──「ホラーすぎる彼女です」、このタイトルの意味についても教えてもらえませんか?
川本 「これは自分の歌なんですよ。それで自分は女子じゃないですか? だから女子の気持ちってこうだよ、というのを書いたんです。人を好きになるってちょっとだけ怖い部分が含まれると思うんですよ。その人、好きな人を自分だけのものにしたいとか、そういう気持ちってみんな持っていると思うんです。他の人に、自分の知らないことを言ってほしくないとか、ありますよね、そういうことって?」
──いわゆる独占欲ですよね。それは僕もめちゃくちゃありましたよ(笑)。
川本 「自分だけがその人のことを知っていたいとか、そういうのがちょっと行き過ぎるとホラーというか、ちょっと怖くなっちゃうじゃないですか? でもなんか女の子のそういうところってすごく好きで、可愛いなと思っているんですよ。基本的に、嫉妬深い女の子がすごく可愛いなと思っていて、そういう子を否定するのってなんか違うなと思うんですよね。もちろん女子から見たら、ですよ。男子から見たら、ウザイってなっちゃうんでしょうけどね(笑)。女子はウザイくらいが可愛いって私は思っていて。女子が妙に、まあいいじゃないですか、みたいになってしまうと可愛さが無くなってしまうと思うんですよ。“何でこーしてくれないの?”って言っているほうが可愛いなと思っていて。男子から見たらそこが、”ちょっとホラーな部分なのかな?”って。しかも、自分でもそうだよなって思っているってことなんですよね」
──ホラーにはそのような意味があったんですね。気づきませんでした。これは難しいですね(笑)。
川本 「そうですか?(笑)。例えば私、ビョークって可愛いなと思うんですよ。そのビョークが日本の『鬼婆』というホラー映画をすごく推していたんですよね。ビョークってホラーがすごく好きなんですけど、そのような女子が好きなホラーっていうのがあるんですよね。例えばゴシック&ロリータ、ゴスロリとかね」
──この“ホラー”の部分、“ミステリアス”という表現にはならなかったんですか?
川本 「うーん、“ミステリアス”だとセクシーなイメージが入ってくるじゃないですか? 今回私は風俗とかセクシーとかそういう要素は入れていないですね。私の歌詞であまりそういう言葉は選ばないです。やっぱりゴシック&ロリータの方向ですかね。S.F.やファンタジックなもの、ロマンチックなものも好きですし・・・ただロマンチックな要素が多くなると、切なすぎて歌えなくなっちゃうんですけどね(笑)。まあ自分が好きなように、歌いたいように作っているだけなんですけどね(笑)」
──そうやって歌うことで脚光を浴びたり、注目を浴びたりするじゃないですか? 川本さんは”私を見て”という欲求が強かったりするのでしょうか?
川本 「うーん、私を見てという欲求もなくはないですよね。これは仕事の話ですけど、自分の音楽の仕事を下手な方法で売りたくはないんですよね。ちょっと答えになってないかもしれないですけど・・・やっぱりそれは音楽に、自分の作品に失礼だと思うし・・・だから、見られたい願望は打ち消しますね、自分の中では。注目を浴びることを第一に考えて音楽を、仕事をやっていくことは、私はちょっと違うかもと思っていて。私はそういうのを仕事には入れたくないな、というのがありますね」
──わかりました。あと、B面に入る予定の「クローバーフィールド」についても少し。この曲は「ホラーすぎる彼女です」と楽曲は同じで、歌詞だけが違うと伺いました。過去には浜崎あゆみさんや倖田來未さんなどの例もありましたけど、わりと珍しい取り組みですよね。
川本 「こちらの歌詞は、最近できたんですよ。今年の1月中ですね(笑)。実は[クローバーフィールド]はタイアップ用で作っていた歌詞なんです。残念ながらその企画は流れてしまったんですけどね。そのタイアップでは”優しい感じで、ちょっと落ち着いた感じがいい“と言われていて、そこからはじまったんです。こちらの歌詞はトクガワロマンさんが80%くらい書いていますね」
──「ホラーすぎる彼女です」とは逆なんですね。こちらの歌では〈クローバー〉〈春色のベールをくぐって〉といった言葉をはじめ、全く違う詞の世界が展開されています。
川本 「そうなんですよ。ただ、こちらはトクガワロマンさんが中心だったので・・・私は協力していたほうだったんですよ。表現・言葉のアドバイスをしていたくらいなので。トクガワロマンさんに聞かないとわからないですね(笑)」
──なるほど、わかりました。機会を改めてまた教えてください。
──今年でデビュー20周年を迎えられたわけですが、今後の目標などありますか?
