昨夏、「川本真琴 with ゴロニャンず」という名前のバンドが残響祭りに出演することをツイッターのタイムラインで知った。早速ググったところちょっぴり驚いた。シンガーソングライターの川本真琴さんを筆頭に、グラスゴーのインディー・シーンともつながりの深いテニスコーツの植野隆司さん、岡林ロックンロール・センターの三沢洋紀さん、はこモーフや王舟バンドなど東京インディーシーンの話題のバンドで活躍している池上加奈恵さん、そして当方主催のPOPS Parade Festival 2014にも出演してもらった人気ポップ・マエストロことスカートの澤部渡さんという、世代も属する音楽シーンも異なるメンバーによるクロス・オーバー・バンドだったからだ。
昨年夏に結成されたこのバンドは、10月には東京と京都で開催された2つのフェスへ出演しオリジナル曲を数曲披露、ライヴデビューを果たした後に、先月初作品となる「ミュージック・ピンク」を雷音レコードよりリリースした。彼らのデビュー・シングルは2曲入りの7インチアナログ盤。20年近い音楽キャリアを積む川本真琴さんにとって、意外にも本作が初めてのレコード作品だという。余談だがメンバーの澤部さんが12月にリリースした新作もアナログ盤だったし、池上さんの参加した王舟の作品も10月に7インチでリリースされていた。「ミュージック・ピンク」が発売された12月には、星野源、堀込泰之(ex.キリンジ)といったベテラン勢の作品もLP盤で登場しており、音楽愛好家を中心とした世界的なアナログブームの波が確実に日本にも押し寄せてきている。
新作はミディアム・スロウなバラードで、ソロ名義の作品に見られる疾走感ある早い歌い回しなどは影を潜め、これまでにはなかったジャズやソウルの要素も取り入れた、少し大人のグルーヴ・サウンドが魅力だ。スタンディング・ライヴよりも食事ができるライヴレストランやBARで椅子に座って聴きたくなると言ったらわかるだろうか。世代やジャンルを超えた異色のメンバーで結成された「川本真琴 with ゴロニャンず」のバンドマジックが、川本さんの新しい可能性を見出したのは間違いないだろう。
新作リリースに伴い編集部では、昨年のリ・マスター盤に続いて今回もメールによる川本さんへのインタヴュー取材を行った。また、実はそれ以前の残響祭りから取材を進めてきていたこともあって、今回彼らのデビューライヴとなったZEPP DIVER CITY TOKYOでの貴重なフォトレポートも合わせてお届けする。本記事を通じて、新バンドについて興味を持ってもらえたらこんなに嬉しいことはない。2015年要注目バンドの一つにとして心にとめておきたいと思う。
インタヴュー・文 黒須 誠
撮影 木目田隆行
川本真琴 with ゴロニャンず
ミュージック・ピンク
2014年12月15日リリース
disk union(各店舗・通販)
http://diskunion.net/jp/ct/detail/1006500947
──デビュー・シングル『ミュージック・ピンク』の発売おめでとうございます。まずは「川本真琴 with ゴロニャンず」とはどんなバンドなのか、結成の経緯から教えてください。
川本真琴(Vo・G) 「ありがとうございます。2014年の始めにたくさんバンドをやりたいなと思っていまして、春の終わりごろからフェス出演がいくつか決まりました。そこで、2~3年前から交流がある三沢さんに手伝ってもらおうと思い連絡をしました。その時は2人でと思ったんですが、三沢さんが“他にも最高のメンバーがいるからコーディネイトしてよいですか?”とおっしゃってくださり、ギターの植野さんとベースの池上さんを紹介していただきました。ドラムの澤部さんは私からお願いしました」
──愛くるしいバンド名ですが、由来は何ですか?
川本 「最初に挙がったバンド名が『ミュージック・ピンク』で、その次が『ミュージック・パープル』でした。マイベストレコードの金野さんが『月山』とか『月経』とか面白いのをメールで送ってきてくれてて、私が考えたのは『体操袋』とか。その後『死の石畳コーナー』に決まりかけた時に、“迷った時は足元を見よ”って親鸞上人かどなたかの本に書いてあったのを思い出して、足元を見たら、猫がいました」
──猫が足元にいてそれで決まったんですか? てっきり猫好きのメンバーがいるとか、そういうべたな話だと思ってました(笑)。
川本 「メンバーの植野さんは猫にすごく好かれるらしく、近くにいる猫ちゃんが尋常じゃないくらいすり寄ってくるらしいんですよ(笑)。そんな話もあったからかな~」
──新バンドでは10月に残響祭やボロフェスタなどのフェスに参加されました。お披露目ライヴになったわけですが、いかがでしたか? エピソードなどもしありましたら。
川本 「ゴロニャンず、初めてライヴをする場所が Zepp東京ダイバーシティ。ほんとに、初ライヴに素晴らしい場所を与えていただき、感謝しています。みんなであたためていた新曲をやった時のことを、一生覚えていると思います。京都のボロフェスタは、2度目で少し気楽な雰囲気でした。お客さんも真剣に聴いてくれている気がしたので、一生懸命歌いました。楽屋も知った人たちが多く、学園祭みたいで楽しかったですね。ステージ中、“三沢~”とか“澤部~”とかお客さんに呼ばれたりして。(エピソードと言えば)かなえちゃん(池上さん)とシャボン玉をしたんですよね」
──楽しそうでいいですね。
川本 「私が若づくりとかしていたら絶対つっこまれますからね(笑)。このバンドは私がいなくても充分面白くて、 ステージの下で見ていたいなといつも思っています」