使うのか。電車で使うなら遮音性(外の騒音を遮る能力のこと)が高く音漏れの少ないものがよいですが、家の中で使うだけなら遮音性や音漏れは一部の例外を除いてほとんど関係ないでしょう。大雑把に言うと、開放型に分類されているものは遮音性が低くて音漏れも多いので、基本的に電車等では使えません。それから、屋外で使うなら小型・軽量で持ち運びしやすいものがよいです。
密閉型の例
本体にスキマがなく、イヤーパッドが人工皮革で音が通りにくいです。
開放型の例
本体に穴が開いている上、イヤーパッドが布製で音が通りやすいため遮音性が低く音漏れも大きいです。
長時間使うなら、装着感がとても大事になってきます。装着感は、重 量、側圧(イヤーパッドを肌に押し付ける締め付け圧力のこと)、頭部や耳への接触部位、イヤーパッドやヘッドバンドの材質、イヤーパッドの角度調節の有無 等、色々な要素で変わってきます。重いと首が疲れてしまう、イヤーパッドが耳に当たるとすぐに痛くなる等、どの点が気になるかは個人差があるので、自分は どこが気になるのかチェックしてみるとよいでしょう。
仕様にもいくつかポイントがあります。ヘッドホンには再生機器と接続 するためのプラグが2種類あるので、使用する機器に合わせる必要があります。2種類とは、標準サイズのステレオプラグと、ステレオミニプラグです。イヤホ ンで使われているのがステレオミニプラグで、ヘッドホンもこの形状のことが多いですが、高価なものになると逆に標準サイズのものが多くなります。
写真左:ステレオミニプラグ
写真中央:標準サイズ ステレオプラグ
コードの形状にも注意が必要です。ヘッドホンだと左右どちらか片方からコードが出ているものと両方から出ているものがあります。イヤホンだとY字(左右の長さが同じもの)とu字(左右で長さが違い、首に掛けて使うもの)があります。どちらがよいかは人それぞれなので、自分の好みに合った方を選んでください。これである程度条件が見えてきたでしょうか。
次に具体的な選び方に進みます。
ヘッドホン・イヤホンには装着の仕方で色々な種類がありますが、
・屋内ならオーバーヘッド型(ヘッドバンドを頭に被るような形で装着するもの)
・屋外ならカナル型(耳穴に挿入して使用するイヤホン)
これが基本です。と言うのも、現在音質にこだわって作られている製品が、主にこの2つの装着方式に集中しているからです。
カナル型については、持ち運びのしやすさ、遮音性の高さ、音漏れの少なさといった点で屋外での使用に向いていることも理由です。特に電車ではとても有利です。
ただし、これはあくまでも基本で、実際にはオーバーヘッド型やカナル型だからと言って音がよいとは限りませんし、カナル型でも背面に穴が開いている等の理由で音漏れの多いものもあります。
オーバーヘッド型とカナル型以外には、耳かけ型、ネックバンド型、カ ナル型ではない"普通の"イヤホン等がありますが、どれも屋外で使用することを視野に入れているにもかかわらず遮音性が低く音漏れが大きいため、カナル型 に比べて屋外での使用に向かないという欠点があります。
ノイズキャンセル機能のあるものも流行っていますが、音質面のコストパフォーマンスはとても悪いので、飛行機や地下鉄のように特に騒がしい場所でばかり使 うのでなければ避けた方がよいです。音質面以外にも、独特の聞き疲れや圧迫感があって合わないと言う人も多いです。そもそもノイズキャンセル機能にして も、遮音性の高いカナル型を使えば十分なことが多いです。
スペックの見方についても簡単に触れておきます。
みもふたもない話なのですが、ヘッドホンのスペックを見ても音はわかりません。では何を見ればよいのでしょうか?
スペック表の例
一つ目は、音量の取りやすさです。
これは、"インピーダンス"と"感度"で決まります。
音量の取りやすさはPCやコンポで使用する場合には基本的に気にする必要はありませんが、iPod等のMP3プレーヤーだと注意が必要です。インピーダン スが大きく感度が小さいものだと、十分な音量が取れないおそれがあります。どれくらいなら大丈夫なのかはプレーヤーや使う人によって違ってきますが、イン
ピーダンス32Ω以下で感度100dB以上なら大抵の場合大丈夫です。とは言え32Ω以上100dB以下だと絶対ダメなのかと言うとそんなことはなく、 250Ω96dBなんてスペックでも十分使えることもあります。
二つ目は、重量です。
個人差はありますが、300g以上だと首が疲れるという人も多いです。逆に、200g以下ならちょっとくらい長い時間使ってもあまり疲れない人が多いようです。
それ以外に再生周波数帯域や最大入力といったものがありますが、普通に音楽を聞くだけなら実用上意味がないので無視して構いません。
「スペックで音がわからないなら、実際に聞いてみればいいんじゃない?」
そんな風に考える人が多いせいか、最近はヘッドホン・イヤホンを試聴できるショップが増えています。折角なので、真剣に自分に合ったものを探すなら、できる範囲で試聴した方がよいです。
ただし、試聴はとても難しいです。例えば家電量販店のように騒がしい 場所では、騒音で邪魔されるだけでなく特に低音がかき消されます。聞く人の耳の状態も、自宅でじっくり聞く場合と比べて騒音に慣れて鈍感になっています。 他にも沢山の問題があり、慣れない人がきちんと音質を把握するのは不可能に近いです。
試聴は"試着"という意味でも役立ちますが、試聴機は側圧が弱くなっていたりするという問題点があります。聴力と同じで、装着感についても鈍感になっていることが多いです。短時間なら問題なくても1時間は無理ということも多いため、少し長めに注意深く試す必要があります。
それから、信じられない話かもしれませんが市販されているヘッドホンの何割かは頭の大きい人では使えないサイズです。希に平均的な頭のサイズの人でも使えないようなものさえあります。この点については、試聴(試着)が役に立つと思います。
色々と書きましたが、試聴しないよりはした方がよいのは間違いないです。ヘッドホン・イヤホンの試聴ができるショップは多いですが、東京ならダイナミックオーディオ5555の1階、大阪ならe☆イヤホンがオススメです。お気に入りのCDやMP3プレーヤーを使って試聴することができます。