川本 「音楽面においてはこのままやっていけばいいのかな、って思ってます。でも人生面においては、もっと“雑”でもいいんじゃないかって思うんですよね」
──“雑”とはどういう?
川本 「なんか、いらないことを心配しすぎだなって。あと、いらないことをいるって思いこんでいるところがあるかなって。何がいらないもので、何が必要なものであるのか、まだわかっていなくて・・・いや、何となくはわかっているんだけど、捨てきれていないところがあって・・・すぐに神経質になったりするから、もう少し雑に、ざっくりこっちかあっちかで決めてもいいんじゃないかなって、思うことがあるんですよね。やっぱり気にするところがすごくいっぱいあって、人がどのように自分を言うかとか・・・最近色んなことがあったじゃないですか?(笑)・・・たくさん言われていくうちに、言われ慣れちゃったんですよね(笑)。打たれ強くなったなあって、何を言われても何にも思わなくなってきちゃって・・・以前はね、一つでも何か言われたら頭にきていたりとか、ずっとイライラしたり、モヤモヤしていたんです・・・けど風邪など病気になったら免疫ができたりするじゃないですか? それと一緒で、今はもう何も思わないんですよ。“ああ、またなんか言っているな”としか思えなくて・・・人間って強くなるんですよね(笑)。それでもやっぱり厳しく辛いときは・・・友達が助けてくれましたね」
──お気持ち・・・お察しします。
川本 「ただ、好き勝手にやっているとはいえ、やっぱり・・・作った曲がイマイチだったと言われたら悲しいですね。くだらない容姿などの批判やそんなのは・・・言われたらやっぱり嫌ですけど、それは置いといて・・・まずは作った曲を聴いてもらって、そういう批判とかも全体的に無くなっていくといいな、とは思っているんです。みんな世の中がちょっとおかしくなっちゃっているところとか・・・今回のタイトル[ホラーすぎる彼女です]、これも意味深なんじゃないかと言われたりしたんですけど・・・そういう悪意をちょっと乗せてくる感じ、笑いのようで笑いじゃない・・・そういうところも、曲を聴いてもらったらきっとなくなるって、そんな気がしているんですよ。やっぱり嫌ですからね、悪口言われて笑っていられる人っていませんからね」
──確かに・・・ネットの時代になって嫌な面が助長されやすくなってしまっているところもありますよね。
川本 「でも私ね、ヤなこと言われているな、やだな・・・というのは正直あるんですよ。それでも、自分の曲を聴いていると・・・そういう嫌な気持ちが消えるんですよ。不思議ですよね・・・やっぱりね、音楽にはその力があるんだな、って思って。それを大事にしていきたいですね」
──話しづらいこともあったでしょうに・・・この度は取材を受けていただきありがとうございます。今年は20周年という節目の年でもありますし、音楽の力って本当に大きいですからね。いい1年になるようポプシクリップ。としても応援しています。ありがとうございました。
※後編は3月下旬から4月公開予定です。そちらもお楽しみに。
2016年3月3日配信リリース
収録曲
01. ホラーすぎる彼女です 作詞:川本真琴、トクガワロマン / 作曲:川本真琴
02. ホラーすぎる彼女です(Instrumental)
2016年4月20日7インチアナログ盤発売予定
レーベル:MY BEST! RECORDS/diskunion
品番:MYRD96
価格:\1,200+税
<収録曲>
side A ホラーすぎる彼女です
side B クローバーフィールド
<クレジット>
作詞 川本真琴、トクガワロマン
作曲 川本真琴
vocal,chorus & flute:川本真琴
drums:U
bass:高間有一
guitar:野村陽一郎
piano:葛岡みち
arrangement & other instruments:安原兵衛
recording engineer
side A:飯波光洋(studio Fine)
side B:萩原秀彦(mate studio)
mix & mastering engineer:中村宗一郎(Peace Music)
PLAY VOL.31
日時:2016年5月4日(水・祝) 開場18:00 開演18:40
会場:東京・渋谷La.mama
出演:カーネーション、川本真琴 with 98%女子
料金:前売4,000円(+1D) /当日4,500円(+1D)
監督・脚本 ムラヤマ・J・サーシ
企画・制作 川本真琴
出演 川本真琴 ラブ守永 野田博史 コウノトリ歌二郎 山田はるこ マーライオン マヒトゥーザピーポー ムラヤマ・J・サーシ 小川ともこ 他
主題歌 「ホラーすぎる彼女です」
作詞 川本真琴 トクガワロマン
作曲 川本真琴
編曲 安原兵衛
協力 黄金町試聴室
2089年春、公開予定
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ポプシクリップ。マガジン第5号・第6号(川本真琴さんの記事収録)